スピノザの「表象」概念
スピノザの「表象」概念については「エチカ」第2部定理17に詳細な説明がしてあるんだけど、文章だけだとややこしいので図解してみた。
スピノザは人間身体を軟らかい諸部分と流動的諸部分の二つに区分している。それが上図のように重なっているとしてみよう。
すると外部からの物体が人間身体に接触すると、サンドイッチ状になって二つの部分が凹むことになる。
すると外部の物体が人間身体から離れた後でも、凹みが残る。
その凹みに流動的諸部分が流れると、外部の物体が存在しなくても、流動的諸部分が凹みを感知して、あたかも外部の物体が存在するかのように感じる。それがスピノザの言う表象である。
こういう説明を読むと、私はフロイトのマジックメモを連想してしまう。
つまり流動部分がパラフィン紙で、軟らかい部分が蝋盤に相当するようだ。フロイトはエチカのこの定理に影響されたのかもしれない。
当時の自然哲学の限界があるとはいえ、妙にリアリティのある描像だ。
説明を簡単にするため流動的諸部分と軟らかい部分を重ねてみたが、もちろん両者は別々であってもいい。
表象を喚起するか否かは、流動的諸部分が軟らかい部分の凹みに流れるか否かによるのである。
スピノザはそこまで言及していないが、流動的諸部分の流れる方向によっては、表象の組み合わせが変化するであろう。例えば羽根の痕跡とウマの痕跡の二つの凹みに流動的諸部分が流れると、ペガサスという想像上の表象となる。
ということは、表象には身体の凹みという実在的根拠があるということだ。
したがって外部の物体についての存在判断を保留すれば、つまり現象学的還元を行えば、身体の凹みを感知する表象それ自体は真理である。存在しないものを存在するという思い込みが誤謬なのだ。