【映画感想】「ありがたさ」と「もったいなさ」の折半|不思議の国のシドニ(SIDONE AU JAPON)
思うこと
今回は、先日観に行った↓
不思議の国のシドニから思ったことを記事にします。
主演はフランスの至宝イザベル・ユペール。もちろん、無知の私は知りません。
かろうじて、共演者の伊原剛志は存じ上げてますが…。
という、にわかものの映画感想でございます。
アナザーワールドを描くありがたさ
本作のチラシにもありますが、
とあります。
監督・脚本のエリーズ・ジラーヌからすると、日本の桜をはじめとする春の美しさ…というのは、作品のインスピレーションを掻き立てだんだろうと私は思います。
桜と同じようにシドニ(イザベル・ユペール)と溝口(伊原剛志)が
であるならば、桜が咲いている時の華やかさだけでなく、桜が散っていくけど季節は春めいている感覚も出した方が、作中で、より濃厚な6日を主人公・シドニが過ごせたかなと私は感じました。
ちょっと作品のテイストは変わってくるでしょうが、コブクロの桜の歌詞にもありますが、
の感覚…。
桜は咲いているんだけど、散っていくことで少し季節が進む感覚…
が不思議の国のシドニにあると、見方が大分変わってきたように私は思います。
もちろん、本作において、日本をリスペクトしている姿勢は感じました。
その姿勢が故に、春を感じる燃ゆる緑を京都、奈良、直島のそれぞれで違う緑をそれなりに映し出していたかなとも思います。
特に、シドニと溝口が谷崎潤一郎の墓を巡るところで、日本のシンプルさにシドニの心が動く前の苔がむす緑のカット。
一見すると地味ですが、墓標にある文字を端的に示す、ある意味、異国の地・ニッポンを表すカットかもと私は感じました。
実力があるだろう故のもったいなさ
その1
本作で、
の3人が中心になり、話は進んでいく…んですけど。
アントワーヌが最初に登場するシーンを観た時に何が起こったのか? 私にはよくわかりませんでした。
シドニが驚いてるんで、何かあったことは理解できたんですけどね。
話が進むにつれ、アントワーヌがイタズラ心を出してるんだなと(記事に起こしている時に)ようやくわかりました(苦笑)。
しかし、スクリーンで映像を観た時に、開かないホテルの窓が空いていたり、部屋にあった食事が食べられたりとの話が???いう感覚に襲われました。
その2
この作品では、
の視点ですから、日本語を話さないシドニの代わりに、溝口がストーリーテラーの役割になるのはわかります。
であるならば、幽霊がニッポンでどういう存在なのか? を溝口にもう少し語らせてもよかったかなと思いました。
シドニがフランスでの幽霊の存在はどんなものか? をもう少し語らせるシーンがあってもいい気もしました。
私はイザベル・ユペール、アウグスト・ディールという役者を初めて観ましたが、改めてググるまでもなく、高い演技力の方だなと感じました。
また、伊原剛志の役者としての魅力は私がコメントするまでもないでしょう。
これだけの実力がある役者さんだからこそ、日本を知らないシドニが、日本で幽霊を体験することの不思議さをもう少し深掘りできたんじゃないか? と勝手に妄想しています。
その3
本作ではタクシーでの移動のシーンが、シドニ、溝口、そしてアントワーヌの距離感がよくわかると思います。
ただ、背景があまりにもチープすぎでは?と思ってたら、パンフレットによると、
とされるタクシーの車内はスタジオ撮影、窓は日本の風景という合成。しかし、
…。
映像を観た後でパンフレットを見たので、私の偽らざる感情からすれば、
んなこと、知らんがな
ですね。
京都、奈良、直島の燃ゆる緑は映り込んでいるのに、タクシーの外の風景は、ひたすらにどピンクな桜、桜、桜。
そういうミスマッチがあると、どうしても粗探しをしたくなるんですよね。
その4
あと、アントワーヌがシドニと話をするシーン。
明らかに別撮りしてるのがモロバレすぎるのもどうかとは思いました。
公式パンフレットでも、シドニとアントワーヌは別撮りして合成しており、そんな中での自然な演技にユーモア…的な記述はあります。
しかし、私の偽らざる感情からすれば、
んなこと、知らんがな
ですね。
アントワーヌが幽霊で実体がないこと、そしてシドニの心の中にある過去への重しが軽くなると存在が"薄く"なる…のは演出としてアリかなと。
ただ、このキャストであれば、仮に同じ場所での撮影でも、同等レベルの演技にはなったと思います。
だからこそ、アントワーヌが雑に映り込んでいるように見えてしまうと、興醒めするな…という気分でした。
さはさりとて
なぜ作品を書いてきたか?をインタビューで語るシドニ。
現在の妻とは上手くいってないところを出しつつ、淡々とガイド兼ストーリーテラーを務める溝口。
岸の向こうに行きたいと、案に三途の川を連想させてくれるアントワーヌ。
ジャパニーズ・イングリッシュでおもてなしする機械的な日本人スタッフ。
そして、日本の風景。
フランス人が日本を描いてくれたことそのものには、敬意を表するべきものでしょうが、多分フランスから日本を見たらこんな感じかなと思う部分。
でも、なんかチグハグでミスマッチしている感じ。
今後、本作がどのように評価されていくのかはわかりません。
ジャポニズムの温度感を踏まえつつ、実力ある役者たちがスクリーンという枠の中で存在感を出しまくる、そんな作品かなと思いました。
ぜひ、劇場にてご覧いただければ。
(了)