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最近の記事

お年よりと絵本をひらく 目次

「お年よりと絵本をひらく」は、著者の中村柾子(なかむら・まさこ)さんが、デイサービスを利用する10人前後のみなさんといっしょに絵本をたのしんだ記録です。 全12回の記事は、以下のタイトルのリンクからお読みいただけます。  食べもの絵本で、つながる  声を楽しむ、音とことばの絵本  一年をしめくくる絵本    絵本で昔に思いをはせる  図鑑で遊ぶ  春をあじわう絵本  昔話絵本に心動かされる  「きょうは何の日?」で本を選ぶ  雨の日の絵本  夏の絵本で遊

    • お年よりと絵本をひらく 第12回 「おじいさん、おばあさんの絵本」中村柾子

      高齢化社会を反映してか、絵本の世界にも、お年よりがずいぶん登場するようになりました。 でも、絵本は本来、子どもが読むことを前提に作られていますから、それらの絵本が、即、お年よりに適しているかといえば、そうとも限りません。病気になったおじいさんを見舞ったり、今は亡き人をしのぶような絵本は、子どものお年よりへの理解になっても、高齢の方が読むには、つらいのではないでしょうか。 では、どんな絵本が好まれるでしょうか。   子どもを見守る存在 たとえば、おじいさんやおばあさんの存在が、

      • お年よりと絵本をひらく 第11回 「絵本で異文化体験」中村柾子

        きっかけは、お相撲さん 大相撲春場所の頃だったか、施設(デイサービス)のみなさんのあいだで、「今場所は誰が優勝するかな」と、力士の名前が取りざたされていました。なかに、「お相撲さんもいろいろな国の人がいるのね。モンゴルとか、ヨーロッパの人もいるみたい」と話す人も、います。 そんな会話を聞きながら、私は、モンゴルを舞台にした絵本を、思い浮かべていました。モンゴル出身のお相撲さんのことは知っていても、その国がどういう国なのか、あまり知られていないかもしれません。いまは、中国や韓

        • お年よりと絵本をひらく 第10回 「夏の絵本で遊ぶ」中村柾子

          文字のない絵本、どう読む? 『えんにち』は、楽しい絵本です。でも、お年よりの方々に、どんな読み方をしたらいいでしょう。なぜって、この絵本には言葉がないので、差し出し方次第で、読み方が変わるのです。そこで今回は、遊びにつなげてみようと、思い立ちました。 まずは言葉遊びから。 「夏といったら、どんな事柄を思いつきますか?」とデイサービスの7、8人のみなさんにたずねると、まあ、いろいろ出ること。枝豆・ビアガーデン・冷やし中華・蛍・かき氷・花火・お化け・ひまわり・そうめん・祭り・縁

        お年よりと絵本をひらく 目次

          お年よりと絵本をひらく 第9回 「雨の日の絵本」中村柾子

          絵本を選ぶ際、その季節ならではの作品を選びたいと思われる方は、多いのではありませんか。私も、梅雨時には、いちどは雨の絵本を読んでみたいと思います。雨降りをテーマにした絵本はたくさんありますが、ご年配のみなさんは、「雨」にどのような思いを持っているのでしょう。   ごく幼い子向けの絵本だけど…… ごく幼い子向けの絵本は、それ自体が優れていても、お年よりには物足りないだろうと、これまであまり選んできませんでした。でも、雨の思い出の中には、てるてる坊主や雨傘への思いがあるのでは?と

          お年よりと絵本をひらく 第9回 「雨の日の絵本」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第8回 「『きょうは何の日?』で本を選ぶ」中村柾子

          「旅の日」にちなんで 絵本選びに迷っていた日、こんな手もある! と教えてくれたのは、早朝のラジオ放送でした。「きょうは何の日」というコーナーです。「5月16日は、旅の日です。松尾芭蕉が奥の細道へ旅立った日で、それにちなみ、旅の日となりました」という放送でした。 ちょうど乗り物の絵本を読みたいと思っていたので、それを旅に結びつけてみようと思い立ちました。 頭に浮かんだのは、『やこうれっしゃ』です。今は見かけることの少なくなった夜行列車ですが、高齢の方には、馴染みのある乗り物

          お年よりと絵本をひらく 第8回 「『きょうは何の日?』で本を選ぶ」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第7回 「昔話絵本に心動かされる」中村柾子

          絵本に求めるものは? 施設(デイサービス)に通いはじめた当初、絵本の時間に集まるメンバーは、その日によって違っていました。ですが、回を重ねるうちに、少しずつ顔ぶれが定まってきました。すると、みなさんが何を求めているのか、気になるようになりました。 面白いと思ったのは、知らないことに出会ったときの喜びの大きさ・深さです。年齢に関係なく、知ることは、嬉しいことなのですね。科学絵本や図鑑などが、こんなに喜ばれるとは! 文房具やつくしという「もの」を媒介に、会話が生まれ、話がひろが

          お年よりと絵本をひらく 第7回 「昔話絵本に心動かされる」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第6回 「春をあじわう絵本」中村柾子

          春を届ける 桜が咲きはじめる頃、草の間に交じって顔を出すつくし。今日は、施設(デイサービス)のみなさんに春を届けようと、線路脇の土手で摘んだつくしを持っていきました。 「さあ、この袋の中に何が入っているでしょう? ヒントは、春です」といって、紙袋を差しだしました。「たんぽぽ?」「さくら?」 なかなか正解は出ません。  「つくしです!」と袋をあけると、「あら~」「ほんと」。なかでも、根っこのついたつくしはみなさん初めて見るようで、興味しんしん、手に取って眺めています。 「根

          お年よりと絵本をひらく 第6回 「春をあじわう絵本」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第5回 「図鑑で遊ぶ」中村柾子

          扱い慣れれば、おもしろい 図鑑と聞くと、「絵本にくらべてなじみがない」と思う方も、いらっしゃるかもしれません。ですが、図鑑は、扱い慣れればとてもおもしろいものです。昆虫、海の生き物、植物、天体など、図鑑が取りあげる世界は、どれをとっても、私たちの暮らしに無縁ではありません。図鑑は、幼い子向けのものから専門書まで多種多様ですが、年齢を選ばず見る人によって、いろいろな楽しみ方ができるものもあります。 描かれていない野菜の名は? たとえば、『いきものづくし ものづくし』シリー

          お年よりと絵本をひらく 第5回 「図鑑で遊ぶ」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第4回 「絵本で昔に思いをはせる」中村柾子

          「昔の子ども」に戻る 子ども時代のことを思い出すきっかけは、どんなときでしょう。『昭和の子ども生活絵図鑑』には、戦後すぐから1965年頃までの、子どもの遊びや当時の暮らしが細やかに描かれています。 小学校の教室内の様子、給食、貸本屋、ゴム段(ゴム跳び)やめんこ、駄菓子など、描かれたものを見て、みなさん、たちどころに昔の子どもに戻ったようです。 「お風呂屋さんは、いくらだった?」「やたらとめんこの強いやつがいたなあ」「うちは、紙芝居は見てもいいけど、駄菓子は禁止だった」「水あ

          お年よりと絵本をひらく 第4回 「絵本で昔に思いをはせる」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第3回 「一年をしめくくる絵本」中村柾子

          元気の出る絵本 12月のある日、絵本を読み終えて施設(デイサービス)を出ようとすると、「今年も、あとわずかですね。来年はどんな年になるでしょう」と、利用者の方に声をかけられました。そこで、「よい一年になるように、今度は元気の出る絵本を持ってきますね」と言って、別れました。   翌週持っていったのは、『ぐりとぐらの1ねんかん』です。この絵本のあちこちに描かれている、どんぐりや松ぼっくり、まだ公園に残っていたイチョウの葉っぱなども、一緒に持っていきました。 大判の表紙に描かれた

          お年よりと絵本をひらく 第3回 「一年をしめくくる絵本」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第2回 「声を楽しむ、音とことばの絵本」中村柾子

          声を出すって気持ちいい 毎週デイサービスを訪問していると、声の出にくいお年よりがいらっしゃいます。声は元気のもと。朗らかな笑い声や話し声を少しでも取り戻せたら、と思います。でも訓練で声を出すのは、気が滅入ります。声を出すって気持ちいい、と思える方法があると、いいですよね。   『あーと いってよ あー』を、持っていった日のことです。大きな声で、あーと言ったり、上を向いて、あーと言ったり、思いきり音をのばしたり、弾ませたり、絵本の主人公のすることを、皆でまねてみました。 す

          お年よりと絵本をひらく 第2回 「声を楽しむ、音とことばの絵本」中村柾子

          お年よりと絵本をひらく 第1回 「食べ物絵本で、つながる」中村柾子

          お年よりも絵本が好きなのでは? 私は、保育現場で30年以上、子どもたちと絵本を読んできました。それは、とても楽しい日々でした。退職後考えたことは、「お年よりも絵本が好きなのでは?」ということでした。すぐれた絵本は時をこえ、国もこえて、子どもたちに迎えられた……それなら、年齢をこえても、絵本は喜ばれるはず。幸いなことに近所のデイサービスが、「週1回、午後の1時間をどうぞ」と、受け入れてくれました。   でも、いざ行くとなると絵本選びに迷います。あれこれ考えた末、頭に浮かんだ絵本

          お年よりと絵本をひらく 第1回 「食べ物絵本で、つながる」中村柾子

          『ブニーとブールド』新刊著者対談つづき

          福音館書店では、6月に新刊『ブニーとブールド』を刊行しました。お金はもちろん、パンも大好きという2ひきのブタの貯金箱を描いた愉快なお話です。前回につづき、この本の作者・山下篤さんと、お話の絵を描いてくださった広瀬弦さんの対談をお届けします。 お話に登場するキャラクターたち 広瀬 お話の中に意地悪なカラスが出てきますけど、あのカラスはいいですね。 山下 絵本から、もう少し長いこの物語を書こうと思ったとき、カラスのことは考えました。できれば、悪者になってくれる登場人物がほし

          『ブニーとブールド』新刊著者対談つづき

          『ブニーとブールド』新刊著者対談

          福音館書店では、6月に新刊『ブニーとブールド』を刊行しました。お金はもちろん、パンも大好きという2ひきのブタの貯金箱を描いた愉快なお話です。 今日から2回にわたって、この本の作者・山下篤さんと、お話の絵を描いてくださった広瀬弦さんの対談をお届けします。お二人に、作品作りの背景や貯金箱にまつわるお話など、あれこれたっぷり語っていただきました。 そもそもの始まりは・・・ 広瀬 このお話はどのくらい前から書き始めたんですか? 山下 この形になったのはもう3年以上前。でも、実は

          『ブニーとブールド』新刊著者対談

          きつね山の女の子 第二回

          山元ときえ 作 七、ボロボロになったくま太ズボン 「ただいまー!」  げんかんのドアをあけると、外に出ようとしていたお母さんと、ぶつかりそうになりました。  そのしゅんかん。 「るみな、いったい、どこへ行っていたの!」  お母さんの大きな声が、頭のうえからふってきました。 「くらくなっても帰ってこないから、これから、あなたをさがしにいくところだったのよ!」  それだけいうと、お母さんは力がぬけたように、だまりこみました。ところが、るみなのズボンを見て、また、新しいひめいをあ

          きつね山の女の子 第二回