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神生みの水の神の真の実
前話【ツクヨミノマコト】神生みの薙と波に信の実、神生みはイザナギが天津神、イザナミが国津神の証拠です。何せナギとナミが二組、天と国が五組も生まれてますから。日本書紀は軻遇突智と記すから、別名の方が有名ですが、別名が火之炫毘古神と火之迦具土神の火之夜藝速男神。火の神を産む際に御陰を焼かれて、病み伏せてしまう。
吐瀉物から生まれたのが、金山毘古神と金山毘売神、金山とは鉱山のことと解釈され男女一対で一神と数える。屎から生まれるのが、波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神、こちらも男女一対で一神だが、日本書紀では埴安神か埴山姫、埴輪を想像させる土の神、土壌の神から農業神に祀られる。
尿から生まれるのが、彌都波能売神と和久産巣日神、和久産巣日神の子が、豊宇気毘売神と記して神生みは一段落。漢字表記の原文は彌都能波売神、原文と言っても写しだから、実際の所は不明だが、写しには能と波が逆の朱書きがあって、訂正前ならミツハではなく、彌都能波はミヅのナミだ。イザナミのナミが、波で間違いないと確証を得た。日本書紀が罔象女神と改名するのは、ナミが波を隠すため。
彌都能波売神はいずれにしても水の神、水神さんは田の神、水田は近代まで国力の源泉、水神社は至る所に祀られる。速秋津比古神と速秋津比売神は、河と海に分かれ八神を生む。うち四神が水の神、天之水分神と国之水分神は水源地の神、天之久比奢母智神と国之久比奢母智神は水を汲む道具の神。水は生活に必要不可欠、彌都能波売神は水神さんの起源か。
彌都能波売神と共に尿より生まれた和久産巣日神は、造化三神の神産巣日神と高御産巣日神と同じ産巣日神。産巣日とは万物を生み成長させる、神秘で霊妙な力。古事記は豊宇気毘売神の親と記すのみ、父か母かは不明。しかし日本書紀は、隠したいのか豊宇気毘売神は登場しない。
稚産霊と表記し、頭の上に蚕と桑が、臍の中に五穀が生じる。古事記の大宜都比売神や日本書紀の保食神とは違って、殺されることもないから、死体から生ずることはない。しかし日本書紀はなぜ豊宇気毘売神を隠す。伊勢神宮の内宮に天照大御神、外宮に豊宇気毘売神が祀られるのに。
伊勢神宮外宮社伝の、雄略天皇の夢枕に天照大御神が現れ「一人の食事は安らかでないから、丹波国の比治の真奈井の御饌の神、等由気太神を近くに呼び寄せなさい」は眉唾だ。雄略天皇が丹波勢の力を削ぐため、丹波の神を遷座させた。まあ天照大御神も伊勢神宮に、封印したか禁足している。
崇めるより祟られぬな、屠った敵も祀るのが日本神話の真髄。黄泉比良坂ストーリーの隠しテーマは今後の楽しみとして、豊宇気毘売神は大気都比売神や保食神などと同様に、稲荷神(宇迦之御魂神)と習合し同一視されている。だが日本神話最大の目的は各神様を信奉する各氏族の団結、皆の神様を登場させるから各地の食物の神も全員集合だ。
日本に別々に渡来して、別の場所に同じ神を祀ったならば「ウケ」と「ウカ」ぐらいには名前が似て欲しいですね。ちなみに保食神は日本書紀の完全創作。阿波国の顔の大気都比売神をスサノオが殺しては、阿波発祥がバレバレ、時系列的には王権拡大の国生みより神生みが先だから、天津神が最初に支配した国は阿波、その粟国の女神を長国祖神のスサノオが殺したは、最初は国津神が勝った暗号。
それを隠すため日本書紀はツクヨミに保食神を殺させた。殺されるだけの保食神を氏神とする氏族がいるはずもない。八幡神社と共に神社双璧の稲荷神社は秦氏の氏神様だ。結局食物神は黒幕秦氏が信奉する稲荷神に統合された。八幡神の応神天皇を担いだのも秦氏、ヤハタは八つの秦だ。天皇家を陰で支えた秦氏、ツクヨミも秦氏が信奉したはずだ。
日本書紀は秦氏の祖を応神天皇14年渡来の弓月君と記し、古事記が記す月読命を日本書紀は月夜見尊、月弓尊と記す。さらに新撰姓氏録によれば、「秦氏は、秦の始皇帝の末裔」、自己申告制だから盛っているが現実的な解釈なのだが、秦氏の最初の渡来が徐福なら、あながち嘘でもない。
金山毘古神と金山毘売神、波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神。男女一対で一神なのは鳥之石楠船神から豊宇気毘売神まで、古事記は八神と記すから。これまで男女一対でも別神だった。イザナギとイザナミ共に生む、島が壹拾四島、神が参拾五神。淤能碁呂島は生んでおらず、蛭子と淡島は子に入らないとわざわざ注釈を入れて締める。確かに大八島と瀬戸内海六島、十四島は合っているが、三十五神は計算が間違っている。
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大事忍男神から、速秋津比売神まで、合わせて十神
沫那藝神から、国之久比奢母智神まで、合わせて八神
志那都比古神から、鹿屋野比売神まで、合わせて四神
天之狭土神から、大戸惑女神まで、合わせて八神
天鳥船から、豊宇気毘売神まで、合わせて八神
10神+8神+4神+8神+8神=38神 35神と3神差
ここで男女一対の速秋津比古神と速秋津比売神、沫那藝神と沫那美神、頬那藝神と頬那美神を一神と数えたと解釈する向きもあるが、これらの神は河と海に分かれた別神、数え方を変えたはおかしい。この後に病に伏せるイザナミは回復することなく黄泉の国へ逝くのを神避りしと記す。そして先程の参拾五神、神避る前と丁寧に説明している。
間違いなく和久産巣日神の子の豊宇気毘売神の誕生は、イザナミが神避りし後だ。ならばあと二神が後で辻褄が合う。それは尿から生まれた彌都波能売神と和久産巣日神。波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神は屎から生まれたのだが、大便が出るのはまだ元気だった証拠。確かに今際の際は尿も極端に少なくなり、用足しに行けずに介護となるが、後でまとめて捨てようとしていた尿から、死後に彌都波能売神と和久産巣日神が生まれたのだろうか。
こんな時間差に意味があるかだが、神避るには意味がある。それはお産は命懸け、神さえ死ぬのだから心しろの教訓。ここで古事記がイザナミを殺すのは黄泉比良坂のため、イザナギが天津神、イザナミが国津神ならば、先に述べた「崇めるより祟られるな」の隠れたテーマだけでなく、黄泉比良坂は倭国大乱を語るから、乞うご期待ください。