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【読書体験】大好きなイチオシファンタジー|ドラゴンの塔
好きすぎて自分に刺さりまくっている本に関して話すのは難しい。
あまりにも前のめりに読みふけってしまうと、今まで書いてきた読書感想のように、一歩引いた目線で書くことができない。
私は、主体性を持って生きていく気の強い女性主人公が好きだ。
私は、気難しいけど、どこか憎めない不器用な男性キャラクターが好きだ。
私は、濃密に幻想世界を想起させるハイファンタジーが好きだ。
そんな彼らの恋愛・冒険活劇がこれでもかと詰め込まれているのがこの本、『ドラゴンの塔』である。
私はこの本を書店の海外文学コーナーで見つけ、一発で気に入って購入した。あらすじを見るまでもなく表紙だけで、この2人の恋愛譚だと分かったし、そして2人の性格が上に挙げたような、私の好みにドンピシャだと分かった。
あらすじを引用する。
東欧のとある谷間の村には、奇妙な風習があった。100年以上生きていると言われる魔法使い「ドラゴン」によって、10年に一度、17歳になる娘が一人選ばれる。その娘は、谷はずれの塔に連れていかれ、ドラゴンとともに暮らさなければならない。10年経って塔から出てきた娘は、まるで別人のようになり、村に戻ってくることはないという。
アグニシュカは17歳。そして今年はドラゴンがやってくる年。平凡でなんの取り柄もない自分が選ばれることはない、と思っていた。しかし、ドラゴンに指名されたのは、アグニシェカだった。
全米の識者が選ぶSFファンタジーの最高傑作、ネビュラ賞受賞。ノヴィクの最新話題作。
この本は素晴らしい。主人公のアグニシュカは気が強く、負けず嫌いで、どんな逆境にもめげず、果敢に挑戦していく。いつの時代もこういう女性を見ていると、なんだか勇気をもらえる。
ドラゴン、と呼ばれる(本名は別にある)魔法使いはいかにも気難しく、堅物で、口が悪いが、心の底では優しくて、次第にアグニシュカの才能と魅力に惹かれていく。
それに寄り添うのは、濃密な森の描写だ。物語の根幹に穢された『森』との闘いがあるのだが、執拗なまでの描写で、あたかも森林の中に居るかのような、むせかえるような緑の匂い、じっとりと肌に絡みつくような湿気まで感じ取れる。
また、面白いのはドラゴンの心の動きだ。ずっとアグニシュカの視点で描かれていくので読者の想像に任されている部分は多いのだが、「小娘」と思っていたアグニシュカに次第にペースを乱され、気が付けば彼女のことが頭から離れなくなっている。ものすごい年齢差なので必死に自分を抑えようとするのだが、アグニシュカが積極的に迫ってくるからついにはそれも決壊し……というのが読者(というか私)の視点からは明らかだった。
気難しい人が自分を必死に抑えようと、様々な論理武装を駆使して、それでも流されていくのって面白くない? 私だけ?
ドラゴンがアグニシュカに惹かれていく様子というのは、間接的な描かれ方をしている。例えば、作中何度も、「彼の手は常にとても熱い」という表現をされるのだが、アグニシュカに命の危機があった時、その手は「冷たい」と表現される。作者はこの落差を書くために、何度もドラゴンの手が熱いことを描写した。
こういう、はっきりと語られない行間を読むのも面白かった。
※ネタバレ注意
一番面白かったのは、最終的に、ドラゴンはアグニシュカとの別れを選ぶのだが、アグニシュカはそれに悲しみも怒りもしなかったということだ。
私はピンときた。
アグニシュカは、彼がすでに自分のものだと分かっている。だから、「彼は戻ってくると信じている」のではなく、「分かっている」のだ。
そして、彼はやはり戻ってきた。彼女はそれを当たり前のように迎えた。つまりそういうことだ。
私はそれを見ながら、ニヤニヤした。物語は、やっぱりハッピーエンドでないと。
そう、この本はとても面白かった。ちょっと古い言い回しだが、萌えた。
夢中になって読める本は稀だ。私はこの本が大好き。
作者のナオミ・ノヴィクさんと、翻訳者の那波 かおりさんと、出版してくれた静山社に心から感謝を捧げたい。
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