八百屋の黒板の物語 「ぽんかん」
夫の母親である佐和子さんのギプスに気付いたのは、加奈が家族と義実家を訪れた今年の元日のことである。右足の足首から先に小さめのギプスをしていて「液体ボールドを落としちゃってね」などと佐和子さんは小さく笑っていた。小柄なのでソファーで脚を伸ばして座っていても邪魔にはならない。けれどいつもの正月なら動き回っている彼女が座っている。それだけで孫たちにとっては珍しいらしく、彼女の周りは終始賑やかだった。
手術こそ無かったものの、松葉杖の生活である。何かと手伝いは必要だが、いまだ現役