江ノ島に新婚旅行代わりで一泊したけど思いもよらぬ待遇に泣いた夜・・・。
この記事は、前回の「鎌倉、江ノ島への一泊旅行が新婚旅行に早変わり!今でも笑えるあの話。」の続編になりますんで、そっちからお読みになってくださいまし。(´д`)
笑った話の後は、泣いた話かい?
そうなんですよ、泣いちゃったんですよ・・・。(/_;)
前回の話では、日帰り予定の鎌倉散策から始まって、江ノ島に足を伸ばしたついでに一泊して帰ろうかと旅程を変更したところまで、だったのよね。
前回の前編に当たる記事がこれです。
まぁ、こんな笑い話の後で思い出すのもなんだけど、前編で書いたようにそろそろ帰ろうか、という時刻になったわけですが・・・。
そこでまっすぐ帰れば良かったんだけど、疲れたからやっぱり一泊しようかってことで、新婚二人の話がまとまったのですね。
そこで当然ながら、宿泊場所は鎌倉か江ノ島になるわけだけど、鎌倉まで戻るのもめんどくさいし時間も遅くなるっていうんで、江ノ島に一泊することにしたわけですよ。
日帰りのつもりで一日歩き回ったすえに、江ノ島の名物エレベーターを昇った先の、なにやら怪しげな抽選会場のテキ屋さんみたいなオジサンに、突然日本語わかりますか?
と、外国人あつかいされちゃった私の愛する、ダッコチャン・・・・・・いや、ちがったわ、(´д`;) 彼女だったんだけど・・・。
いきなり「ダッコチャン?」「なにそれ?」って感じた人は、前編の「鎌倉、江ノ島への一泊旅行が新婚旅行に早変わり!今でも笑えるあの話。」を読んでみて。
ちなみにダッコチャン・・・・・・昭和生まれのオジサン・オバサンなら、誰でも知ってる有名人です。(^_^)b
そのダッコチャ・・・もとい、彼女と二人で、めぼしい宿探しが始まったと思ってください。
手っ取り早く観光案内所を探そうとしたけど見当たらずに、適当な旅館かホテルを見つけて直接交渉しようかということで、旅館のあるエリアを探したんですね。
見つけた旅館街(というほども無かったけど)で何軒かの宿を見て回り、規模と格式がありそうな老舗旅館風の宿を探し当てたわけですよ。
そこで勇気を振り絞り玄関先で声かけをしたのですが、中々人が出てこないのですよ、大声でスミマセンを連発してやっとこさ仲居さんらしき人が出てきました。
「すみませんけど、お部屋は空いてますか?」
「今から、ですか?」
「はい、一泊したいんですけど・・・」
私たち二人を交互に見ながら
「しばらくお待ちください!」
そう言い残して奥に消えました。
そして、何やら小声でゴニョゴニョ話し合っている様子が伝わってきてから数分後に、女将さんらしき柄物の着物に身を包んだ女性と、さっきの仲居さんがお出ましになったんですね。
「あの、お泊まり、ということでございますか?」
「はい!一泊で・・・」 (泊まり以外に何しに来たって言うのよ)
「あの、宿帳にお名前をいただきますけど、よろしいですか?」
ん?
なんでわざわざ、そんなことを言うんだい?
「はい!かまいませんけど・・・結婚してますんで・・・」ここ強調です。
「あの、お食事の用意はできませんけど、それでもよろしゅうござい・・・」
「え?・・・・・・どうする?食事できないって!」
「外で食べる?・・・・・・やっぱり帰る・・・?どうする・・・?」
彼女が不安げに私を見つめて問いかける姿と、上がりがまちに座りもせず立ったままで見下ろすオバサンふたり組の絡みつく視線が、私の視野に入っている・・・。
「じゃぁ、食事はどうにかしますんで!」
きっぱりと言い切った私たちを訝しげな表情で見つめながら
「あの、お宿代は前払いになってますけど・・・よろしいですか?」
なんか、ここら辺まで来たら、泊めたくないなら泊めたくないと、はっきりそう言いやがれ! ってな気分でしたね、もちろんそんな思いはおくびにも出さず。
そして玄関先で靴を脱いで敷台に上がると、すかさず仲居さんが二人の靴を差し押さえでもするかのように確保するじゃないか!
よくよく見ていたら、目立たぬ場所にあった履き物棚に保管しているだけだったんだけど、ね。(´д`)
玄関の敷台で交わした交渉では、泊められるのは特室しか残っていないということだったので、奮発してその特別室ならぬ特室に決めたのですよ。
宿帳にしっかりと夫婦2名分の名前を記帳し、予想外の高い料金に脇汗を書きながらも泰然自若を装って、持参してきた全財産の中から宿代を前払いして、何やら大仕事が終わったような気分・・・だったのよね。
まぁ、そんな雰囲気の中で2階のお部屋への案内となったわけだけど、廊下も古めかしいものの格式がありそうで、聞かされた特室の宿泊料金から推測してもお部屋の設えも期待できそうだ・・・。
お部屋に通されたときの最初の感想はなんと言おうか、なんて期待に胸を膨らませて仲居さんの後から付いていったのね。
何回か廊下を折れ曲がっていった突き当たりの右側に、ん?と首をかしげたくなるようなドアがあった・・・・・・ここ? 江ノ島で奮発したのにココ?
そう、そうなのよ、ここだったのよ!
でも、ドアはみすぼらしそうだけど中は立派な設えで、けっこうゴージャスな気分に浸りきれるっていう、豪華なお部屋になってるじゃないの!
ねぇ、ココにしてよかったねぇ・・・・・・。
そんな展開が頭をよぎったのもつかの間、現実はもっと厳しかったのです。
「特室は、こちらのお部屋でございます・・・」
そう言ってドアを開けてから、部屋のカギを渡すと
「明日のご出発は10時まででしたら、ご自由にお帰りくださいませ!」
なんて言うじゃないか、当たり前だよ、前会計で済んでるんだから・・・。
「玄関は22時には鍵をかけますので、外出はそれまでにお済ませください」
なんて、冷たく言い放つと
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
と、やけにゆっくりと、ごゆっくりを言いやがって、この・・・。(/_;)
仲居さんが足早に去る後ろ姿に、カメハメ波を飛ばしてから部屋に入ってみると・・・。
・・・・・・狭い、なんて狭いのよ。おまけに窓が小さい・・・。
部屋の照明を全部付けても、まだ何となく薄暗い印象の4畳半くらいのスペースしかない部屋の壁際に、ギリギリに寄せたベッドが1つ。
それも、それもだよ、普通のベッドじゃなぁぁ~~い!
腰掛けるとギシギシ音がする、古ぅぅ~いスプリングの箱のようなベッドの上に、なんと言うことだ、お布団が敷いてあるじゃないの!
おおぉ~っと、これが和洋折衷ってやつか! (´д`;)
そんなはずが無い、こんなのを和洋折衷とは言わないはず・・・部屋で見つめ合う二人は、惨めな思いをこらえるのに必死だったのです・・・。
特室は、特別な部屋ではあったけど、ゴージャスなほうの特別ではなかったのよね、貧弱貧相なほうの特別だったのですよ。
そんなお粗末な部屋に押し込まれてしまった私たち夫婦、人の足下を見るってこういうことなのよね・・・。(/_;)
たっぷりと人生経験を積んだ今ではよく分かるけど、この特室ってヤツは宿の中で布団部屋とか住み込み用の部屋とか、備品などをしまう納戸として機能していた部屋だったんだと思います。
そこを臨時用の客室として使っていたんだと思うのね、団体客の添乗員の部屋とか、宿代が取れない団体客貸切りバスの運転手用の部屋とか、ね。
窓も胸ぐらいの高さからの小さな窓で、見える景色と言えば宿の屋根瓦と残り3分の2くらいのスペースでのぞける空だけ、という素っ気ない景色だ。
私は彼女が可哀想でならなかったのよね、惨めな思いをさせて・・・。
こんなことなら、帰ればよかった、そう思って聞いたのですよ。
「どうする?このまま帰ろうか?」
すると彼女が答えたのが
「ううん、いいよ、ここでも。二人でいればどこだって思い出になるもん」
うう~ん、なんというできた嫁ちゃんだ、そうだ、愚痴ってもぼやいても会計は済んじゃったのだ、ジタバタせずに楽しもう。
一瞬で立ち直った私は、落ち込んだことなど素振りにも見せずに、泰然自若風を装ったのです。(´д`;)
そこからいったん外出して食事をすることになったのだけど、夜の江ノ島で豪華な料理を出してくれる、なんていう気の利いた店を探すことが出来ずにうろうろするだけ。
せめて豪華な料理で気分を直そうと思っていたんだけど、お腹のすいた彼女の提案でサンドイッチと菓子パンを買って部屋で食べることにしたのです。
たっぷりと買い込んだサンドイッチと菓子パンにアルコールドリンクをぶら下げて、あの特室に向かったのですよ、ふたり仲良く、ね。^^
動くたびにスプリングがギシギシ音をたてる、お布団オンザベッドに腰掛けて昼間の「ニホンゴ、ワカリマスカ?」の話で大笑いしながらの、気分だけ豪華なサンドイッチディナーを楽しんだのです。
若いふたりには、どこで食べるかよりも、誰と食べるかが大事なことで、どこで飲むかよりも、誰と飲むのかがもっと大事なんだと、心の底から思い知った忘れられない夜になりました。
この一泊で私たちが学んだことは大きかったのですね、世間の風の冷たさと悪意のこもった商売根性を、イヤというほど味わった宿だったのです。
もちろんその夜は、ふたり仲良く、お布団オンザベッドで眠りました。
うす暗い中で、彼女の瞼が涙で濡れていたのを、指でぬぐってあげました。
そして心に誓ったのです。
絶対に、彼女が惨めな思いをすることがないようにと、誓ったのです。
二度とこんな思いをさせたくない、あの時そう誓ったから、それからの長い年月を経て、今の夫婦の幸せがあるんだと思うんですよね。
コンプレックスはエネルギー源になる、そう言っていたのは、亡くなった故野村克也さんだったけど、コンプレックスとの向き合い方次第で、自分を磨けるというのも事実ですよね。
コンプレックスを大切にしよう。
自分に対する気持ちと同じように、大切な人には優しくしよう。
世の中のみんなが、大切な人になればいいですよね。
泣いた数だけ優しくなれる・・・。
笑った数だけ幸せになれる・・・。
泣いても笑っても、良いことだらけだ・・・。
それなら、思う存分泣いて生きよう、思う存分笑って生きよう。
そんなことに気がつき始めた、あの江ノ島の出来事だったのです。
それからウン十年を、人を傷つけまいとして、優しくあろうとして過ごしてきた原点が、江ノ島の新婚一泊旅行にあったのだと、この記事を思い出し思い出しして書きながら、改めて認識したのです。
前にもnoteで言葉やコミュニケーションの大切さを、記事にしたことがあるけど、その記事がこちらなんですよ。
丸いタマゴも切りようで四角!言葉尻や言い方に毒はない?使う言葉次第で笑顔も増えれば敵も増す!
今でも言葉尻や言い方に気をつける習慣が身についたのも、この江ノ島の新婚一泊旅行の出来事があったからなんですよね。(^_^)b
思い返せば、ありがたい体験でしたね。
ってことで 今回は前回の「鎌倉、江ノ島への一泊旅行が新婚旅行に早変わり!今でも笑えるあの話。」の続編で
「江ノ島に新婚旅行代わりで一泊したけど思いもよらぬ待遇に泣いた夜・・・。」という、笑った後に泣いた話でした。(/_;)
では!
泣き笑い 幸せつかみ のほほんと