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音楽好きの、楽しい青春ラプソディ。佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』

プロローグの京都弁から、思わず引き込まれます。歯切れの文章のリズム。わくわくするような、エピソードがたくさん。私は音楽に全然詳しくないし、佐渡裕さんの指揮も聴いたことはないけど、きっと、この文章のように楽しい演奏会なんじゃないかと思えます。

音楽好きの悪ガキだった佐渡さんが音楽大学の学生なり、大人になって幸運をつかみ、小澤征爾やバーンスタインと出会います。そして、大好きなオーケストラの指揮棒をふれるようになる。階段を駆け上がる過程は決して楽ではなかったろうし、本に書かれていない辛いエピソードもたくさんあっただろけど、最終的に音楽の神様の微笑みを掴むことができた、素敵な青春ラプソディ。 

佐渡さんの名前は、以前読んだ『絶対音感』(最相葉月)という本にちらっと出てきました。その本のイメージは、外国で活躍するピリピリした新進の指揮者って感じでした。でも、佐渡さん本人の文章は、同じエピソードなのに全く別の色合いで語っていておもしろかったです。引用の仕方で、かなり印象が変わりますね。

音楽鑑賞のおまけには、「もし演奏を退屈に感じたら?」なんて項目までありました。佐渡さんの小学生の頃の音楽会の日記とか、ファンの演奏家への差し入れエピソードとか、いろいろごった煮でとにかく楽しい。ピアニストさんの本を読んだことがあるけれど、それとは全然違う視点で音楽の話を楽しめて、新鮮でした。

ものすごく緊張する仕事が終わった時に、本屋さんで偶然手にした本。フェリーの上でコーヒーを飲みながらの読書は、散歩の途中で、思いがけなく楽しい野外演奏会に出会えたように心地よかったです。たまに繰り返して読むたびに元気になれる本です。お勧め。

追伸:その後、読み返してみたら『のだめカンタービレ』のフランス編のかなりのネタになっているのに気がつきました。そして、子供を持った後は、著者の子供の頃のご両親の育て方なんかも、参考にさせてもらっています。

追伸2:親戚のおばさまの貸したら、以後、親戚で回っているようで、未だにかえっていません。うーん、また買う必要あり?(泣)


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