夕遊

信州生まれ。現在、大阪暮らし。仕事は書くこと、教えること。著書は『誰も知らない『西遊記』―玄奘三蔵の遺骨をめぐる東アジア戦後史』(龍渓書舎)ほか。https://amzn.to/478Widn いつも、旅したい場所、読みたい本やマンガ、見たい映画をさがしています。

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信州生まれ。現在、大阪暮らし。仕事は書くこと、教えること。著書は『誰も知らない『西遊記』―玄奘三蔵の遺骨をめぐる東アジア戦後史』(龍渓書舎)ほか。https://amzn.to/478Widn いつも、旅したい場所、読みたい本やマンガ、見たい映画をさがしています。

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    ひと仕事終わって、おいしい珈琲や紅茶を片手に読みたい本。仕事で読む本。とにかく、たくさん読みたい、楽しみたい私の本棚をご紹介します。

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    中国大陸とその周辺に関連する本や映画の話題を集めてみました。

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    大好きな漫画その他をここにまとめておきます。本当は、ここに書ききれないくらい好きな作品がたくさんあるのですが...

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    映画のドキュメンタリーや書籍のノンフィクションが大好き。実話ベースともまた違う、おもしろさがあります。おすすめです。

最近の記事

テクノロジーと人間味のSF的疾走感。『マン・カインド』藤井太洋

久しぶりに一気読みした小説。さすがの藤井太洋作品です。おもしろすぎて、とまりませんでした。 物語の舞台は、2045年。世界は大きく変わっていて、紛争とか戦争は、2030年代のドローンみたいな無人機械の殺戮の応酬への反省から、戦闘に投入する部隊の数を制限して、その位置も公開し、使用する武器も制限があったり、申告制だったり、時間制限があったりとかで、最初から勝利条件……つまり「落とし所」を設定しておく「公正戦」に変化した世界。 とはいえ、この場合の「公正」はタテマエで、闘う前

    • 『海底に眠るモンゴル来襲』水中考古学の世界(文永の役750年特別展1)

      今回の東京行きは、国学院大学博物館もお目当ての1つ。今年は元寇の文永の役から750年。台風で沈んだモンゴルや朝鮮の船の発掘は、水中考古学というそうで、その成果が展示されているのを見てきました。無料です。 余談ですが、国学院大学の博物館は、考古学の展示がすごくて、常設展だけでもくらくらするくらい、教科書でみた埴輪とか土器がどどーんと展示されていて、ものによってはガラスもない場所に展示されているので、超至近距離で見れます(触るのは不可!)本当にすごい。 が、今回は体力持たない

      • 『三日月よ、怪物と踊れ』黒博物館シリーズ原画展(旧尾崎テオドラ邸)藤田和日郎

        藤田和日郎さんの黒博物館シリーズは、熱烈な固定ファンのいる名作。最初に『ゴーストアンドレディ』を読んだときの感動は忘れられませんし、ちょっとめげそうになったときには、いつも読み返してパワーチャージをしています。 そんなわけで、最新作の『三日月よ、怪物と踊れ』も期待しかなくて、だけど毎回、単行本の発売を待つのも辛いので、がまんして連載の完結を待って、一気読みしました。ああ、至福の時間。イギリスのヴィクトリア朝時代の物語を堪能しました。 今回、黒博物館のキュレーターさんがお迎

        • モダン都市東京と台湾の近現代を撮った写真家の物語。『南光』朱和之(中村加代子訳)

          この小説は、台湾が日本の植民地だった時代から始まります。主人公は、裕福な客家の家に生まれた鄧騰煇(とうとうき)。彼の父は、自分が学問ができなかった悔しさから、4人の息子を東京に留学させます。兄は上智大学を卒業しますが26才で亡くなり、次兄が東京美術学校を卒業して、実家を継ぎます。 主人公の鄧騰煇は、気楽な三男なので日本であまり勉強せず、カメラにはまって法政大学の写真部で、東京周辺のいろんな風景やモダンガールを撮影して歩きます。彼のお気に入りは、当時1台が家1軒と同じ値段だっ

        • テクノロジーと人間味のSF的疾走感。『マン・カインド』藤井太洋

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          高校の部活が考古学を支えた時代。『部活で発掘!部活で考古!』大阪大谷大学博物館

          大阪南部は奈良に近くて、いわゆる「仁徳天皇陵」を含む百舌鳥・古市古墳群が世界遺産にも登録されました。これらの遺跡は、高度経済成長の時代に(1960~70年代)なんとか残ってきたもの。それは、当時の地域の高校地歴部や考古学部、歴史部なんかの高校生と先生たちががんばった歴史の一部でもあったとか。 知り合いに誘ってもらったので、大阪大谷大学博物館で開催中の特別展を見に行ってきました。京都の大谷大学は何度か行ったことがありますが、大阪大谷大学は初めてです。 大阪の日本史の人からよ

          高校の部活が考古学を支えた時代。『部活で発掘!部活で考古!』大阪大谷大学博物館

          中国社会の暗部に挑む男たち。『検察官の遺言(長夜難明)』紫金陳(大久保洋子訳)

          中国ドラマの名作『ロング・ナイト』(沈黙的真相)の原作。私は先にドラマを見ているので、ドラマとどう違うかを確認しつつ読むのが目的です。 同じくドラマ化された名作『バッドキッズ』(原作『悪童たち』)はかなり改編されていたので、今回も期待してページをめくりました。以下、ネタバレたくさんなので、ネタバレしても大丈夫な人だけお読みください。 結論からいうと、ドラマで「?」な感想を持った部分は、ほぼドラマオリジナルでした。原作はすごくシンプルで、中国社会独特の理不尽さに反逆する学生

          中国社会の暗部に挑む男たち。『検察官の遺言(長夜難明)』紫金陳(大久保洋子訳)

          笑って、泣いて、勇気を補充。映画『花嫁はどこへ?』インド、2024年。

          友だちみんなにおすすめしたい映画。派手さはないのに、ハラハラして、やさしさにホッコリして、戦う勇気が湧いてくる。さすが、「インドの宝アーミル・カーン」。彼が関わっている映画に、ハズレはありません。 舞台は20年ほど前のインド。スマホがなく、ガラケー。wifiがなく、ネットカフェの時代です。インドのしきたりでは、花嫁の家で結婚式をあげた新郎新婦は、花婿の家に2人で向かいます。 田舎では、親が決めた結婚相手と結婚するし、当日まで花婿と会ったこともないのが当たり前。女性の識字率

          笑って、泣いて、勇気を補充。映画『花嫁はどこへ?』インド、2024年。

          楽しい薬膳ティータイム。『基礎薬膳』堺・利晶の杜

          タマノイ酢さんがときどき開いてくださる薬膳講座。場所は、堺の利晶の杜。ここは、千利休と与謝野晶子関連の施設で、座敷のお茶室が会場です。落ち着く和室で、薬膳のことを紹介してもらって、自分好みの薬膳茶をつくるイベント。参加しない手はありません。 講座のスタートは、「薬膳」とは何か。日本人には身近な薬膳が、中国由来の考え方でできていて、季節毎に旬の食材が身体にいいことを、わかりやすく説明してくれます。身体を冷やす食材、温める食材。自分にあわせて、試せるのがいいですね。 そして、

          楽しい薬膳ティータイム。『基礎薬膳』堺・利晶の杜

          パターンがわかると楽しくなる。『英語の思考法』井上逸兵

          日本語も英語も、コミュニケーションには独特のお約束があります。井上先生によれば、ざっくり「個」、「つながり」、「対等」の3つに分けることができるとか。それを、みんながよく知るジブリの映画の英語翻訳なんかを使って、わかりやすく説明してくれます。サブタイトルの通り、話すためのレッスン。会話なので、例文も基本1行なのがうれしい。 「個」というのは、相手の意思を尊重して、そこには踏み込まない会話のこと。例えば、映画『千と千尋の神隠し』の中で、主人公の千尋が「私、釜爺のとこいかなきゃ

          パターンがわかると楽しくなる。『英語の思考法』井上逸兵

          ココロとカラダのあいだを行き来する。『自分疲れ』頭木弘樹

          以前なら、ちょっと無理しても大丈夫だったのに、今は休みながらでないと仕事が続かない。うっかりすると、すぐ身体のどこかを痛めてしまう。天気が悪いと辛いときがある。怪我したわけでもないのに、指が動かなくなる……ヨガやピラティスに一年以上通ううち、ようやく「そういう年齢になったんだ」と理解できました。遅すぎです。 この本は、何となくしんどいときにも、さらっと読めます。片手サイズで軽くて、ページはめくりやすい程よい厚さと手触り。文字のフォントも行間もいい感じで、文章は個包装だから、

          ココロとカラダのあいだを行き来する。『自分疲れ』頭木弘樹

          何気ない日常が愛おしい。映画『本日公休』台湾、2023年。

          舞台は台中の下町。昔ながらの理髪店を40年続ける主人公のアー・ルイ。長年のお得意さんに電話をかけて、予約をとって、生活しています。息子や娘たちは、それぞれ独立して母親の店兼理髪店にはあまり寄り付きませんが、娘の元夫は、孫を連れてちょくちょく散髪に来て顔を見せてくれます。 ノスタルジーを感じるのに、すごくリアルにも感じるのは、ロケが傅天余監督のお母さんのお店だから。実際、監督はお母さんをモデルにこの映画を撮影したのだとか。ご近所さんたちとのおつきあい(兼商売)とか、親子二代(

          何気ない日常が愛おしい。映画『本日公休』台湾、2023年。

          努力と仲間とダンスへの情熱と。映画『熱烈』中国、2023年

          元気がでる映画シリーズ第2弾。ダンス(ブレイキン)は全然知りませんが、見ているだけで熱くなれるのがいいところです。主演の王一博(ワン・イーボー)はローティーンの頃からダンスがすごい人なので、彼のダンスの凄さがメインだろうなと思って見に行ったら、見事にいい意味で裏切られました。 お金持ちの息子で、チームのスポンサーでもあったケビンに逃げられた杭州のダンスチーム「感嘆符!」。昔、チームのコーチは昔、メンバー募集のとき、ケビンと比べて落とした陳爍(チェン・シュオ)に代役をしてくれ

          努力と仲間とダンスへの情熱と。映画『熱烈』中国、2023年

          イギリス少女たちの武闘派コメディ。映画『ポライト・ソサエティ』イギリス、2023年

          えーっと、今まで見た映画で一番キャッチコピーに悩みました。イギリス映画なんですけど、主役はパキスタン系の姉妹。家族はイギリスのパキスタン系の社会で生活してるんですけど、主人公のリアはイギリスの地元の女子校に通ってて、いろんな友だちがいるし、空手(カンフー?)教室にも通ってる。そして、夢は映画のアクションスタント。 イギリスに住むアジア系の女の子が主人公の映画といえば、なんといっても『ベッカムに恋して』(原題:Bend It Like Beckham)。サッカーが好きなインド

          イギリス少女たちの武闘派コメディ。映画『ポライト・ソサエティ』イギリス、2023年

          映画『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映に行ってきました。

          7月下旬から約1ヶ月、ひたすら仕事先と自宅にこもって忙しかったので、お盆頃にはとうとう限界。なにもアウトプットできなくなりました。というわけで、友達を誘ってエネルギー補給。また映画館で見れてうれしいです。 スポーツとかアニメに全く疎い友達を誘ってのデートでしたが、見終わった後、「すごくいい映画だった!」って言ってくれたのでよかった。せっかくなので、原作も超絶プッシュして、感想を聞かせてくれるよう約束しました。今から聞くのが楽しみです。 とかいう私も、実は原作を読んだことな

          映画『THE FIRST SLAM DUNK』復活上映に行ってきました。

          中国の建物と街並み詳説絵巻『建築知識』2024年7月号

          発売前から評判だった専門雑誌を予約購入。中国ドラマや映画をみるときや小説読むときの参考になればと思ったのですが、ファンシーな表紙のイラストの真逆をいく、「新石器・古代王朝から清朝まで」のすさまじく楽しい特集内容に歓喜しています。 建築については全然わからないので、すみません、内容のすばらしさを表現する語彙力ありません。とにかく開くページ、開くページの素敵な建築のイラストと詳細すぎる説明に見応え、読み応えあってうれしい。それぐらいしか言えないのがつらい。 紀元前5千年頃の集

          中国の建物と街並み詳説絵巻『建築知識』2024年7月号

          今年必読の1冊。『台湾のデモクラシー メディア、選挙、アメリカ』渡辺将人

          今年は台湾の選挙イヤー。そのおかげか、昨年、一昨年と台湾関連の良書がたくさん出版されて、うれしい悲鳴の日々。読むのが追いつかなくて仕事を放棄したくなるくらい。でも、まさかそんな大豊作の中で、予想もしないような読み応えある本が出てくるとは。学問の可能性は、どこまでも果てしない。うれしい。 これまで日本で出版されてきた、どんな台湾の歴史の本とも、全く違う渡辺先生の本。アメリカで政治活動を実際にやったことがある、渡辺先生ならではの視点から台湾のデモクラシーについて書かれています。

          今年必読の1冊。『台湾のデモクラシー メディア、選挙、アメリカ』渡辺将人