ノコギリを「引く」、人力車を「引く」の違い、動作では無く対象物に付けられた「引く 」/ 「糸」に置き換えて考える
中学生の頃、先生が日本は「引く」文化で西洋は「押す」文化だと言っていた。今に成って分かるのは本で読んだと言うより、人から聞いた単なる雑学知識だったのだろうと思う。
何年前だろうか?甲野先生のTwitterだったと思う、「文化の違いでは無く鋸は引くのが正しい、人力車は引くと言うけど実際は押している。」と書いてあった。確か、、、
正確な文言は忘れたけど、こんな感じの事が書かれていた。その時は何と無く、「そーなのかー」程度にしか思って居なかった。
※甲野先生の弟子ではありません、講習会で3回程会った事が有るだけです(10年以上前)
夢を壊す様で悪いけど、現代の木工は業種にも依るけど手鋸を使う機会は殆ど無い。大工は定規も使わずに充電丸鋸を上手に使いこなす。本当に上手い。
「ほこvsたて」と言う番組で手鋸vs丸鋸で、大きい角材を薄切りする勝負では、巨大丸鋸側が薄さ速さ正確さで全て勝った。(どちらも手使いで、定規無しです。)
偶々見ていた弟(当時は大工)は丸鋸が勝つと思うと、予想を当てた。でも自分は結果に少しガッカリした事を覚えている。
組子職人なら手業技術は必須でも、基本的にはラジアルソーと言う高精度の機械でパーツ作りをしていると思う。勿論今でも型定規を使い、手作りしている人もいます。(この機械は会社にも有るけど本当に高精度)
自分は殆ど手鋸を使う機会が無いので、何となく言葉だけが頭に残っていた。
ある時、捨てるベニヤを手鋸でテキトーに切ってたら、「あっ!」と成って一気に全て分かった。
何が「あっ!」なのかと言うと。鋸を引いて切り、前に押し戻す時ベニヤに引っ掛かって、鋸がグニャと曲がり折れそうに成った。
以前書いた記事で「カミソリの様な切れ」の中で、刃物の刃先は必ず薄く、細くなければ成らないと書きました。
更に刃先のみが薄くても切り開いた幅より、刃以後の部分が厚ければそこで引っ掛かって、刃物は進めなく成ってしまうので全ての刃物は、刃先以外も原則的に薄くならざるを得ない。薄いと言う事は曲がったり、折れたりし易く成ります。
「糸」に置き換えると分かり易い
これを説明するのに何か良い喩えは無いだろかと考えました。こう言う時は極端にすれば分かり易いので思い付いたのが「糸」でした。
長い糸を床に置いて、押した場合を想像すると分かると思いますが、糸は曲がって真っ直ぐ進まない筈です、これは鉄で作られた鋸でも同じ事が起きます。逆に糸を引いた場合は、掴んだ反対側の先端は真っ直ぐなまま、付いてきます。だから曲がり易く長さの有る物は 引いて扱う方が合理的です。
金属の平ヤスリは厚みがあり、硬いので日本製でも押して使います、押す方が体重を掛け易い事が理由だと思います。
記憶違いが無ければ、甲野先生は理由を書かずに考えれば分かる事だと、書いていたと思います。たぶん、、、
確かにヒントだけ出して何故なんだろう?と思わせれば自分で考えるキッカケに成ります。その意に反して自分は答えを書きました。だけど閲覧数が少ないので残念ながら、悪影響は心配していません。
「引くは人の動きではなく、『対象物』に付けられた引く」
「人力車を引く」と一般的には表現されます、でも言われて見れば、車夫はどう見たって押してますよね。
押した方が力を入れ易い+「糸」に例えた時と同じで、引いた方がコントロールし易いからです。動作は「押す」で人力車は「引かれて」います。
鋸も人力車も手や人の動きを観て「引く」と名付けたのでは無く、「対象物」が引かれている事に付けられた「引く」だと思います。
「文化の違いにしたがる不快感」
誰かが「引く」と言う文字だけを見て、「引く文化」だと広めたせいで文化の違いだと言われています。西洋と日本は違うと言いたい気持ちが、先行した結果だと思います。(そう言いたい気持ちは分かりますけど)
更に、鋸の作りも建築も普通に考えるなら、中国、朝鮮が由来だと思います。(仏教も同じ)チラッと調べても「日本の」と付けたがる人達の多さは嫌に成ります。本当は「それその物、事」に関心も無いクセに。
由来は外国に有ったとしても、作り手は真面目に作り、自分達に合う様に作り変えて来ました。そこら辺を隠してしまえば過去の職人を否定する事に成ります。
一時の『自分の』気分の為に「伝統」「日本」と付ける態度の方が余程不快です。
追加「あとがき」
このあとがきは文章が完成して、暫く経ってから書きました。投稿する少し前に思い付いた事が有りました。
基本的に投稿記事は、漢字の使い方を調べる事は有っても、内容は調べずに書いてます。書く内に何か分かる事、出て来る事を期待しています。
もう一つは弟に説明する為だからです、情報の正確さより、考える過程のパターンを伝える事と、その過程こそが自分自身の為に成る事を、何度も経験してます。
「扱う木材の硬さの違い」
日本の家具、特に建具(ドアや引き戸)の木材は、西洋に比べ柔らかい木材を使用します。
ヤスリの説明に書きましたが、硬いものに対して体重を掛ける時は押した方が力を入れ易いです。
会社で硬めの木材に鉋を押して使った時に、そう言えば西洋はかなり硬い材料を使うな、木材の硬さと刃物を押すか引くかで、検索すれば出て来る筈、と思い調べました。
矢張り道具屋の方が、西洋で押して使う理由は硬い材料だからと書いてました。中国でも硬い材料を使い、日本では杉や桧など柔らかい材料を使う事が書かれてました。中国、朝鮮の鋸は押しと引き両方有ると書かれてました。
「野口整体の体癖分類を使って説明する」
もう1人の方のブログでは、どうしても日本は引く文化と言う事に固執して、かなり調べている様子でした。
引く文化に、自分は少しだけ思い当たる節があります、野口整体に「体癖」と言う、人を1〜10種類に分ける分類法が有るのですが、それを使うとそれっぽく説明出来ます。(❗️自分は整体会員では有りません、書籍やネット情報での趣味の範囲の独学です。)
❗️でも、この分類法が正しい事を自分は証明出来ません、興味を持った人は自分で調べて下さい。あくまでも、こんな考え方もあるのかな?程度に読んで下さい。
その上で簡単に説明をすると、9種の人は『引き締まる』速度が速くて得意と、説明されてます。
こだわりが強く、職人、忍者、能、茶道、引きこもり、漫画家、オタク(2と8と9が多い印象)等は9種的感性が強いです。(最初に書いた、甲野先生は2種と9種が強い)
引き締まる=引く動きが得意だから、引く動作の道具が多くなったのでは無いのか?と思ってます。でも、「日本は引く文化だ」に拘る人達の文章から感じるのは9種の感性では有りません。だから、本当は関心無いクセにと、上の方に書きました。
体癖論が正しかったとしても、そもそも使い手の観るレベルに問題が有るので、「そーなのかー」程度の参考にして下さい。
そう言えばサンタクロースの場合も、トナカイは押してソリは引かれていますね。異文化のクリスマスに相応しい?文章になりました。