11月も野菜の高値が続く理由【八百屋から見た“食”no.68】
11月も中盤に入ります。
ようやく最低気温1桁の日も出始め、秋らしい陽気になりました。
毎年11月12月は秋冬野菜もりもり、溢れんばかりボリュームたっぷりの野菜売場そこかしこなのですが、現状は野菜全般、かなりの品薄と高値。野菜売場を見回しても根菜以外の品揃えが寂しい状況です。
他業種同様、野菜ももちろん生産・物流・店舗運営コストがあがり物価上昇局面なのはまちがいないですが、現在の高値は理由が異なります。
今年は11月に入っても
野菜出荷を“夏の産地”に頼る状況。
端境期が長引き「無いから高い」局面が続きます。
おおまかな理屈は既出noteに詳しく書きました。
↓↓ ざっくり読まれてから進むと理解が深まります ↓↓
2024年は猛暑がとにかく長く続きました。
10月後半まで夏日&真夏日。前後するように長雨。
そこにここ数日の急な冷え込みが襲います。
◇冬野菜の育ちが伸びていない
全国の冬野菜産地では、秋冬1番手(10月末〜11月前半)に収穫→出荷すべく、8月後半に苗を準備し定植します。ところが気温も高く湿度も高い。日射も強い。8月9月ずっと猛暑。猛暑下=地表温度50℃。ほぼすべての冬野菜/産地で予定通りに苗を植えられませんでした。10日~2週間の遅れ。強行して植えても「発芽しない・葉は枯れる・実も葉も傷む・根は腐る」。高温多湿で虫食いも多発。生育初期も生育途中もダメージが大きく収穫前に傷む状況。出荷量が増えていません。現在進行形です。
トマト・ミニトマト・きゅうり・茄子・ピーマン・スナップ
キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・白菜・レタス
大根・長ネギ・人参
これらの品目は、本来なら夏産地の出荷が終わる10月じゅうに、秋冬産地の生育が追い付き(東海・関西・四国・九州・東京近郊といった)産地リレーで引き継がれ、冬場の安定出荷に繋がるはずでした。
ところが東海・関西・九州は関東以上の猛暑続き。さらに関東と比較にならないほどの大雨長雨。線状降水帯も発生。適時に植えられなかった影響は特に九州で大きく、作付けと生育がおよそ1ヶ月後ろにずれています。地域や作目によっては植え直しも。出来上がった野菜も猛暑豪雨の影響が大きく品質が安定しません。生育不良で出荷中断したり、水分が多すぎて傷んだりと散々です。
毎年大なり小なり訪れる“はざかい期”。今年は「きゅうり・茄子・ブロッコリー・大根・キャベツ」の“産地リレー”が特にうまく繋がらず品薄が長引いています。冬産地からの出荷はまだわずか。夏産地最後の収穫や在庫を引っ張りに引っ張った現状。今年は11月を迎えても(根菜&かぼちゃ以外)売場に並ぶ野菜の多くがまだ夏産地のままです。
◇夏野菜は終了局面
夏産地は標高や緯度の高い冷涼地域。11月に入り一気に朝晩が冷え込み、霜も雪も降り出しました。生育もさすがに伸びずそろそろ畑じまい。細々とした収穫や出荷も終わります。産地リレーがぶつっと途切れ、出荷/流通が減ると価格はさらに上がります。
猛暑で植えられない
日照不足で育たない
大雨で傷む
急な高温で膨らむ/割れる/傷む
急に冷えて育たない
急に冷えて夏産地が終わる
の五十苦六十苦。品薄・欠品・状態不良・高騰が続きます。
多くの野菜が11月末〜12月には出揃います!
キャベツ・ブロッコリーといった温野菜や、春菊・長ねぎ・ほうれん草・白菜といった鍋野菜も、回復/生育にもう少し時間がかかります。復調を待ちましょう。
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<補足①>
葉物は育ちが早く8月9月定植→10月11月収穫。大型露地のキャベツやブロッコリーで3-5カ月。トマトなど、枝葉を茂らせ実を収穫する作目は植えて実るまで半年以上。地中で育てる作目は人参で半年弱、たまねぎ・長ねぎは1年弱かかります。生育期間が長い作目ほど気象災害・病害・虫害に遭うリスクは高く、商品化/出荷できる割合(歩留まり)も下がります。何年もかけて樹を育てる果樹(≒くだもの)はさらにリスクが高く、歩留まりが悪いことはお分かりいただけるはずです。すでに来年収穫の“新玉ねぎ”や“梅”にも、現在の天候の影響が出はじめています。
<補足②>季節外れ(生育に適さない気候で収穫もない:はざかい期)にあたる、アスパラガス・スナップ・ズッキーニ・トマト・きゅうり・なすは、元から毎年無い時期/高い時期。例年より長いはざかい期になりそうです。
<補足③>葉物・つま物(薬味/飾り)も、猛暑によるダメージはとんでもなく大きかったです。9月はパクチー・三つ葉・パセリ・水菜・万能ねぎなどが空前の高値/品薄/状態不良でした。パクチー1束800円-1000円。ただ、生育期間が短い(早い)ため回復も早く、10月後半から徐々に出荷が安定。現在は相場も落ち着いています。