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なぜ雑談が必要なのか? コロナ禍で求められる雑談力とは
「最近チームの一体感が悪くなってる気がします・・・」
仕事である取引先との会話で出てきた一言。コロナによって、リモートワーク化が進んでいます。都心部ではオフィスの解約ラッシュがはじまっているとのこと。
この変化により組織内でのコミュニケーションの取り方については各企業頭を悩ませています。特に、オフィスワークとリモートワークで大きく変わったのは気軽な会話の機会、いわゆる「雑談」の頻度です。
雑談は相談のきっかけになったり、生産性の向上につながったりと様々なメリットがあります。しかし、コミュニケーション手段がオンライン中心となるリモートワークでは、こうした機会が減少しかねません。
改めて、雑談の価値と、とるべき対策について考えます。
雑談の価値
雑談は一見非生産的な行動に思われますが、組織においてはプラスに働く面がたくさんあります。
日立製作所の矢野和男さんのレポートによると、あるコールセンターの休憩時間中に社員同士の雑談が活発に行われると、職場全体の幸福度が上昇したとの結果があります。加えて、受注率が30%以上向上したと報告されています。
社員の幸福度というメンタル面でのメリットだけでなく、受注率という業務上の成果にまで結びついているのは驚きです。雑談というとどうでも良い会話の聞こえてしまいますが、雑談することで、チームの相互理解が深まり一体感を醸成できる、気軽な質問ができ組織の業務遂行レベルの底上げにつながるなど、組織全体の生産性向上にプラスに働くということです。
また、雑談は「深刻にならない」という雰囲気があり、言いにくい相談もしやすい空気があります。こうした気軽な雰囲気は、言いにくいバッドニュースをクイックに組織内に流通させることができ、早めに手を打つことができます。大火事を未然に防ぐ効果もあるということです。
リモートワーク下での雑談機会の変化
リモートワーク下では基本的には会議を招集して会話することがデフォルトになります。廊下でばったり会った「おお!久しぶり」とか、コピー機の前で「最近どう?」とか、隣の席の人の顔見て「顔色悪いけど大丈夫?」とか、食べているモノを見て「お!それ新商品?」といった、軽い接点からの会話はほぼなくなります。雑談の「きっかけ」がないのです。
こうしたちょっとした会話から、親密度が上がったり、人を紹介し合ったり、知識の共有ができたりするのですが、その機会がすっぽりなくなってしまいます。
また、リモートワーク時代の大きな問題として「孤独」によるメンタル面での問題があります。特にこの環境で新入社員として入ったメンバーや、転職してきたメンバーは「大丈夫?」「何か問題ない?」といった先輩社員の一言で救われるところが大きいです。それがない。内向的な性格の人は特に孤立化してしまいます。これは離職率を上げることにもつながります。
雑談機会の減少は放っておくと、組織力を大きく低下させることにつながりかねません。
雑談する上でのマインドセット
書籍「アフターデジタル」の著者である尾原和啓さんはリゾート地を転々としながらテレワークを実践されているテレワークの達人です。コロナが問題になるずっと前の段階からビデオ会議などを活用し、世界中のテック関連の知識人と接点を持ち、テレワークの要点を研究されている方です。
そんな尾原さんは雑談を意義のある方向に導く秘訣は大きく3つあると言います。
①マイクロインタレスト(ちょっとした興味)
②自己開示(弱みをさらけ出す)
③コミットメント(当事者意識を持つ)
ホウレンソウだけを続けていると、コミュニケーションは堅苦しくドライになってしまいます。心理的安全性が担保されずに部署メンバーの間にいつの間にか「心の壁」が生まれてしまいます。結果、チームの一体感は損なわれてしまいます。
特に①②は日々の雑談で言葉を交わすことで、お互いの状況知り、お互いの人を知ることにつながり、チームの風通しはよくなります。意識したいポイントです。
雑談するための仕組み
テレワーク化での雑談は仕組みが必要です。要点を3つご紹介します。
①雑談専用のチャットチャンネルを持つ
各職場で活用しているチャットツールで、「雑談専用」のチャンネルを作るのは非常に有効です。仕事用とは別に雑談専用のチャンネルを作ることで、気軽にコミュニケーションできるようになります。
しかし、ただチャンネルを用意するだけでは会話は生まれません。そこで有効なのが「問い」です。ただ単に挨拶をしあうだけでなく、「今日の調子はどう?」とか「今日のテンションは何%?」といった質問を入れることで、会話が活発になります。
また、リーダーは率先して失敗談を書き込むことも有効です。「傘を忘れてずぶ濡れです…」とか「クーラー利かせ過ぎて風邪気味…みんなも注意しましょー」とか、ダメな部分を年長者がさらけ出すことで、何を言っても良い場なんだという雰囲気を作ることができます。
②スタンプの積極活用
コミュニケーションは言葉や文字だけではななく、イラスト、スタンプ、写真なども活用することで、より柔らかい雰囲気が作れます。これはリアルな対面での雑談より長けている面と言えます。
メンバーがふざけてユニークなスタンプを投稿し、他のメンバーがかぶせたり、ツッコミを入れたりすることで、楽しい雰囲気が醸成されていきます。「写真で一言」のように、写真一枚と1メッセージで誰が一番面白いかを競っても面白いです。
ビジュアルでコミュニケーションすることで、「楽しい空気」はデジタル上でも作ることができます。
③雑談タイムの確保
最近はオンライン飲み会も増えていますが、こうした「雑談する時間」を予定として確保するのも有効です。飲み会だけでなく、ランチ会や、モーニングコーヒー会、アフタヌーンティー会など、日中に交流の時間を持つのもよいです。
先日、北欧諸国が取り入れている「フィーカ」という優れた文化をご紹介しましたが、こうした時間を活用するのもよいです。仕事の一部の様に、「雑談タイム」をしっかりと予定に入れて時間を確保することが大切です。
まとめ
働く環境の変化で、人と人とのコミュニケーションのカタチが変わっています。リモートワークは新しい働き方であり、そこには大きな可能性があります。一方で、組織力の土台を形作る「雑談」の頻度は低下しています。放っておくと、知らない間に組織の風通しは悪くなり、ひいては孤立化、メンタルの問題に発展しかねません。
意図的に雑談が生まれる組織にするためには持っておくべきマインドセットと、それを実行する仕組みが必要です。
「雑談」はこれまでは「時間があったらやる」というレベルのものでした。しかし、今のリモートワーク前提の働き方では「時間をつくってやる」という、意図的に取り組むこととして位置付けられてきているように思います。
仕事の生産性を上げ、メンバーのメンタルバランスを維持し、前向きに楽しく仕事をしていくためにも「雑談の場」をしっかりとデザインしていきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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