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社会も言葉も変化する。『敬語はこわくない』井上史雄


タイトルは敬語の実用書みたいだけれど、井上先生の本は、普通の読み物としても充分おもしろいから好きです。専門知識をわかりやすく、しかも興味深い井上先生の語りには、ついつい引き込まれてしまいます。

敬語は難しいのではなく、便利なもの。これは、社会人になるとわかります。見ず知らずの相手と、適度な距離をとって、当たり障りのないコミュニケーションをとるのに敬語は最適です。それだけでなく、上手く使えば、自分の好感度をあげることができる重要な武器です。

よく、「日本語の乱れ」とかいいますが、敬語が変化していくのは日本語に限らず、どの言語でも見られることだそうで、実際、変化の仕方もよく似ているのだとか。世の中が民主化していくと、以前は敬語の対象にならなかったものにまで、敬語や丁寧語を使うようになるらしく、これは世界的な傾向なのだそうです。

日本語独特の謙譲語や尊敬語が、時代とともに混同・誤用されていく中で、変化している方向は、「丁寧語化」といえそうなものだとか。

言葉は時代につれて変化していきます。また、全国的に変化するのではなく、一地域から誤用が広がって全国的になることの方が多いそうです。

ではなぜそうなるのか? 井上先生は、文化庁の調査や、過去のデータに基づいて説明くれるので説得力があります。最近では、ツイッターで活躍してくださっている飯間浩明先生などのおかげで、単なる印象論や身の回りの出来事から、いきなり「敬語の乱れ」とか言い出す人が減ってうれしいです。

言葉の変化は、世の中の変化のあらわれなので、それをうまい具合に切り取って説明してくださる専門家がいると、本当に楽しいし、助かります。おすすめ。


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