旅に出ると人生が開く
◇◇ショートショート
砂浜からエメラルドグリーンの海を眺めながら瑠璃は「やっぱり来て良かった」と思っていました。
ずっとこの地に来たかったのです。
パンデミック以来初めての海外旅行でした。彼女は色々考えてこの場所に立っています。
「あなたね、少しは考えて行動したら、いつもそうなのよ、無謀なんだから、海外旅行なんて」
「お母さん、そうは言っても、私このままだったら、もうずっと海外には行けないかも知れない、思い立った時が吉日なのよ」
そう言って、瑠璃は母の言葉を跳ね返して今回の旅にやって来ました。
外出時にはマスクをつけ、仲がいい友達とも会うのを控えながら、小さなテリトリーの中で、やりたいことを極力我慢しながら生活していた日々から、脱出したいと思っていた瑠璃は、心を解放するためにどうしても行きたい場所があったのです。
それは、かつて友人と旅した韓国の済州島《チェジュトウ》の海岸です。
初めてその海を見た時、クリスタルなエメラルドグリーンの色合いに魅せられたのです。
瑠璃にとって韓国はとても身近な海外でした。食べ物も好きだし、コスメも魅力的で、好きな韓流スターもいて、Kポップだって好きでした。
それまでにも韓国に二度訪れていた瑠璃が、三度目に訪ねた韓国は済州島でした。
数年間付き合っていた恋人に別れを告げられたタイミングだったこともあって、島の自然が瑠璃の心を癒してくれたのです。
特に傷心の彼女の心を挟才海水浴場の美しい海が優しく包み込んでくれました。
だから瑠璃は「またあの海を見に行きたい、あの空気に触れたい、きっと、癒されるに違いない」そう思ったのです。
そして、気心の知れた友達と一緒に、目的の済州島に降り立った時、彼女の心は解放され、それまでの閉塞感が嘘のように、思いっきり前を向く気持ちになりました。
「私にもきっと輝く未来が開けるはず、何だかこれから明るく過ごせそう」そう思えたのです。
「瑠璃、とってもいい顔してるよ」友人が彼女の顔を覗き込んでそう言いました。
「私、夢が持てる気がしてきた、やっぱり旅はいいね、何だか新しい世界が待ってるような気がするよー」
瑠璃はエメラルドグリーンの海を茜色に照らして沈む夕日を眺めながら、大きく深呼吸していました。
済州島の旅はまだ始まったばかりですが、瑠璃は
「思いきって旅に出て本当に良かった、これまで小さく固まっていた自分が、嘘みたいに思える」と感じていました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私は買い物で気を紛らすんよ》
※92歳のばあばと娘の会話です。
「旅したら嫌な事を忘れることもあらいねー、又思い出すこともある、でも美しい景色を見て幸せを感じることもある、ようわからい」
「お母さんにとって旅は・・・」
「私は旅には出かけられんけんねー、買い物で気を紛らすんよ」
そんな風に言いながら、母は買い物にも出かけられていません。
可哀そうだと思っています。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。
また明日お会いしましょう。💗
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?