岸和田藩の元藩主のお話。『評伝 岡部長職』小川原正道
サブタイトルは、「明治を生きた最後の藩主」。岸和田藩の最後の藩主になった岡部長職(ながもと)の評伝です。彼は、幼少で父を亡くし、おじが暫定的に家督を継いだことで、いとことの跡目争いに巻き込まれます。まるで時代劇のような、本当にあった展開です。
長職の母は、息子の毒殺を恐れて自炊して彼を守っただけでなく、優秀さでもいとこに引けをとらないよう必死に教育しました。母のおかげと、長職自身の優秀さと、そしてなにより、彼が若かったこともあって、幕末から明治の新しい時代を乗り越えることができました。
福沢諭吉は、旧藩主たちは新しい時代に一応華族身分になれましたが、最初は豊かな生活ができても、もともと活気も才能もないので、そのうち平民に負けるだろうと見ていました。実際、多くの華族たちがそうなりましたが、岡部長職はわずかな例外になれたようです。
岡部はその後、アメリカやイギリスへ留学しますが、留学前から新しい学問を身に着けようと努力しました。そのおかげもあって、留学から帰ると外交官として新しい時代に活躍することができました。その後は、外交官から政治家になることもできました。
とはいえ、岡部は育ちが育ちなので、新しい時代でも「お殿様」気質は抜けなかったそうです。でも、お育ちの良さや人柄の良さがいい方向に向いたし、自分ではキリスト教を受け入れて、クリスチャンになったり、いろんなエピソードを持つおもしろい人だったようです。そうそう、息子の岡部長景も優秀で、やはり外交官になっています。
岡部長職と彼をとりまく幕末の岸和田の様子は、とっても興味深いです。彼の恩師で、儒学者の土屋弘が若い頃、西欧を見たくて上海に渡ろうとしたけれど、下関戦争が始まってしまって出国できなかった話なんかは、時代の転換を感じさせるエピソードでわくわくします。
岸和田といえば、だんじり祭り。そして、NHK連ドラの『カーネーション』で有名になったコシノ姉妹とお母さんの町。また、岸和田城跡にも行ってみたいし、なによりだんじり祭りを見たいです。