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【倒産後記〜今だから言えること、言いたいこと】

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創業105年の老舗スーパーの社長が「倒産」してからの出来事や心情を綴ります。
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2022年12月の記事一覧

【倒産後記⑨ 倒産社長の家族】

倒産・破産した社長の家族は、計画倒産か資産隠しでもしない限り何も残らない。倒産の全ての責任は社長にあり、債権者に少しでもお返しするために資産は売却され、担保に入れた土地や家も明け渡す。 保険の解約返戻金、車や家財道具も売却され、現金99万円だけが手元に残る。そして世間から白い目で見られる。問答無用!当然だ。 連帯保証人ではない家族に返済の義務はないが、 我が家では「会社を守るため」に全員が資金繰りに協力してくれた。 妻の貴金属や定期預金、ピアノやギター、思い出のCDやD

【倒産後記10 私と会社を救った地域からのカンパ】

倒産して破産する・・・。 頭では分かっていても現実となると地に足がつかない。 弁護士に頼むくらいのことしか思い浮かばない。皆さんもきっとそう。 裁判所で破産処理をするにも金が掛かる💦 負債総額17億円ともなると、裁判所への予納金が400万円、連帯保証人である私の破産費用が100万円、合計500万円も掛かるという💧 私 「先生、急な倒産で500万円も手持ち資金がありません」 弁護士 「いえいえ、この他に代理人の我々にも同額掛かります」 私 「……(@_@) じゃ、いっ

【倒産後記11 一番みっともないこと…】

誰しもみっともないことや恥ずかしい思いはしたくない。惨めな場所にも行きたくない。それは当然のこと。 私は店が倒産した時、思ったんですよ。 ✅クリスマス間近の新聞の一面トップで報道され、そこそこの規模と知名度のあるスーパーが潰れた。社長の私には非難と同情が交差する。できることなら消えて(逃げて)しまいたい…(><) 💡待てよ…、 我が家は代々、生粋の『商人』である。 この舞台の乗り越え方で、我が家系の評価や我が子の生き方が決まる! 逃げてる場合じゃない。 『この生き様

【倒産後記12 人間万事塞翁が馬】

今から5年前、まさか100年以上やってきた会社が倒産して、自分も破産するなどとは夢にも思わなかった。 職業柄、連休も取れないし土日は稼ぎ時。旅行も学生時代に少し行った程度で、友達のみやげ話を聞いて羨ましく思うだけ。 本を読んだり映画を観るのが好きで、「本とか出す人ってスゲェ!」と別世界の人だと思っていた私だが……。 ☂️倒産で裁判所に払う破産処理費用が1,000万円と聞いて絶句(@_@) 手持ち資金ゼロ! ☀️見かねた仲間たちがクラファンで処理費用を集めてくれた ☂

非•自己破産の勧め〜【家財道具を売って生活費を作る】の巻

会社の経営者は融資の連帯保証人になっているケースが多いため、倒産すれば同時に自己破産せざるを得なくなる。日本ではなおさらのことでもある。私はこれを経験したので、余計なお世話と知りつつ、皆さんのご参考になればと思い書かせて頂く😄 まず債権者に少しでも支払う(配当)ために、身近にあるものは換金される。現金99万円以上の手持ち資金、定期預金、保険解約返戻金、自己所有の車なら25万円以上の差額、各種会員権。 これらを「管財人」と呼ばれる裁判所から任命された弁護士が換金していく。

【超訳 現代用語の基礎知識~破産者編】

倒産・破産して性格が歪んだ私が感じた、辞書とは違う言葉の解釈です。 【時期尚早:じきしょうそう】 (使用例) 倒産したのに本なんか出して、人前で話すなど時期尚早だ。債権者に謝罪するのが先だ! (解説)→一生その時は来ない。「倒産社長の復活など俺は永遠に認めない!」の意。法的処理後に債権者以外の人が使う言葉。 【自己責任:じこせきにん】 (使用例) 全ての結果は自己責任だ! (解説)→人を責めるのに最適な言葉。未経験者が多用する。責任を取ることは難しく、その際限はない。

【倒産・自己破産あるある】

私の経験から…。 Q. 死んでお詫びをしなければならないの? ➡️死んだら「死んでお詫びができるか💢」と言われるからムダ! Q. 夜逃げか自◯しかない? ➡️全然必要なし、全くの幻想。逃げなければ、自分のどん底は「倒産を決断した時」と分かる。友達も減らない、元々友達じゃなかった人が去っていくだけ。 Q. 内緒で金を貯めて隠しておけば、破産しても大丈夫? ➡️個人のすべての口座を2年間遡って金の出入りを調べられる。 資産隠しもバレる。行き先が裁判所から警察に変更される

【スーパーやまとが潰れた5つの理由】

私はよく人に聞かれる。 「では、あなたの会社を潰さない様に時間を戻せるとしたら、いつに戻したいですか?」 ✅ 私はこう答える。 「店がまだ4~5店舗くらいで、目の届く範囲で経営していた頃に戻れたら、倒産はしなかったかもしれないし、M&Aもできたかもしれない。 正義の味方気取りで潰れた店を再生したり、儲けに繋がらない社会貢献など、一切しなければ破産まではしなかったと思う…」 しかし振り返ると、その時点時点で私は何一つ迷うことなくそれを推し進めた。他に選択肢がない以上、

【地域貢献、何のため?誰のため?】

✅ 郷原(きょうげん) : 道徳家を装って郷里の評判を得ようとする俗物を差す言葉。 難しい言葉である。 「あれもした、これもした!」と勝手に地域貢献したつもりで自画自賛する私。人によっては気に入らないタイプの経営者である (笑)そんなことは分かっていた(^^; 弊社「スーパーやまと」が100周年を迎えた時、記念式典も記念事業もしなかった。あえて言うなら寂れた甲府市中心街の空き店舗に出店した程度(それもその後お払い箱にされたが)。 友人 「100周年なんだから、なんかし

【あの日・あの瞬間から5年…】

早いもので突然の倒産騒ぎから5年が経ちました。 12月6日、私がFacebookで地元の皆さんに送ったメッセージですm(_ _)m 5年前の今日、スーパーやまとは105年の歴史に幕を下ろし倒産しました。 皆様の期待に応えられなかったことは誠に申し訳なく、多大なご迷惑をお掛けいたしましたことをあらためてお詫び申し上げます。 この5年、筆舌に尽くしがたい毎日を送ってきましたが、これも「贖罪」だと自分に言い聞かせています。 「諸行無常」とは言いますが、皆さんの記憶からも次第に

【男前!よさこいチーム】

私が経営していたスーパーが倒産した後、『こうして店は潰れた』という本を出版し、潰れた店先で妻とニ人で手売りしたことは以前ここで書かせて頂いた。 買いに(会いに)来てくれた馴染みの人たちには、店内に残ったスタッフジャンパーやエプロン、ナベ釜など換金できないものを記念品としてプレゼントした。「プレミアがつくようにまた店を出してよ!」と鋭い激励が飛んだ💦 それから少し経った頃、一枚の写メが私に届いた。 地元の「女性よさこいチーム」のおばちゃん達が、大会でウチのスタッフジャンパ

【人前で話すということ🎤】

皆さんも立場上、人前で話す機会があると思う。トレーニングを積んだプロでもない限り、そう簡単に人の心に入り込むような語りはできないし、自分が満足しても聞き手のそれは違うかもしれない。参考本では「とにかく場数をこなせ!」と愚にもつかない結論だ。 かく言う私も、人前で話をするのは好きではなかったがなぜか「得意」だった (笑) 幼い頃からお笑い好きで、とにかく「ウケてなんぼ」のお調子者。 商人の血がそうさせたに違いない。教育委員長時代も県議から「議会を軽視している!」と怒られた