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夕遊の紀実文学・記録片

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映画のドキュメンタリーや書籍のノンフィクションが大好き。実話ベースともまた違う、おもしろさがあります。おすすめです。
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#読書感想文

モダン都市東京と台湾の近現代を撮った写真家の物語。『南光』朱和之(中村加代子訳)

この小説は、台湾が日本の植民地だった時代から始まります。主人公は、裕福な客家の家に生まれ…

夕遊
4か月前
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中国の恐竜事情がおもしろい。『恐竜大陸中国』安田峰俊(田中康平監修)

子どもにとって、恐竜の話題はいつだって人気コンテンツ。夏休み限定だった番組が、先生たちの…

夕遊
8か月前
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『東洋の至宝を世界に売った美術商ーハウス・オブ・ヤマナカ』朽木ゆり子

京都の泉屋博古館にいくと、とんでもなく古い青銅器がたくさんあって、しかもそのうちのいくつ…

夕遊
11か月前
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ダサいけど無視できない。『戦狼中国の対日工作』安田峰俊

今から50年ほど前、当時国交のなかった中国と交渉するために訪中した田中角栄は、ホテルの部…

夕遊
1年前
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草原の魅力が満載。『まんぷくモンゴル! 公邸料理人、大草原で肉を食う』鈴木裕子

保育園の調理室勤務だった鈴木さん。保育園の仕事を18年間続けながら勉強し、日本、西洋、中…

夕遊
1年前
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心のよりどころを求める人たちの暮らし。『信仰の現代中国』イアン・ジョンソン

最初、この本は著者のイアン・ジョンソンが、外国人の目で見た不思議な、理解しにくい中国を書…

夕遊
1年前
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日本生まれの台湾人で、北京放送のアナウンサー。『陳真』野田正彰

私が初めて、NHK中国語講座をみたときに、穏やかな笑顔で発音を担当されていた陳真さん。てっきり、生まれも育ちも北京の方だとばかり思っていました。まさか、台湾人のご両親がいて、日本の東京生まれだったなんて、驚きです。 戦前は、台湾が日本の植民地だったので、台湾人も「日本人」だったはず。でも、子供の頃は「中国人!」といじめられ、学校でも先生に殴られたといいます。谷川俊太郎さんや、日本の教養ある人たちとの交流があったようで、子供の頃の谷川さんと陳さんの写真は、独特の優雅な雰囲気を

糸を引くおもしろさ。『幻のアフリカ納豆を追え!』高野秀行

定期的に読みたくなる高野さんの本。今回のテーマは、納豆。この本より先に『謎のアジア納豆』…

夕遊
4年前
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もうひとつの中国とオリンピック『北緯43度の雪 』河野啓

1971年、中華人民共和国(中国)の国連加盟に反対して、国連から脱退した中華民国(台湾)…

夕遊
4年前
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夏が近づくと思い出す。『スローカーブをもう一球』山際淳司

ものすごく有名なスポーツ・ノンフィクション。大昔、野球を見るのが好きだったときに読んだの…

夕遊
3年前
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有名な作家さんとその家族の物語。『星新一 1001話をつくった人』最相葉月

星新一『明治の人物誌』がおもしろかったので、評判の本書も読んでみました。そして、期待通り…

夕遊
3年前
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よりよい未来を求める中国の女性たち。『現代中国女工哀史』レスリー・T・チャン

通勤電車で読みましたが、結構時間がかかりました。なんせ、400ページ以上というボリュームだ…

夕遊
3年前
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ニンゲンの根源的欲求からみる隣国。『性と欲望の中国』安田峰俊

安田峰俊さんはBlog時代からのファン。書かれた本はだいたい読んでいます。その中でも、他の中…

夕遊
3年前
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あるカンボジア人の人生。『淡淡有情』平野久美子

この本は、平野久美子さんが、第6回「小学館ノンフィクション大賞」を受賞した作品です。平野さんは、名著『食べ物が語る香港史』もそうですが、じんわりと積もるような語りがステキです。 主人公は、戦前の日本でエリート教育を受けたカンボジア人ウォンサニット。彼は曾祖父が中国系で、もとの名前はコン・ルーム。フランス統治下では、いくら頭がよくても、農民は高等教育を受けられませんでした。 日本が対英米戦争に突入し、南進してくると、彼の住む村はタイ領になり、タイ風のウォンサニットに名を改め