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『 龍の魂を授かった娘(後半) 』

そうこうしているうちに、娘と男性は親密な関係となっていった。娘の父親もそんな二人の様子を微笑ましく見守っていた。
互いに惹かれ合っている事に気付くのにそう時間はかからなかった。
ふたりは恋に落ち、愛を語り、やがて娘はひとつの命を宿した。それは、宵闇に淡い乳白色の光が差し込んだ時の事だった。愛する男性と結ばれ、娘は幸せの絶頂だった。
娘と男性はお腹の子が育っていくのを大切に見守り、娘の父親もまた、孫の誕生を心待ちにしていた。

そんなある日の事だった。
村で火事が起きた。いつも娘の小料理屋にやってくる気さくな医者の病院だった。
入院している患者もたくさんいる病院に火の手が上がり、火消し隊が急ぐも、炎の勢いは止まらない。
心配そうに病院の様子を見に駆け付けた娘と男性、そして父親だったが、もはや手遅れと思えるほどに炎の勢いが増していた。
と、その時だった。突如男性が、その姿を変えたのである。驚く娘の前で男性は巨大な龍となり、天高くまで上り詰め、滝のような雨を降らせた。
その雨のおかげで病院の家事は鎮火され、逃げ遅れた者たちも全員一命を取り留めた。
驚いたのは娘と父親、そして村の人々だった。

「まさか……龍神様だったとは……!」

人間に姿を戻した男性は、娘の元へ戻ってくると「正体を知られてしまったからには、もう一緒にはいられない」と哀しそうに別れを告げた。
「天からいつもお前たちを見守っている。楽しく幸せなひと時に感謝申し上げる」
そして宵闇の中、男性は再び元の龍の姿に戻り、一筋の淡い光となって天空へと昇っていった。

龍神様の子どもを身ごもった娘は、新月の宵闇の中、男児を産み落とした。
新しい命が誕生する瞬間、娘の身体は淡い乳白色の光に包まれたという。その光は、さながら龍神様が娘を見守り、出産の手助けをしているかのように見えたと、立ち会った父親や産婆はそのように語っている。

これは、とある小さな村に起きた小さな奇跡と愛の物語。
龍神様は今日も村の平和と家族の幸せを空高くから見守っている。



ー完ー




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