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歳時記と落語

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旧暦と二十四節気に基づいて、落語を紹介しています。2020年4月から語り直していきたいと思います。三代目桂米朝の『米朝ばなし』(講談社文庫)をイメージして、米朝師匠風の語り口調で…
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#季節

【歳時記と落語】上巳

旧暦の3月3日は「上巳」です。今の暦に切り替わるまでは、大体この「上巳」の日に「桃の節句」、つまり「雛祭り」をしてたんです。「上巳」が3日からずれる場合も、「雛祭り」は3日です。 2021年は4月14日が上巳です。 古くから、この「上巳」は川に入り禊をすると風習がありました。これが人形に穢れを移して流すという風に変わり、「流し雛」になりました。「流し雛」は『源氏物語』にも登場しております。これがやがて形を変えて、江戸時代には今の「雛祭り」の形になりました。 また、禊の際

【歳時記と落語】春分

「春分」は、大体3月20ごろです。この、春分を中日とする一週間がお彼岸ですな。 お彼岸というと、「ぼたもち」がつきもんですな。漢字で書くと「牡丹餅」です。「おはぎ」という言い方もありますが、あれは漢字で書くと「御萩」となります。 大体「ぼたもち」はこしあん、「おはぎ」は粒あんを使って作りますが、まあ大体同じもんです。「牡丹」は春の花で、「萩」は秋の花ですな。季節によって呼び名がかわるんです。夏は「夜船」、冬は「北窓」と言います。 また、米粒が残らない餅状のもんは「皆殺し」

【歳時記と落語】春場所

大阪で春の訪れを知らせるもんといいますと、今は三月半ばの大相撲春場所も一つの風物として馴染み深いもんになってますな。 今年は残念ながら、コロナ禍で両国開催となりました。 相撲は今は一場所15日間で六場所、年間90日の本場所ですが、昔は「一年を二十日で暮らすよい男」てなことをいいました。 大坂相撲、江戸相撲、昔は別々やったんですが、どっちも一場所十日で春と秋の二場所やったそうです。もちろん、今も合間に巡業がありますように、昔は「花相撲」と言いましたが、地方興行はありました

【歳時記と落語】初天神

大阪の人間というのは、なんや神さんのことを友達みたいに言います。「えべっさん」やとか「だいぶっつぁん」やとかね。菅原道真公も「天神さん」と親しみを込めて呼んでます。 この天神さんの祭礼は、毎月25日におこなわれます。今は当然新暦でやってますが、昔はもちろん旧暦の二十五日でした。なんでも天神さんこと、菅原道真さんはお生まれになったのが6月25日、太宰府に流されなさったのが1月25日、お亡くなりになったのんが2ン月の25日やそうで、25日づくしということでこの日に祭礼を行なうよ

【歳時記と落語】大雪

12月に入りました。2020年12月7日は「大雪(たいせつ)」、雪がいよいよ降り重なるという時期で、鰤など冬を代表する魚も旬を迎えます。 大雪というと、日本で一番の積雪を記録したのがどこか知ってはりますか。 北海道? いえ、北海道は寒さは厳しいんですが、積雪は思ったほどやないんです。 新潟? 確かに毎年の積雪は大変なもんです。 富山? 立山の雪壁の中をバスが走る光景は有名ですな。 一般的に、日本海側の北陸・東北地方は豪雪地帯でっさかいね。このあたりやと思うのが当然ですわ

【歳時記と落語】李小龍の誕生日

今週は節気としては、特にないんで、まあ趣味に走ってお話をしたいと思います。 11月27日は、ブルース・リーこと李小龍の誕生日です。亡くなったのは1973年7月20日、もうちょって50年以上になるんですな。2013年が没後40年でしたんで、香港文化博物館ではそれを記念して、2013年から2018年まで5年間特別展を開催しておりましたが、その後延期延期で今も開催中です。しかも2020年12月31日で一旦クローズし、その後2021年後半にリニューアルして再開、2026年まで継続の

【歳時記と落語】小雪

そろそろ北の方から初雪の便りが聞かれるようになりました。22日は「小雪(しょうせつ)」です。ちらほらと雪が降るようになり、寒さが日ごとに増していく、そんなような意味やそうです。公孫樹や柑橘類も色づいています。 同じ「小雪」でも「こゆき」と読みますと、これは積もるか積もらんかというような雪をいう気象用語になります。 翌23日は「勤労感謝の日」。これは元々は宮中行事の「新嘗祭」でした。「新嘗祭」は旧暦11月の2回目の卯の日に行われておったんですが、1873年に太陽暦が導入された

【歳時記と落語】孫文

11月12日は孫文の誕生日です。さて、この孫文が落語となんの関係があるのかと思いきや、これが意外なところでつながります。 辛亥革命の中心人物として、各国を巡って支援を訴えた孫文ですが、中でも日本は彼自身が一時亡命したこともあり、結びつきが強いですな。梅屋庄吉が特に有名ですが、その他にも多くの人が様々な面で孫文に協力しておったんです。中でも、山田良政は、中国革命における日本人の最初の犠牲として知られております。 山田は、陸羯南(くが かつなん)に勧められ中国語を学び、上海で

【歳時記と落語】立冬

2020年11月7日は立冬です。暦の上ではここからが冬ということになります。とはいえ、ようやく冷え込んできたという感じで、まだまだ冬本番には遠いですな。そもそも旧暦の季節の変わり目というのは、その兆しの頃になっているふしがあります。 その季節の変わり目、冬の到来を告げるモンといいますと、これは「木枯らし」ということになりますやろな。「木枯らし」は「凩」とも書きます。これは国字で、木を枯らす風という思いを込めた字ですな。 この「木枯らし」、気象庁の方では「10月半ばから11

【歳時記と落語】手塚治虫

11月3日は、文化の日です。1946(昭和21)年に日本国憲法が公布された日に由来するのはご存知の通りです。しかし、これは偶々公布がこの日になったんやないんです。戦前までは11月3日は明治節、明治時代は天長節でした。つまり天皇誕生日やったんですな。それにあわせて、憲法を公布して祝日にしたんです。 もう一つ、大阪もんが忘れてはならんのが、この日が手塚治虫先生の誕生日やということ。 お生まれは今の豊中市。その後宝塚市に引っ越されますが、小学校は大阪池田市にあった池田師範学校附

【歳時記と落語】ハロウィンとカボチャ

10月31日は「ハロウィン」です。近年は日本でも大々的にやられるようになってきました。魔女の扮装やらカボチャの「ジャックランタン」やらもすっかりおなじみになりましたな。 元々、「ハロウィン」はアイルランドのケルト人たちが彼らの暦の「大晦日」に行っていた行事に起源を持つもんやそうです。そこに秋の収穫祭やらキリスト教の万聖節(11月1日)の前夜という意味合いやらが習合して出来たもんやそうです。「ハロウィン」という名前も、万聖節(All Hallow's)の前日(eve)=Hal

【歳時記と落語】重陽

2020年10月25日は旧暦9月9日は重陽、菊の節句です。陰陽思想では奇数が「陽」、中でも「九」は「究」であり「陽」の極まったものとされました。それで9月9日は「重陽」なんですな。他の節句も皆、この「陽」の数が重なる日になってますが、どういう訳か、この重陽だけは段々廃れてしもうた。 大阪では、2005年まで枚方市にある「ひらかたパーク」で、「大菊人形」が開催されていました。1910年に「香里遊園地」(今の寝屋川市)で開かれたのが第1回という歴史ある行事でした。もう、大阪の秋

【歳時記と落語】霜降~甲子の夜話

2020年10月23日は「霜降」、文字通り霜が降りるということなんですが、秋の味覚、栗・柿・松茸のシーズンでもありますな。まあ、柿の葉は散る頃でもありますが。 そのまんま、柿と栗と松茸のでてくる小話があります。 秋も深まって来た頃、柿の葉が「寒い寒い」と言いながら、そばに転がっていた栗のイガの上に落ちた。 「おう、寒いなあ」 栗が相槌を打ちますと柿は文句を言います。 「何が寒いや。お前はイガを着て、皮を着て、その下にまだ渋皮まで着てるやないか。俺なんか皮一枚や」 というと、

【歳時記と落語】寒露

2020年10月8日は「寒露」です。 中秋のときに、「芋名月」という話をいたしましたが、秋というと芋の季節でもありますな。特に関東以北では里芋の収穫が大体このくらいの時期から始まりますんで、所謂「芋煮会」が行なわれ始めます。山形の「日本一の芋煮会フェスティバル」は9月の第1日曜なんでもう終わってますが。 芋煮は大きく醤油味と味噌味の二つがあり、肉も豚か牛かという違いがあるらしい。どうもそれぞれがお互いに他の味付けが受け入れられへんようですな。 まあ、雑煮が「すまし」か「白味