恐ろしや♡母のこと。
この人のゴールはどこにあるんだろう。最近の母を見ていて私が思う事です。母は今年の6月で91歳になりました。
今、彼女の人生で欠かせないものは、二本の杖とイラストを描くための筆ペンです。
杖を両手に持ってバランスを取りながら一歩一歩向かうのは、リビングのテーブルです。そこに座ると母は暫く動きません。何をしているのかと言うと真剣な表情でイラストを描いているのです。
一枚のイラストを描きあげるのに必要な時間は15分~20分です。
時には楽しげに鼻唄をうたいながら、迷いなく筆を動かします。
極細と薄墨の2本の筆ペンを巧みに使って、自分の思う絵を描いていきます。
最初に4Bの鉛筆で下絵を描きますが、その線と同じ場所に筆を入れることはめったにありません。とっくに頭の中では仕上がりの映像が出来上がっているのです。
筆ペンで輪郭を描き終えたら鉛筆の下絵を消しゴムで消していきます。老人には中々骨が折れる作業のようなので、私が手伝おうとすると「ええんよ私がやるけん」と、自分ですべてやりたいらしく、夢中で消しています。
今度は描いたイラストを近くに置いたり遠くに置いたりしながら「ここを少し濃くしようかな、何かが足りんねー、ここに絵を足そうかなあ」とぶつぶつ言いながら、濃淡を変え、絵を描き加えていきます。
自分の中でOKが出ると、「これ、気になるんじゃけど、コピーしてみてくれんかなー、濃淡の加減を見てみたいんよ」と言う注文がきます。
私は「この人、恐ろし、このこだわりは91歳じゃ無いわい」と思いながらコピーに走ります。
ある時は「昨日は何でか寝むれんかったんよ、ほじゃけん朝5時からイラスト描きよんよ」と言いながら、描き上げた数枚のイラストを私に見せます。
「あれ、昨日よりもようなっとる、この人凄いわい」とまた私は心の中で呟きます。
そう感じるのが毎日なのです。母の描くイラストは日々昨日より良くなっているのです。「この人、恐ろしや、また進化しとらい、何処まで行くつもりなんじゃろか」と私は毎日のように心の中で呟きます。
ある日の母のイラストが出来るまでをご紹介します。
【ばあばのイラスト工程】
◻️下絵を描く
◇4Bの鉛筆で下絵を描きます。スピードはかなり速いです。
※見えづらくてごめんなさい。
◻️筆ペンで輪郭を描く
◇どんどん描きすすめます。
◇迷いはありません。
◻️薄墨で濃淡をつける
◇薄墨の濃淡で花に立体感を。
◻️下絵を消す
◇下絵が消えて、イラストがはっきりします。
◻️イラストの最終チェック
◇出来上がりを確かめる。
◻️イラスト完成
作品制作は毎日こんな感じで進みます。
母は敬愛する伊藤若冲や歌川広重の図録や、ヨーロッパの印象派の図録、新聞、雑誌のイラストをお手本に、そこに自分なりの感性を加えて、作品を描いています。
自分の中で納得したものでなければ出したくないし、より良いものを投稿したいのです。91歳のこだわり、恐ろしやです。
その日々の営みが楽しくて仕方がないらしく、まるで新しいおもちゃを手にして遊んでいる子どもようです。91歳のばあばの進化は留まることを知りません。
余りにもがむしゃらなので「お母さん、もっとゆっくりでええんよ」と言うと「明日、もしかしたら描けんなるかもしれんけんね」と言って筆を走らせています。
91歳でイラストに目覚めたばあばは本当に恐ろしやです。彼女はこれからどこに向かっていくんでしょうか。私は母を見ていて日々驚嘆しています。
母は今も、リビングでイラストを描いています。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《イラストを描くんは朝の挨拶みたいなもんよ》
リビングでイラストを描き終えてほっと一息のばあばと。
「朝起きたら毎日ずーと描きよんよ、まずは自分の顔をね、それから色々描きよんよ」
「こんなに毎日続くんはどうして・・・」
「もう、いつの間にか習慣になったんじゃねー、顔を洗うようなもんよ」
「自分の成長を感じる・・・」
「自分が思うんは、早よ描けだしたんよね、とにかく思たもんを描いてみるんよ、朝の挨拶みたいなもんよ、描かんと一日が始まらんのよー」
わずか9ヵ月ですが、毎日続けることの素晴らしさを母の進化から感じています。小さな一歩でも毎日の積み重ねが恐ろしい事になってきます。母から見習うことがいっぱいです。
【ばあばの俳句】
広重の鳥心揺さぶる夏の夢
母が敬愛する歌川広重のイラストをオマージュで描き、句を詠みました。独特の構図で鳥を描写している作品の迫力から何かを学びたかったんだと思います。
母は、広重をオマージュで描くことで様々な事を学んでいるそうです。母は夢であっても広重に出会いたいと願っています。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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また明日お会いしましょう。💗