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今年読んだ本ベスト5!
2024年ももう終わり。
今年も毎日読書を楽しみ、物語を通して笑ったり涙したり「うんうん」と頷いたり、ドキドキしたり……。いろんな物語を通して心豊かな時間を持つことができたと感じています。
この記事では、今年読んだ本を振り返って、個人的に良かった本をランキングにしてみました。かなり個人的なランキングですが、どの本もオススメなので興味ある方はぜひお手にとってみてください!
第5位:「ポンコツ一家」
5位は、にしおかすみこさんのエッセイ「ポンコツ家族」。著者にしおかすみこさんの家族を描いた、ユーモアと愛情溢れる一冊です。
家族紹介。
うちは、
母、八十歳、認知症。
姉、四十七歳、ダウン症。
父、八十一歳、酔っ払い。
ついでに私は元SM女王様キャラの一発屋の女芸人。四十五歳。独身、行き遅れ。
全員ポンコツである。
こんな家族紹介からエッセイは始まります。
ことのはじまりは2020年6月。著者にしおかすみこさんが新型コロナウイルスパンデミックで、仕事がゼロになり、千葉の実家に里帰りしたときのこと。なんと家がゴミ屋敷になっていたそうな!
軽快でテンポの良い語り口と、シュールなボケとツッコミに家族の日常や失敗談、ちょっとした衝突が描き出されている一冊です。
家族だからこそ……。他人には絶対に抱かない特別な感情
「家族だからこそ許せる」「家族だからこそ大事にしたい」――多くの人がこのような気持ちをお持ちなのではないでしょうか。
同じことでも家族ではない人だったら許せなかったり、見放してしまうかもしれない。けれど家族だったら許せることってありますよね。
本作品「ポンコツ家族」もまさにこの「家族だから」こそ抱く特別な感情が随所に描かれていて、それがなんとも愛おしい気持ちにさせられるのです。
「ありのまま」の家族の姿と著者の家族に対するキモチ
認知症やダウン症、酔っ払いの家族のことをネタにした一冊だと聞くと「認知症やダウン症をネタにするなんて」「そんな家族のことを『ポンコツ家族』と表現するなんて酷い」と不快感を感じる方もいるかもしれません。
しかし、私が実際に本作品を読んで感じたのは著者にしおかすみこさんの「ありのまま」の家族の姿。飾ることもなく、特別良く見せることもなく、悪く見せることもなく、美化することもなく描いたエッセイだということでした。
認知症が進むお母様を見ながら、大げさに悲観することもなく、けど時々心がギュッと苦しくなるような悲しさや寂しさを感じつつ、お父様やお姉様を心配しながらもサポートする著者。その日々の大変さや苦労も包み隠さず全てエッセイに詰め込んでいて、その「ありのままの姿」をそのまま描いている点に人間らしさと好感を持ちました。
どの家族も、その家族の味があるのではないでしょうか。他人だと許せないけど家族だからこそ許してしまうこと、家族だからこそさらけ出せること、家族だからこそ笑い合えること――そんな家族のあり方を気づかせてくれる一冊でした!
第4位:「六人の嘘つきな大学生」
4位は浅倉秋成さんの「六人の嘘つきな大学生」。先月映画も公開されたので、記憶に新しいと感じる方も多いかもしれませんね。
就職活動をめぐる若者たちの葛藤と裏切り、そして真実に迫る心理戦を描いたミステリーです。現代社会が抱える競争や不平等を生々しく映し出す一方で、人間の本質や絆について深く考えさせられた一冊。
将来への焦り、プレッシャー――就活生の内面から、人間としての計算高さまで人間の心を細かく描写した作品
物語は、六人の大学生たちが大手企業の最終選考に進むところから始まります。当初は「全員に内定を出す可能性もある」という話が、ストーリーは途中で一変。
最終選考は六人で「誰が内定者にふさわしいか」を決めるディスカッション。選ばれたその一人だけが内定を得ることができるという設定は、「一緒に内定もらえるように頑張ろう」と距離を縮めつつあった六人を「一つの椅子をかけて争う」孤独で計算高い戦いへと引き込んでいきます。
六人の大学生たちは、それぞれに異なる背景や価値観を持ちながら、時には協力し、時には対立していきます。
彼らが「嘘」をつく理由は、自分を守るためだったり、他人を助けたいという思いだったりと多様で、どのキャラクターも善悪では割り切れない人間らしさを持っています。彼ら一人ひとりの心理に共感しつつ、「自分が立場だったら、どう行動するだろう?」と考えずにはいられませんでした。
私が就職活動をしていたのはリーマンショック直後。多くの企業から、その年度の採用を見送るという連絡が立て続けに届き「自分の将来はどうなるんだろう」という漠然とした不安やプレッシャーと戦っていたことを今でも覚えています。本作に出てくる大学生もあの頃の私と一緒で競争社会における不安やプレッシャーが綿密に織り込まれていて、作品の深みを感じました。
物語が進むにつれて、各キャラクターの「嘘」と「本当」が複雑に絡み合い、読者を最後までドキドキ。巧みに張られた伏線が、すべてが繋がる最後は、驚きと同時に深い納得感に包まれていました。
「嘘」や「裏切り」などスリリングな展開を楽しむだけでなく、自分自身の価値観や他者との向き合い方についても考えさせられました。
第3位:「ライオンのおやつ」
明日が来ることを当たり前に信じられることは、本当はとても幸せなことなんだなぁ
(中略)
幸せというのは、自分が幸せであると気づくこともなく、ちょっとした不平不満をもらしながらも、平凡な毎日を遅れることなのかもしれない。
2020年本屋大賞第2位に輝いた小川糸さん著の「ライオンのおやつ」は主人公が向かう「ライオンの家」の代表マドンナからの手紙と、上に引用したこんな文章から物語がはじまります。
ステージIVの癌を患い、余命数ヶ月と宣告された33歳の雫。クリスマスの日に瀬戸内海に浮かぶレモン島にある終末期患者ホスピス「ライオンの家」えと到着し、いままでの自分の生き方を振り返ったり、レモン島での新たな出会いや別れの中で「人生」「生きること」そして近く訪れる「死」を向き合っていくお話。
「死」を穏やに温かく描いた作品で、じんわりと感じる優しい読後感
人生というのは、つくづく一本のろうそくに似ていると思います。ろうそく自身は自分で火をつけられないし、自ら火を消すこともできません。一度火が灯ったら、自然の流れに逆らわず、燃え尽きて消えるのを待つしかないんです。
「死」をテーマにした物語は今までたくさん読みましたが、この「ライオンのおやつ」は読んだ後味が全く違う作品でした。
重たいテーマを扱っているにもかかわらず「ライオンのおやつ」は「死」を
特別なものとしてではなく、生きることの一部として温かくやわらかなタッチで捉えています。その描き方は重々しさなどはなく、むしろ穏やかで美しいものでした。
人生には、何回でもおかわりしていいことと、そうではないことがあるんだということが、わかったのだ。
命の終わりを前にしても、日々を楽しみ、幸せを噛み締め、心に残る記憶を大切にすることの意味を、登場人物たちを通じて教えてもらった気がします。この本を読んだ後、命の有限さを感じるとともに、日常の中にある小さな幸せをもっと大切にしたいと思うようになりました。
温かく、優しい読後感が心に長く残る一冊で、自分がもっと歳をとってからもう一度読み返したい作品として大切に心にしまっておきたいと思いました。
第2位:「翼をください」
2位は先日、記事に紹介させていただいた原田マハさんの「翼をください(上・下)」です。
「翼をください」(著:原田マハ)は、実在したアメリカの女性飛行士アメリア・イアハート(Amelia Earhart)をモデルにしたエイミー・イーグルウィングと、1939年毎日新聞社による世界一周飛行という出来事を交差させたフィクション。
上巻ほぼまるまる1930年代のアメリカの女性飛行士が中心にストーリーが展開。そして下巻は1939年の暁星新聞社による世界初の世界一周飛行。ニッポン号にカメラマンとして搭乗した山田順平を主人公に、上巻で登場したアメリカ女性飛行士エイミーと二人の人生を交差させたストーリーになっています。
この「翼をください」の感想は先日の記事で詳しく書かせていただいているので、興味ありましたら、以下のリンク記事を参照ください⇩⇩⇩
第1位:「走ることについて語るとき僕の語ること」
第1位と2位はすごく迷ったのですが、僅差で村上春樹さんの「走ることについて語るときに僕の語ること」にしました!本書は、2005年〜2006年にかけて村上氏が「走る」というテーマで、走ることと創作の関係、そして自己との向き合い方を綴ったエッセイです。
2005〜2006年というと、村上氏が50代半ばを過ぎた頃。1982年に専業小説家の道を歩み始めてから続けてきた毎日のランニングを通して、自分という人間にとって「走り続ける」というのがどのようなことであったか、どのような思いを巡らし、あるいは自問自答していたか、そこから個人的に学んだことなど、小説家でありランナーでありながら、50代半ばを過ぎつつある一人の人間として等身大の村上氏の姿が描かれ、単なるランニングの記録にとどまらない「生き方」や「仕事」に対する哲学が詰まっています。
走ることと創作の共通点
継続すること――リズムを断ち切らないこと。長期的な作業にとってはそれが重要だ。いったんリズムが設定されてしまえば、あとはなんとでもなる。しかし弾み車が一定の速度で確実に回り始めるまでは、継続についてどんなに気をつかっても気をつかいすぎることはない。
ランニングでも、仕事でも、勉強でも、新しくはじめたことでも、多くのことに当てはまると思うのですが、継続は至難の業。リズムができるまで、そのリズムを築き上げることに意識を向けることが大切だと村上氏は語っています。我慢強く積み上げていくことに集中し、もっと続けられそうな気持ちがしても、毎日のリズムを崩すことのないように自制をかける。そして、モチベーションが高い時は、その高いモチベーションをそのまま翌日に持ち越すように心がけるのだとか。
自己との対話としてのランニングと人生の比喩としてのマラソン
また本書を通じて特に印象に残ったのは、ランニングを「自己との対話」として捉える村上の視点。走ることを通して感じる体の調子や、頭の中を巡る思考を整理する時間は、自分を見つめ直す貴重な瞬間であると語られています。
同じくマラソンという競技が人生の比喩として描かれている部分も強く心に残っています。走ることは、競争ではなく、自分自身との戦いであり、どうゴールまで進んでいくかが重要だという考え方に共感しました。
他人や周りと比べて一喜一憂するのではなく、自分が自分の目標やゴールにどう進んでいき、困難をどう乗り越えていくか、人間としてどう成長していっているかに焦点を当てながら「自分軸で」「自分の人生を歩」んでいきたいですね。
等身大で描かれた著者村上春樹さんの魅力
本書で私がとても惹きつけられたのが等身大で描かれた村上氏。年齢を重ねて感じる身体や気持ちの変化、努力が報われなかった時の失望感や閉塞感、成功も失敗もありのままを描き、必要以上に自分を大きく見せようとせず、最初から最後まで至ってナチュラル。
走ることだけでなく、小説家としての心持ちや、一人の人間としての生き方など、本当にありのままの姿を語っていて、そんな姿が素敵だなあ、と思いながら読みました。
特に笑えたのが男性氏の企画でギリシャに行って、アテネからマラトンまでのオリジナルマラソンコースを逆向きに(マラソンの起源となったのはマラトン→アテネ)走ることになったエピソード。このエピソードの中に、村上氏の魅力がぎっしり詰まっているような気がして、とても親近感が湧いてしまいました。
2025年も素敵な本にたくさん巡り会えますように・・・
2025年は51冊の本を読むことができました!去年よりもたくさん本が読めて、小さな達成感もあります。
来年も素敵な本にたくさん巡り会えますように……。
みなさま良いお年をお迎えください。
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