ヒーロー、架空世界にしかいない説?
「お前らがなんでバカなのか教えてやろうか。それはなぁ、お前らが物を知らねえってことだ。教科書に載ってる知識のことじゃない。世の中の実態と仕組みを知らねえってことがバカなんだよ。お前ら今世界がどういう状況かわかるか。未曾有の危機だ。疫病、天災、それによる経済の麻痺、想像もしなかったことが次々と起きてる。もしかしたら戦争だって起きるかもなぁ。かつての常識はもう通用しない。もう何が起きたって不思議じゃねぇんだ。そうなった時、お前らが住んでるこの国は、何が一番必要になってくるかわかるか。金だ。税金だ。国はなぁ、お前らにはバカなままでいて欲しいんだ。それが本音なんだ。何にも疑問も持たず、何にも知らないまま調べない。ただひたすら政府に従い働き続け、金を払い続ける国民であって欲しい。それを別の言葉に言い換えると何だ。馬車馬だ。国はお前らにはただひたすら黙々と馬車を引く馬車馬であって欲しいんだ。その方が都合がいいからな。世の中は平等だ、国民は自由だ、差別なんか一つもねぇ、そう刷り込まれてきた。だが実際はそうじゃない。どんなに努力しても、どんなに力を振り絞っても、本質を見抜く力がなければ、権力者と同じ土俵にすら立てねぇんだよ。(中略)誰かのせい、国のせい、時代のせい。他人を叩き批判して、文句を言って何が変わる。ルールを作ってる奴らはなぁ、この状況が美味しいからこういう仕組みにしてんだ。自分は関係ねぇからなんて言ってたら、一生騙されて高い金払わされ続けるぞ。何故社会はこうなってるのか、誰がどんな意図でこの仕組みを作ったのか、本質を見抜き、自分なりの答えを出す力を付けろ。その時初めて馬車馬が人間になれる。そのためには勉強するしかねぇんだ。勉強ってのはなぁ、この国で許された唯一の平等なんだ。今お前らは運がいい。今お前らにはこの俺がいる。どんなにバカで間抜けな奴でも、やる気さえあれば東大に合格させてやる。いいか、搾取されるだけの人間になりたくなければ、不満ばかり言う人生を送りたくなければ、お前ら勉強しろ!バカとブスこそ東大に行け!」
来ました来ました!夢中で見れるドラマ。
「ドラゴン桜2」
阿部寛さん演じる桜木。着任早々生徒に檄を飛ばします。
(中間抜粋)
「勉強も学校生活もみんな中途半端。
一日中やれスマホだゲームだ、毎日なんとなくボケーっとした日々を送ってやがる。バカばっかりだ。バカなだけならまだいい。
無関心、無気力、甘ったれ、根性なし。そんなお前らがこのまま何となく世の中に出てみろ。あっという間に薄汚い社会の渦に飲み込まれ、知らず知らずに搾取され、騙され、カモにされ、こき使われる。一生社会の奴隷となって、もがき続け死んで行くんだ。」
生徒に、モンスターペアレンツに、教師に、理事長に、相手の退路を断ち切る事なくどんどんと切り込んでいく姿が痛快かつムネアツ。
そして脇を固める長澤まさみさん、及川光博さん、江口のりこさんら実力派俳優陣は当然すごいのですが、生徒役の若手俳優さん達の神演技!
特に私的には、この頭がいいのに性格の悪さが邪魔をして素直になれない藤井役を演じているこの方(鈴鹿央士さん)!見てて腹が立ってくるほどの「ヤなヤツ」を非常に見事に演じられています。
そしてこの方、細田佳央太さん。聴覚的短期記憶がダメダメなのに視覚的記憶力が超絶天才という発達障害の役の演技が、全くわざとらしく感じられません。
東大を目指す生徒達の中で、一番に名乗りを上げる天野役の人も上手だな~と思って見ていたら、何とビックリ。芸能界音痴の私でさえ知ってる、あの超有名子役だった加藤清史郎さんでした。
キャスト名を見るまで全然わからなかったです。
(私←人の顔認知能力底辺レベル)
が、やっぱり何と言ってもMr.目力 阿部寛さんの桜木そのものな在り様が圧巻です。
「子どもの自由を尊重することと甘やかすことは違う。間違いを犯しても叱らず、目標すらも与えず、そんなんだからここのガキどもは濁ったドブ川みたいな目をしてるんだ。自由にかこつけて守ってるのは、生徒ではなくお前ら自身の立場だろう。責任って問題から目を背けてるだけだろう。」
たくさんの名言が光ります。
・ちゃんと叱ってくれる
・ちゃんと認めてくれる
・ちゃんと向き合ってくれる
・ちゃんと助けてくれる
・ちゃんと導いてくれる
・勉強を楽しく教えてくれる
いつの世も「金八先生」や「鬼塚」や「ヤンクミ」や「桜木」のような、生徒にも親にも他の教師にも負けず、権力にも屈しない強い教師を描くドラマが熱く支持されます。
でも、現実にこういう先生が存在できるとしたら、よっぽど人間離れした強靭な精神力と、並外れた頭脳と、ブルース・リーなみの腕っぷしがないと無理じゃね?と思ってしまいます。
たくさんの事がタブー化し、先生も生徒も親も、皆が「見て見ないふり」をするのが当たり前になり過ぎて、本来の「学校」が果たすべき使命、「親」としての責任、まだまだ発展途上な「生徒」としての本分。
それらを全部うやむやにする事で、逆に誰もやり玉に挙げなくて済む世の中。
そこに一人で闘いを挑み、真摯で誠実で繊細でありながら、大胆で強靭で勇敢で優しくてチョイ悪で無私で無欲で健康でいられるのか。
誰より人間くさい心と熱い信念を持ちつつ、権力に屈しない、反発にも負けない、脅しにも揺るがない、常に冷静に状況判断し行動できる。
そんな炎と氷を同時に持ちあわせられるものでしょうか。
ドラマとして見ている分にはとても爽快ですが、今の日本、きちんとした事は、こうして誰も責めないで済む「ドラマ」や「映画」みたいな形式を取って、自分の身に直接ふりかかっている事じゃないかのように、遠回しに伝え、問題の解決を到底「人間」だと無理なほどの「ヒーロー的存在」に全てを丸投げしてしまう現実をより強烈に感じさせられます。
答えはやっぱり冒頭に引用した桜木の言葉の中でしょうか。
ヒーロー的な一人に託さず、親も学校も生徒も皆それぞれが「誰かのせい、国のせい、時代のせい。他人を叩き批判して、文句を言う」事を止めて、今、「今の自分」に出来る事を考え、その一歩を踏み出す事を。
とにかく、今7話まで更新されているので続きが楽しみです。