『月夜の叫び』(掌小説)
雨上がりの晴れた空に大きな満月が世界を照らす夜、残業を終えたサブローは空を見上げることもなく、月の光を遮るネオンと、コオロギの鳴き声をかき消す店の営業曲が跋扈する繁華街を通り抜けて一目散に待ち合わせの場所に向かった。そして学生時代の友人達と落ち合い、カラオケ店に入った。
友人達が次々と叫ぶ曲名を調べ、サブローが機械に入力していく。
そのとき、隣の部屋から女性のシャウトする声が聞こえてきた。
「すんげえ声。おいサブロー、どんな女か見てこいよ」
「仕方ねえなぁ」と言いつつ、部屋を