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日々のこと

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ただ流れるように紡がれる生活の中で、浮かんでは消える泡沫のようなキラキラを書き留めておけたらいいね。
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UMAくん

UMAくん

 ブンッ、と机に置いたスマホが震えてハッとします。宿直室の明かりを落としてモニターをぼーっと眺めていた午前3時半過ぎ。スマホのバイブに続いて転落防止のセンサーがピンポーンと鳴ります。モニターの端に一つの居室が映って、利用者さんが左に寝返りを打つ映像がカクカクと流れます。

 スマホを見るとLINEが一通届いていました。こんな夜更けに誰でしょう。何杯目かわからないコーヒーに口をつけながらLINEを開

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ほどける

ほどける

 1人で歩く夜の公園には寂しげな風が吹いています。街灯の上にポツンと半端な月。潮の香りは鼻先をくすぐるように綻んで、波打ち際に私を誘います。

 一羽のサギが浅瀬で黄昏ていて、深い青の中白く浮かび上がる姿はまるで幽霊のよう。ゆっくり近づくとゆっくり遠ざかる。一定の間隔を保ってサギはどんどん沖の方へ行ってしまい、大きく羽ばたいて砂浜の端の方へ飛んで行きました。

 サギに誘われて気付けば波が触れるほ

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うたたね

うたたね

 朝の京急線はギュウギュウ詰めで、顔をしかめながらもちょっと暖かいと思ったり。窓から差し込む陽が、不安げな顔の妻の肩に落ちてキレイ。黒のワンピースに浮かび上がる白い花。

 大学病院の入り口には紅葉した楡の木が。黄色くなった葉の、そのささくれだった隙間からのぞく空の青さと泳ぐ鰯雲。

 検診の結果はやっぱり全前置胎盤。けれどもまだ胎盤の位置が動く可能性はあるそう。自宅安静はもちろん継続。「不要不急

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コウノトリ ーはじめてのアート購入ー

コウノトリ ーはじめてのアート購入ー

2024.10.6

 今日は新しい家の工事の進捗を見に行って来ました。設計士さんがわざわざ来てくれて、まだ壁も張られていない家の中を案内してくれました。

 前回来た時は2階に上がることは出来ませんでしたが、今日は上がって見ることが出来るそうです。とはいっても壁が無く柵なんかも無いので、ちょっと足を踏み外したら1階にぼとん。妻はお腹が大きいのでお預けです。

 家を建てようと意気込んだのが202

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【さんぽカメラ⑥】 ただいま、ちょっと変わったね 【川越】

【さんぽカメラ⑥】 ただいま、ちょっと変わったね 【川越】

↓前回の記事

*2ヶ月近く前の記事になります

2024.9.12

9月に入ったのにまだまだ暑い日が照りつける中、電車に乗り込んで降り立った駅は川越。私が学生時代を過ごした街です。

今回は私の思い出の街をカメラ片手にふらふら散歩します。

川越駅〜川越八幡宮電車を降りて懐かしい蔵造り風のホームに降りた時、まず感じたのは安堵でした。家に帰って来たような安心感。ただいま。

約10年ぶりとはいえ

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水槽の彼方

水槽の彼方

 朝寝坊をして、開け放ったカーテンの向こうから差し込む光。窓の向こうから差し込むやわらかな風は私を外へ誘うものでした。

 カメラをぶら下げて近くの公園へ行くと、祝日ということもあり親子連れがたくさんいました。日陰は寒いですが空には青空が広がっていて、日差しは暖かく半袖で走り回る子もいます。

 もうしばらくしたらこの公園にも来られなくなります。家を買ってこの土地を離れることを選んだのは私ですが、

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使い捨てのハーフカメラ

使い捨てのハーフカメラ

 少し前になりますが、ILFOCOLOR RAPID HALF FRAME という使い捨てハーフカメラが現像から戻ってきました。

 この子を使い始めたのは4月の終わりの頃だったと思います。なので、約半年間ちょこちょこ写真を撮っていたことになります。

 4月に「写ルンです」だけで写真を撮り歩く「写ルンです会」をした直後に購入したカメラです。ちょうど使い捨てカメラの魅力に取り憑かれていた時期ですね

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ペダルを踏んで

ペダルを踏んで

 お茶屋さんに行った帰り。突然サイクリングがしたくなって、家へ帰ると久しぶりに自転車に跨ります。空気が抜けていたのを2年近くほったらかして乗っていなかった自転車。引っ越し前にメンテナンスしてもらおうと、先日自転車屋さんに持って行って空気を入れてもらったのです。

 ペダルの上に立ってググーっと体重をかけるとサビだらけのチェーンがグルグル動いてどんどん進みます。夕暮れの街の奥へ奥へ。

 カメラが趣

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曇天にルージュ

曇天にルージュ

 朝目が覚めると気圧のせいか目の奥がズキズキ。妻に「ちょっと起きられなそう。送っていけなくてごめんね」と伝えて再び布団に潜り込みます。

 9時のアラームを聞いて資格のスクールに休みの電話を入れます。寝ぼけた声で電話を終えるとスマホを握りしめたままま夢の中へ。美しい夢を見た気がします。とにかく、起きたくなかった。

 ハッと気がつけばすでに12時過ぎ。のそのそと布団から這い出て顔を洗います。ここ最

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誕生石コンプレックス

誕生石コンプレックス

 妻が妊娠しています。予定日が2月末なのですが、諸事情により予定帝王切開になる可能性が出て来ました。来月頭の妊婦健診でその辺が決まるそうなので、少しドキドキしています。妻の身体が心配です。

 さて、私にはもう一つ心配なことがあります。たいした事ではないのですが、それは帝王切開になると娘の誕生日が1月になる可能性があるということです。

 それがなんでダメなの?とみなさんは思うかもしれません。1月

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冷たく静謐な朝は祈り

冷たく静謐な朝は祈り

 あまり眠れなくてアラームよりも早く目が覚めました。顔を洗う水が冷たくてヒリヒリする肌。温水に切り替えて寝癖のついた頭をジャブジャブ流します。ドライヤーの風が温かくて気持ちいい。4:45。

 カメラを首から下げて5分早く家を出ます。冷たくて澄んだ朝の空気。東の空にまだ太陽はなく、ぼんやりと明るくなった空はシロップが沈んだクラフトコーラみたい。かき混ぜたらどんな色になるでしょうか。

 ホットコー

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旅に出た写ルンです

旅に出た写ルンです

 職場の近くの公園は私の憩いの場です。出勤前や昼休みにぼーっとするのにちょうど良い、緑にあふれた都会のオアシス。

 そんな公園の木々の合間、西の空には金色の人形の様なものが見えます。細いラッパの様なものを吹いている、高い尖塔の先に立つ像。あれはなんだろう。いつもそう思いながら特に調べようとも思わず日々過ごしていました。

 「あれはモロナイという預言者です。」

 今知り合ったばかりの彼はあの像

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木漏れ日にふれて

木漏れ日にふれて

 最近はすっかり秋めいてきましたね。日中は半袖一枚で過ごせる日も多いですが、夏とは明らかに空気が違っています。

 日差しが美しくなりました。上手く言語化できないのですが、秋から冬にかけての日差しは静謐でひたむきな感じがします。

 背の高い住宅の合間からのぞく午後の日差し。誰もいない通りにひびくセキレイの声。

 カーテンの隙間から西を目指して伸びる細い光の筋。外から聞こえる登園中の子供たちの声

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おかえり夜勤、ハロー資格勉強(グッバイアルバイト)

おかえり夜勤、ハロー資格勉強(グッバイアルバイト)

 はい、今月から再び夜勤をしています。健康には若干の不安がありますが、やむを得ずです。

 やむを得ずというのは、転職のために資格取得が必用になり、それがスクーリングが必須なので、そのために休日を返上しなければならなくなったためです。

 休日に入れていたアルバイトは辞めなくてはならず、収入が減るので結局夜勤を再開。半バンパイア生活に逆戻り。もうすぐハロウィンだし、ちょうどいいか。

 それで、資

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