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夕遊の本棚

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ひと仕事終わって、おいしい珈琲や紅茶を片手に読みたい本。仕事で読む本。とにかく、たくさん読みたい、楽しみたい私の本棚をご紹介します。
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#翻訳小説

心躍る歴史冒険サスペンス。『両京十五日』馬伯庸(齊藤正高、泊功訳)

物語の舞台は中国、明の時代。日本でいうと室町時代ごろ。主人公は有名な永楽帝の孫で、皇太子…

夕遊
3日前
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モダン都市東京と台湾の近現代を撮った写真家の物語。『南光』朱和之(中村加代子訳)

この小説は、台湾が日本の植民地だった時代から始まります。主人公は、裕福な客家の家に生まれ…

夕遊
1か月前
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中国社会の暗部に挑む男たち。『検察官の遺言(長夜難明)』紫金陳(大久保洋子訳)

中国ドラマの名作『ロング・ナイト』(沈黙的真相)の原作。私は先にドラマを見ているので、ド…

夕遊
1か月前
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スリリングでミステリーでおいしい小説は反則『炒飯狙撃手』張國立(玉田誠訳)

狙撃手(スナイパー)のイメージといえば、孤高。人付き合い苦手。無駄なことしない。無口。ス…

夕遊
5か月前
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ノスタルジー上海。『長恨歌』王安憶(飯塚容訳)

予備知識ゼロで手に取った、王安憶の長編『長恨歌』。白居易の『長恨歌』と同じ名前の現代小説…

夕遊
9か月前
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『踊る大捜査線』エッセンスも楽しめる密室殺人ミステリー『厳冬之棺』孫沁文(阿井幸…

最初のページからひきこまれる、一気読み必至の良質なエンタメです。文章のテンポがよくて、構…

夕遊
10か月前
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予想を超えた、破壊力あるメッセージ。映画『窓ぎわのトットちゃん』

今の中国の書店には、日本文学の翻訳がたくさんあります。村上春樹さんを筆頭に東野圭吾さん、宮部みゆきさんから松本清張さんなど日本でも有名な作家さんたちの本から、私が知らない作家さんの本まで幅広くあって、外国文学コーナーで一番大きなスペースをとっています。 中国で日本語の本が紹介されるようになった、最初の頃からあるのが黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』。いわさきちひろさんのかわいいイラストは、中国の本屋のどこに行ってもあった気がします。調べてみたら、最初に中国のベストセラー

中華ファンタジー・ロボットSF『鋼鉄紅女』シーラン・ジェイ・ジャオ(中原尚哉訳)

中国の歴史に多少知識がある人なら、武則天と、李世民と、朱元璋と、諸葛亮と司馬懿に安禄山ま…

夕遊
1年前
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いい批評はいい紹介。『文学は予言する』鴻巣友季子

読み応えある鴻巣友季子さんの本。たくさんの海外の小説を読んで、翻訳されてきた方なので、話…

夕遊
1年前
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つながる想い。『天官賜福』5巻、墨香銅臭

『天官賜福』台湾版(平心出版)の5巻は、第91章から113章まで。先が気になりすぎて、久しぶ…

夕遊
1年前
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おもしろすぎてとまらない。『辮髪のシャーロック・ホームズ』トレヴァー・モリス(船…

発売前から評判が良くて、すごく気になっていた推理小説をようやく読むことができました。少し…

夕遊
2年前
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雄大な草原とそこに住んでいた人々と狼たちの最後。『神なるオオカミ』姜戎

10年くらい前、毎年夏の中国内モンゴルに出張してました。その時に仲良くなったモンゴル族の…

夕遊
2年前
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島の書店が紡ぐあたたかな物語。『書店主フィクリーのものがたり』ガブリエル・ゼヴィ…

アリス島にたった一つの書店アイランドブックス。夏の観光客を相手に本を売るお店。店主は偏屈…

夕遊
2年前
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映画のような物語。『碁を打つ女』シャンサ

舞台は、1937年の「満州」。中国東北部の厳しい寒さの中で、広場に集まって男たちが碁を打つなかに、一人だけいる若い娘。彼女は、学校や両親との息づまる日々から逃れるために、碁を打っていました。そんなある日、彼女は、抗日連軍の暴動に巻きこまれ、助けてくれた青年二人と親密な関係になっていきます。彼女が主人公の一人です。 もう一人の主人公は、日本人士官。彼は東北の街にやってきて、昼間は抗日分子の調査をし、夜は女遊びの毎日を送っています。関東大震災以降、彼は死に魅入られていて、抗日分