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『The Culture Map』を読み解く②~異文化理解の鍵、ハイコンテクストとローコンテクストの違い~

本日は、『The Culture Map』by Erin Meyerの第一章を読み解きます。邦題は『異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』です。


本への興味のきっかけとご紹介スタイル

きっかけ:

「日本生まれ、米国育ち」と「DE&I」が繋がり、私が生涯を通して学びたいテーマに関する内容が扱われているためです。

ご紹介スタイル:

この記事では、本書の全内容を紹介するのではなく、「面白い!」と思ったポイントを抜粋し、私自身の感想や体験を交えながらお伝えしています。また、最後には必ず私の学びの一環として、読書中に出てきた重要な単語やフレーズをまとめます。

★詳細は初回記事に掲載しています:

<著者の公式ウェブサイト> 

https://erinmeyer.com/

<本の目次>

Introduction: Navigating Cultural Differences and the Wisdom of Mrs. Chen
1. Listening to the Air
 Communicating Across Cultures
2. The Many Faces of Polite
 Evaluating Performance and Providing Negative Feedback
3. Why Versus How
 The art of Persuasion in a Multicultural World
4. How Much Respect Do You Want?
 Leadership, Hierarchy, and Power
5. Big D or Little d
 Who Decides, and How?
6. The Head or the Heart
 Two Types of Trust and How They Grow
7. The Needle, Not the Knife
 Disagreeing Productivity
8. How Late is Late?
 Scheduling and Cross-Cultural Perceptions of Time
Epilogue: Putting the Culture Map to Work

The Culture Map by Erin Meyer

1. Listening to the Air:Communicating Across Cultures

この章では、筆者がさまざまな人種との交流(仕事を通じて)の経験を元に、各国のコミュニケーションスタイルの違いやその背景について考察が述べられています。

ご紹介したいポイント

◆「良いコミュニケーション」の定義は国により異なる

(omitted), the skills involved in being an effective communicator vary dramatically from one culture to another. In the United States and other Anglo-Saxon cultures, people are trained (mostly subconsciously) to communicate as literally and explicitly as possible. Good communication is all about clarity and explicitness, and accountability for accurate transmission of the message is placed firmly on the communicator: "If you don't understand, it's my fault."
By contrast, in many Asian cultures, including India, China, Japan, and Indonesia, messages are often conveyed implicitly, requiring the listener to read between the lines. Good communication is subtle, layered, and may depend on copious subtext, with responsibility for transmission of the message shared between the one sending the message and the one receiving it. The same applies to many African cultures, including those found in Kenya and Zimbabwe, and to a lesser degree Latin American cultures (such as Mexico, Brazil, and Argentina) and Latin European cultures (such as Spain, Italy, Portugal) including France.

The Culture Map by Erin Meyer (pp.31)

「(省略)効果的なコミュニケーションに必要なスキルは、文化によって大きく異なります。アメリカや他のアングロサクソン文化では、人々は(ほとんど無意識のうちに)できる限り文字通り、明確に伝えるように訓練されています。良いコミュニケーションとは、明瞭さと明示性が重要であり、メッセージを正確に伝える責任は話し手にあります。「もし理解できなければ、それは私の責任です」という考え方です。

対照的に、インド、中国、日本、インドネシアを含む多くのアジア文化では、メッセージはしばしば暗示的に伝えられ、聞き手が行間を読むことが求められます。良いコミュニケーションとは、繊細で多層的であり、多くの文脈を含むことがあり、メッセージを伝える責任は話し手と聞き手の双方に共有されるものと考えられています。同じことは、ケニアやジンバブエを含む多くのアフリカ文化にも当てはまります。さらに、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなどのラテンアメリカ文化や、スペイン、イタリア、ポルトガルを含むラテンヨーロッパ文化、そしてフランスにも、ある程度当てはまります。」

各国の文化の違いがコミュニケーション方法に大きな影響を与えていることがわかります。つまり、「良いコミュニケーション」の定義が異なるため、(本書でも紹介されている通り)当然、義務教育で習うコミュニケーションの方法も異なります。

私はアメリカで育ったため、日本人特有の「空気を読む」が理解できず、「なんで暗に示すの?わかりにくいー!最初から言ってくれればいいのに、また確認するのが面倒!」と思っていました。また、アメリカで母がとても日本人的な態度をとるとき、例えばその場で質問をせず、後から「あれはこういうことだったのかな、きっとこういうことだったんだよね」と憶測している(笑)のを見たとき、「なんで聞かなかったの?振り返ってわからないなら、その場で聞けばよかったじゃん!むしろ今から聞く?」とすごくアメリカ人的に考えていました。親子でも、考え方が本当に対照的でぶつかることが多かったです(笑)。今では、日本育ちの母の気持ちも理解できるようになり、あまりぶつかることはなくなりましたが、私自身は日本に住んでも変わらず、わからない時やもっと教えてほしい時は「教えてください」と正直に確認するようにしています。むしろ、そうしないとモヤモヤして気持ちが悪いのです。

◆ハイコンテクストとローコンテクスト文化はその歴史的背景にあり!

High-context cultures tend to have a long shared history. Usually they are relationship-oriented societies where networks of connections are passed on from generation to generation, generating more shared context among community members. Japan is and island society with a homogeneous population and thousands of years of shared history, (omitted). Over these thousands of years, people became particularly skilled at picking up each other's messages--reading the air, (omitted).
By contrast, the United States, a country with a mere few hundred years of shared history, has been shaped by enormous inflows of immigrants from various countries around the world, all with different histories, different languages, and different backgrounds. BEcause they had little shared context, Americans learned quickly that if they wanted to pass a message, they had to make it as explicit and clear as possible, with little room for ambiguity and misunderstanding.

The Culture Map by Erin Meyer (pp.40)

「高コンテクスト文化は、長い歴史を共有していることが特徴です。こうした文化では、人とのつながりが重視され、世代を超えて受け継がれるネットワークの中で、共通の背景や価値観が深まっていきます。日本は島国であり、人口の均質性が高く、何千年にもわたる共通の歴史を持っています。(省略)この長い歴史の中で、人々はお互いのメッセージを汲み取る能力に長け、「空気を読む」ことに熟達してきました。(省略)

対照的に、アメリカはわずか数百年の共有の歴史しかなく、世界各国からの大量の移民によって形成されてきました。移民たちは異なる歴史、言語、背景を持ち、共通のコンテクストがほとんどありませんでした。そのため、アメリカ人はメッセージを伝えたい場合、あいまいさや誤解の余地を極力排除し、できるだけ明確かつ具体的に表現することを早い段階で学びました。」

これは現在でもほとんど変わっていません。日本は今でも単一民族の割合が高く、画一的な文化が根強いため、「空気を読む」文化が強く残っています。一方、アメリカは移民が非常に多く、何を意図しているのかをはっきりとダイレクトに伝える文化が形成されています。最近では、悲しいことに排除的な動きも見られますが、それでも多様性が重要視され、ビジネスの現場では「DEI(Diversity, Equity & Inclusion)」が当たり前となり、多様な背景を持つ人々が働く環境が整えられています。そのため、アメリカではローコンテクスト文化に基づくコミュニケーションが推奨されており、日本でもその影響を受けるようになっています。

この本では、左から右にローコンテクストからハイコンテクストの国を並べた軸を示しています。なんと、最もローコンテクストに位置するのはアメリカ、最もハイコンテクストに位置するのは日本です。私自身は基本的にローコンテクスト文化寄りの話し方を好むのですが、アメリカと日本の文化にどっぷりと浸かってきた経験から、状況に応じて自分のコミュニケーションスタイルを柔軟に変えることができるようになりました。

筆者も書いているように、コンテクストは「相対的に考えること」であり、アメリカと日本の間には多くの国々が存在します。そのため、話している人の出身や育った環境によって、このコンテクストの濃淡は変わるのです。

(補足)ローコンテクストとハイコンテクストの定義

ローコンテクスト文化:良いコミュニケーションとは、正確でシンプルかつ明確であること。メッセージは文字通りに伝えられ、受け取られる。理解を深めるための繰り返しも歓迎される。

ハイコンテクスト文化:良いコミュニケーションは洗練されており、微妙で多層的です。メッセージは言葉として伝えられるだけでなく、その背後にある意味も読み取られます。メッセージはしばしば暗示的で、直接的には表現されません。

◆ハイコンテクスト文化で上手く働くためには…

(omitted) to listen more, speak less, and then clarify when you are not sure if you understood.

The Culture Map by Erin Meyer (pp.51)

「(省略)もっと聞き、多くを話さず、理解できていないと感じた時には確認することが大切です。」

Self-deprecation allows you to accept the blame for being unable to get the message and then ask for assistance.

The Culture Map by Erin Meyer (pp.52)

「控えめな態度は、メッセージを理解できなかったことを自分の責任として受け入れ、その後助けを求めることに役立ちます。」

これは前回も少し取り上げましたが、「異文化の人と接する際は、より多くを観察し、より多くを聞き、あまり話さないようにしましょう。話す前に聞き、行動する前に学びましょう。」というアプローチの具体例です。

アメリカのようなローコンテクスト文化では、すべてをはっきりと事細かに伝えますが、ハイコンテクスト文化では最低限の話をしつつ、わからない時には確認をとっていきます。自分の理解が足りなかったときには相手のせいにするのではなく、「自分に非がありました!」と一歩引いて丁重に接することがカギとなります。

経験上、「相手の話し方や態度が悪い」と思うと、異文化コミュニケーションは本当にうまくいきません。私も日本人ですが、アメリカ文化に触れている自分の側面を相手が理解していないことは当然であり、そのため「空気を読むこと」や「行間を読むこと」ができずに苦労したことが多々あります(苦笑)。若い頃はプライドが高く、「私のせいじゃない」と思うこともありましたが、「相手が違うのは当たり前。その違いを尊重し、お互いの誤解を解いていこう」という姿勢で臨むことが重要だと実感しています。

◆ローコンテクスト文化で上手く働くためには…

Be as transparent, clear, and specific as possible. Explain exactly why you are calling. Assert your opiinions transparently. Show all of your cards up front. At the end of the call, recap all the key points again, or send an e-mail repeating these points strait afterwards. If you are ever not 100 percent sure what you have been asked to do, don't read between the lines but state clearly that you don't understand and ask for clarification. And sometimes it would be better to not be quite so polite, as it gives the impression of vagueness or unceratainty.

The Culture Map by Erin Meyer (pp.53)

「できるだけ透明で明確に伝え、なぜ電話をかけているのかを説明します。自分の意見ははっきり伝え、重要な点を電話の終わりに確認するか、メールで再確認します。もし理解できていない場合は、行間を読むのではなく、はっきりとわからないことを伝え、説明を求めましょう。また、あまりにも礼儀正しすぎると、曖昧に感じられることがあります。」

これを読んでいて思わず笑ってしまいましたが、アメリカ人と話をしていると「これでもか!」というくらいの情報をベラベラと話し続けます。私は「うんうん、十分わかったよ、伝わったよ」と感じながら聞いていますが、これがアメリカの文化なんです。就活や大事なプレゼンテーションでは、相手が「どうしてそう思うのか?」を情熱たっぷりにプレゼンし、その理由をしっかりと示します。これに対して「I am impressed!」と言われ、観客が大勢ならば大歓声が上がります。

私自身、アメリカの義務教育で受けたプレゼンテーションやレポートの授業では、まず結論を述べ、その後その結論を導いた理由を3つほど考え、各段落の冒頭に理由を明示しながら具体例を示し、最後の段落で再び結論をまとめます。何度も結論を繰り返すので、同じ表現を避けるのが本当に悩ましかったのを今でも覚えています。このように、システマティックに書いたり、プレゼンテーションを行ったりする方法は徹底的に教えられます。日常会話でもほぼ同じなんですよね(笑)。

◆ハイコンテクストおよびローコンテクストの混じる環境で働くためには…

If you work with a team tha has both low-context and high-context members, follow Bethari's lead. Putting it in writing reduces confusion and saves time fo multi-cultural teams. But make sure to explain up front why you are doing it.

The Culture Map by Erin Meyer (pp.59)

「ローコンテクスト文化とハイコンテクスト文化のメンバーがいるチームで働く場合、Bethariの方法を参考にしましょう。書くことは、混乱を減らし、時間を節約できます。またその場合には、なぜそれをするのかを最初に説明することが重要です。」

先ほども述べたように、最近のビジネス環境では「記録」が重要です。多様な人々が働く職場では誤解が生じやすい傾向にありますが、その誤解を回避するための方法として、上記のアドバイスは非常に有効です。また、私個人としても「記録」は非常に重要だと考えています。問題が発生したときに「あなたはあの時こう言った」「私はこれを受けてこう言った」と検証できる証拠が残るからです。このため、記録をしっかりと取ることが大切だと思います。

私は日系の大企業で2社の経験があります。1社目は非常に日本的で、口頭文化がまだ多く残る会社でした。一方、2社目では海外の文化を多く取り入れており、口頭で確認したこともすべて記録する習慣が身につきました。正反対の環境でしたが、それぞれに強み(そして弱み)を感じながら学ぶことができ、非常に面白い経験でした。この話については、機密情報を守りつつ、別の記事でキャリア情報として紹介できればと思います。

次の章は、他人を評価する際の表現方法についてです。楽しみにしていてください!

★読書中に出会った単語の解説

読書中に出てきた気になる単語やフレーズをまとめました。意味や例文を参考にして、理解を深めてください。

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yayko@アメリカ🇺🇸【海外/子育て/帰国子女】
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