モダン都市東京と台湾の近現代を撮った写真家の物語。『南光』朱和之(中村加代子訳)
この小説は、台湾が日本の植民地だった時代から始まります。主人公は、裕福な客家の家に生まれた鄧騰煇(とうとうき)。彼の父は、自分が学問ができなかった悔しさから、4人の息子を東京に留学させます。兄は上智大学を卒業しますが26才で亡くなり、次兄が東京美術学校を卒業して、実家を継ぎます。
主人公の鄧騰煇は、気楽な三男なので日本であまり勉強せず、カメラにはまって法政大学の写真部で、東京周辺のいろんな風景やモダンガールを撮影して歩きます。彼のお気に入りは、当時1台が家1軒と同じ値段だっ