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それでも大人は前に進むのだ『マチネの終わりに』
こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。
みなさんは恋愛で「あの時ああしておけば…」や「あの時伝えていれば…」というような、過去に戻ってやり直したいを経験したことはありますか?
今日は大人な恋愛を描く、平野啓一郎さんの小説『マチネの終わりに』をご紹介します。
こんな人におすすめ
大人の恋愛が楽しみたい方 / 高めあえる関係性が好きな方 / ビビッときた出会い方をしたことがある方
『マチネの終わりに』のあらすじ
天才クラシックギタリスト・蒔野(まきの)はデビュー20周年を迎えた38歳。記念すべきコンサートで、通信社記者に勤める洋子と出会う。出会った瞬間から惹かれあった2人だったが、洋子には婚約者が。蒔野はスランプに、洋子は体の不調に苦しむ。愛とは運命なのか、それとも、私たちの意志なのか?40代という“人生の暗い森”を前に出会った2人の切なすぎる恋の行方を軸に、芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死などのテーマが重層的に描かれる。
『マチネの終わりに』のおすすめポイント
本作は書くべきポイントはたくさんありますが、今回は愛にフォーカスして書こうと思います。
出会いは運命
私は運命論信者なので(笑)、運命という言葉が大好きです。
本作の2人も運命の出会いを果たし、出会うべくして出会ったのではないでしょうか。
周りには理解されなくても、自分が言わんとすることが伝わる、という感覚が2人にはありました。
「人は変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
事象に対する解釈も造詣も深く、ピッタリと思えるような人に出会えることこそ、幸せなことはないなと思います。番(つがい)というものが存在するならば、きっとそれは2人のことなんだろうなと感じます。こうやって大人の恋は落ちるべくして落ちる。なんてドラマチック!
出会った長さではない
出会った瞬間に恋に落ちた2人。例え、洋子に婚約者がいたとしても止められない、静かに熱く燃え上える愛の描写が本当に好きです。
「わたし、結婚するのよ、もうじき。」「だから止めに来たんだよ。」
「難しいことは分かっている。でも出会ってしまったから。ーその事実をなかったことには出来ない。」
死ぬまでに言われたい言葉(石川調べ)のオンパレード…!
出会って2〜3回であっても思ったタイミングに伝えないと、彼女は他人のものになってしまうのです。今だというタイミングでチャンスを掴まないとという蒔野の本気が、私を含めて女子はハラハラしつつもときめいてしまうはず。
「もっとかっこよく言えるつもりだった」、なんてこぼすのだから、にくい…!
それほど自分のことを愛してくれたら、、たまらない!洋子が揺れるのも無理はありません。
自分の選択を正解にするしかない
人生は選択の連続。本作の2人もほんの少しのすれ違いで、行き着く未来が大きく変わってしまいます。「もしもあの時ああしていれば」「ああしていなかったら」、どんな選択をしたとしても、選ばなかった選択肢の先も考えてしまうものです。
選んだ未来も、選ばなかった未来も、それぞれ別の未来に繋がっている。だからこそ、自分が選んだ選択肢が自分にとってよかったのか、悪かったのかどうかは、未来の自分にしかわからないのです。
人は選択をしなければ前に進めないのであれば、自分が選んだ選択を正解にするしかない。最後の最後、蒔野の選んだのは…? 結末はぜひご自身の目で確かめてください。
「後悔のない選択をし続けるしかない」と、蒔野を見て、思うのです。
ではまた〜