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日本酒は酸味がないと始まらない。

「これ、まさにパイナップルジュース!」

って、立ち飲み屋さんでテンションの上がってる人がいる。

ぼくもその1人だ。

パイナップルジュースを想起させる、フレッシュで甘酸っぱく瑞々しい日本酒は確かにある。

最近飲んだ銘柄だと、

『花浴陽』や、

『三芳菊』など。

これらのお酒は確かに甘酸っぱくて瑞々しい、フレッシュなパイナップルジュースの味わいがある。


日本酒にとっての「酸味」とは。

「他のお酒と比べた場合、日本酒の味わいの特性は甘味と旨味にある」

と、日本酒の教科書には書いてある。

その通りだと思う。ビールやワインを思い浮かべればすぐわかる。ビールやワインを指して甘みと旨味がセットで味わいの特性です、とは言えない。

ただ、日本酒の味わいを感じるにあたって外せない要素がもう一つある。

酸味だ。

酸味にも色々とある。

冒頭に書いた「パイナップルジュース」感を生み出すのは、間違いなく酸味の存在感が大きい。

この場合は、「甘酸っぱい」の「酸っぱい」にあたるクエン酸や、果実感の爽やかさを思わせるリンゴ酸が表に出てきていると思われる。『花浴陽』を初めて飲んだとき、その酸味の表現方法に衝撃を受けた。

最近、色々な日本酒を味わいながら「確信」と言ってもいい領域に入ってきた想いがある。

それは、日本酒のバランス感を保つ中心の要素は酸味だということ


酸味がないと始まらない。

上に挙げたクエン酸やリンゴ酸だけではない。

旨みの一部として味に厚みを与えるコハク酸。
ふくよかさ・まろやかさ・旨みを与える乳酸。

・お米の甘みを最大限に表現しながら、くどさを感じさせないのは酸味のおかげ。

・お米の甘みを感じさせながら、綺麗な飲み口を同時に実現できるのは酸味の隠れた下支えがあるから。

・分厚い旨みを感じさせながら、最後にすっきりとキレ感を出せるのも酸味のおかげ。

・味わいの重なりを、バラバラ感なくまとまりを保って演出しているのも酸味。

日本酒の特性は、甘みと旨みにある。

ただ、甘みに「甘み」の輪郭を与えるのは酸味だ。旨みを「旨み」と呼べるのは、そこに酸味があるからだ。

日本酒は、酸味がないと始まらない。



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