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『侍タイムスリッパー』を観て【予期しない転機】を追体験する

ドラマ・映画好きなキャリアコンサルタント xyzです。

観てまいりました!今、一番熱い映画『侍タイムスリッパー』

お侍さんが令和にタイムスリップ!

時は幕末、京都某所、とある夜。
会津藩士・高坂新左衛門は、密命のターゲットである長州藩士・山形彦九郎と刃を交える最中に落雷により気絶し……目覚めるとそこは、京都の時代劇撮影所のセットの中。

ここはどこ?

21世紀にタイムスリップした高坂は、江戸幕府が140年前に滅亡したことを知り絶望します。

撮影所近くの寺の住職夫婦に助けられ、寺に住み込みさせてもらいながら、撮影所の殺陣師に弟子入り志願し、時代劇の【斬られ役】として生きていくことを決心します。

記憶喪失の侍コスプレイヤー?!
初めは勝手が分からず撮影の邪魔をしてばかり

ここで生きていくしかない。それには、腕に覚えありの剣術を活かしていく他、道はない。

高坂は師に謙虚に教えを乞い、愚直に真面目にひたむきに斬られ役を演じていきます。

背中を向けているのが殺陣師の師匠
斬られ役もサマになってきました

普段から佇まいが本物の武士のよう(そりゃそうだ!)、堂に入った斬られっぷりも話題になり、ドラマの仕事も順調に増え……江戸のお侍さんだった高坂も次第に令和の生活に適応していきます。

このような美味いものを……(フツーのショートケーキです)


やがて、斬られ役専門の大部屋俳優の高坂にあるビッグチャンスが舞い込んできます。
往年の元・時代劇スターで大物俳優の風見恭一郎が、復帰作の時代劇映画の相手役にと、高坂を指名してきたのです!

初めての大役への抜擢に戸惑い固辞する高坂。
「貴殿に是非引き受けていただきたい」と風見が直々に高坂を説得にあたります。衰退した時代劇を復興させたい、と熱く語る風見。しかし、なぜ風見はそこまで高坂を……?

ストーリー紹介はここまで。続きは是非、映画館でご覧いただきたい!!(ネタバレ回避)

映画の雰囲気が一変!

この映画、上映時間が2時間越え(131分)でして、インド映画かよ!とツッコミを入れかけましたが(インド映画は3時間近くの長尺もザラで途中休憩が入りますw)、この『侍タイムスリッパー』、まったく長さを感じさせないほど、ストーリーへの没入感がすごくて!

前半は、江戸から令和にタイムスリップしてしまったお侍さんの混乱と絶望からの再起までのコメディの要素が強く、途中ホロリとするような話も差し挟みつつほのぼのと進行していきますが、後半は空気がガラリと変わってシリアスに!本格時代劇の大立ち回り、息を呑むアクションの連続、特にラスト十数分間は、一気に緊張感が高まりクライマックスでは映画館もシンと水を打ったように静かに……!

(実は闘いものが苦手なわたし、前半の斬り合いのシーンと後半のクライマックスのシーン、怖くて直視できなかったビビリです← 素振りの時の樋鳴りの音ですらビビって一々びくりと体を震わせていた観客はわたしです)

滅びゆくものと守りたいもの

映画の中で描かれているテーマは、時代と共に滅びゆくものと、時代を超えても変わらないものがあります。

衰退していく(した)ものとしては、江戸幕府、時代劇ドラマ、映画産業、そして武士道精神。
では、変わらないものとは。時代を超えた人の営み、ものづくりへの情熱、平和を願う気持ち、でしょうか。

守りたいものは、市井の人々が衣食足りて、楽しみごとを楽しむ余裕があって、日本人が元来持ち合わせている、他人に対する礼儀、礼節をわきまえる気持ち。

なんとか衰退を食い止めたい、大切なものを守りたい、そんな気持ちをこの映画の作品づくりからもひしひしと感じます。

令和に生きる覚悟

タイムスリップした高坂がひょんなことから、江戸幕府がとうの昔に滅亡してしまったことを知り、薩長倒幕勢力への怒り、最後まで幕府を守れなかった自分、何もできなかった自分の不甲斐なさ、申し訳なさ、闘い敗れた同志たちの無念を嘆きます。なぜ自分はここにいるんだという思い。結果的に一人生き存えてしまったことへの悔恨の念。

絶望の末、なんとか江戸時代に戻ろうとして、タイムスリップした時と同じように雷に打たれようとして感電して失神したり……でも元に戻ることは叶わずpq
ここで生きていくしかないのだ、と腹を括る高坂。

予期していない転機

自分の意思とは無関係に環境が激変してしまったわけですが、これを【転機】と呼ぶにはあまりにも過酷すぎる運命……。シュロスバーグさんもビックリです!

皆大好き!キャリコン受験者のほとんどが試験準備ではお世話になった、原田先生「みん合」(みんなで合格☆キャリアコンサルタント)のHPから、キャリア理論家シュロスバーグのページをご紹介。

高坂に起こった出来事は、まさに【予期していなかった転機】です。

タイムスリップした高坂は、この予期していなかった転機のおかげで、命拾いしたわけです。武士としては忸怩たる思いでしょうが、大切な命、犬死にすることなく生き存えることができたのです。

高坂新左衛門さんを4Sモデルで分析!

幕府が滅亡したことは、会津藩士の高坂にとっては受け入れ難い現実だったに違いありません。しかし、飛ばされてきた時代で生きていくために、高坂はどうしたらいいのでしょう?

高坂さんの窮地、シュロスバーグ先生の4Sが役立ちそうです!

4Sとは……転機を乗り切るには、まず現状把握、そのためのリソース点検の4つの項目のことです。項目の頭文字が全て「S」から始まる言葉なので4Sと呼んでいます。

では、早速高坂さんのケースで見てみましょう。

SITUATION : 状況

✅もう江戸へは戻れない
✅身寄りはない、家もない、生活の基盤がない
✅令和のことは何もわからずカルチャーショックの連続

SELF: 自分自身

✅強みは剣術
✅真面目で謙虚な努力家
✅身についている武士道

SUPPORT: 支援、周囲の協力、励まし

✅撮影所の助監督ユウコに助けられる
ユウコはいつも高坂を見守り応援してくれている
✅寺の住職夫婦の世話になる→生活の基盤を確保
住み込みで世話になる代わりに、年老いた老夫婦のために家事手伝いをして労働力の提供
✅殺陣師の師匠に教えを乞い、演技を学ぶ→斬られ役として端役をもらえるようになる

STRATEGY: 戦略

✅剣術を武器に斬られ役として仕事を得る→その為には殺陣師の第一人者に弟子入りする必要あり
✅強みの剣術の腕が鈍らないようにする→自主練で日々研鑽
✅斬られ役の演技を洗練させる→自分なりの工夫や努力を怠らない

リソース(資源)を整理・点検し、転機を受け止めたうえで実際の行動に移します。その前にリソースに不足があれば、準備、補足なども考えていきます。
リスキリングも有効ですね!

転機を努力によって乗り越える過程で、キャリアが形成されていく、というのがシュロスバーグさんの主張ですが、高坂さんも高坂さんにしかできない、高坂さんオリジナルのキャリアを形作っていきます。

置かれた場所で咲く

令和に飛んできたという、理不尽ともいえる運命を受け入れ、新たな生き方を始めた高坂さん。
【置かれた場所で咲きなさい】というベストセラーの題名を思い出します。

この題名、英詩の一節なんだそうです。

Bloom where God has planted you.

神が植えられた場所で咲きなさい

Reinhold Niebuhrの詩より抜粋

神が植えられた=(神によって)置かれた、と訳されたのですね。上手い!

後に続く一節ではこう書かれています。

Rather than give up, make the best of your life and bloom like a flower.

諦めるのではなく、(たとえ不利な状況でも)精一杯人生で最善を尽くして、花のように咲くのです。

To bloom is to live happily.

咲くこととは、幸せに生きることです。

(後略)

Reinhold Niebuhrの詩より抜粋

諦めるのではなく、最善を尽くす。
絶望からここまでに気持ちを引き上げるのは容易なことではないと思います。
もっとも高坂さんには生きていくのに悩んでいる暇はなかったのかもしれませんが……。

いのちの使い方

【時間の使い方は、そのままいのちの使い方】とシスター鈴木和子さんも本に書いていらっしゃいましたが、人生という有限の時間をどう使うか、何に使うかが大切なのですよね。

時代遅れになった武士道と、往年の人気が廃れてしまった時代劇と、斜陽産業となってしまった映画産業。
かつての武士道、映画を懐かしみ、なんとか復興、後世へ残していきたい!

高坂さんや周りの人々の熱い思いが、奇跡を起こします。

高坂さんにとっては、幕末、討幕運動の果てに命を落とすよりも、140年後の平穏な世の中を、日本の姿を見届けることができて(佐幕派としては複雑な胸中ではありましょうが)よかったのかも。庶民の幸せを知り涙する高坂さんの姿を見て、神様が高坂さんを幕末では死なせずに令和の時代という庭に置かれたのだな……とすら感じました。

まだまだ書きたいことはたくさんある『侍タイムスリッパー』

単館上映から始まって今や全国100館以上で追加上映され、ロングランの予感……🎞️(『カメラを止めるな』の再来と言われていますね!)
この映画自体も、監督や製作陣、出演者、そして観客の熱い思いが起こした奇跡のムーブ!

機会があれば、ぜひご覧になってみてください。
「今日がその日!」
思い立ったらぜひ劇場へ!おすすめです!!
(ラストはくすっと笑える、本当によくできた作品です)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。