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小説

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#小説

コント 『母と息子の東京アラート』

Nintendo Switch 買ってよぉー 「7回連続、テストで90点以上取れたらね」 よっしゃー! ぜったい取ってやる! (一ヶ月後) おかあさーん! ほらっ、95点!これで7回連続だ!  Nintendo Switch買ってよね! 「複数のクラスの平均点や先生の分析を総合的に判断してNintendo Switchの購入を検討したいと思います」 東京アラートかっ!

絵ものがたり『眠る犬のビジネス』

ねむったままで お金を もらえる ほうほうって ないのかな だって、 ぼくは ねむるのが 大すきだから あいちゃいけない フタのうえに のっておく おしごととか どうかな どんな すてきな おんがくよりも ぼくの いびきを きくのが すきって ひとは いないかな おなかの したで たまごを あたためる おしごととか どうかな ・・・ ・・・・・・ はっ! いい におい! ありゃ、 かんがえてるうちに ねむってしまってたよ きょうも いいほうほうが おもい

ビジネスアイディア小説ショートショート『パーテーション居酒屋で合コンを』

合コンしたいけどさ、 怖いじゃない。 だって、3密だし。 初めて会う人が、どんな感染症にかかってるかわかんないじゃない。 合コンでマスクしてるのもアレだし。 衛生観念のしっかりした、そんなアナタにおススメなのが、 当店自慢の、パーテーションスペースでございます。 ひと席ひと席、透明なビニールシートで、しっかりと区切られていますので、 飛沫感染のリスクは極小。 乾杯の際に使用する大きめのアームカバーも各席にご用意。 接触や、他者のグラスに直接触れることはございません。

ビジネスアイディア小説ショート・ショート『KAWAIIデリバリー』

好みの異性をスマホ画面から選べば、 その子がお弁当を届けてくれるサービスがあるらしい。 昼休みに食べる弁当なんて、 そこそこの美味しさで、腹が満たせりゃ十分だ。 それなら、 可愛い子が、とびっきりの笑顔を浮かべながら到着して、 弁当をバッグから取り出す間、二言三言たわいもない会話ができて 「午後のお仕事も頑張ってくださいね♥」 なんて言ってくれりゃ、 なによりだ。 コンビニで買うより高いのは当然だけど、 週に一回くらい、 そういう贅沢ってもんをしてもバチは当たらないって

絵とショートストーリー 『人類最後の司会者』

さあ、今日も始まりました! ラースト・ヒューマン・ショー! 司会はわたくし、 ジョニー・タナベ・モーリソン、でっす! スポンサーは、 わたくし、 ジョニー・タナベ・モーリソン。 さあ、 今日もリスナーからの質問に バンバン答えていっちゃいますよ! おっと、 その前に、本日のスペシャルゲストのご紹介! お越しいただいたのは… 人類最後のゲスト、 ジョニー・タナベ・モーリソン。 どうぞよろしくお願いしまぁーす! どうぞよろしくお願いしまっす! では、 改めて、一

絵とショートストーリー 『デリカシーがない男』

あの時、 君は何て返してほしかったんだろう 僕は 今も時々 問いかける 答えは出ない なんて当然わかってる あなたは デリカシーがない 伏し目がちに 微笑しながら 君は つぶやいた そりゃあ 間違ってない 僕は たしかに デリカシーがない でも、 あのタイミングで そんなことを 言い残せる 君は きっと もっと デリカシーがない

ビジュアル短編小説 『近未来ちゃん』 老害が無くなる!? の巻

お年寄りは外に出にくくなる →現場からお年寄りが減る。 →老害が無くなる。 →日本、良くなる! き、近未来ちゃん!! で、でも・・・!!! テレワークの浸透で、いらないおじいちゃんたちの存在が如実に明るみに出たりしてるじゃないか・・・!! 近未来ちゃん→「その程度でゆるむほど、 日本の社畜文化は甘くないっす。 事態が収束するのを待つまでもなく、 緊張感が抜けるや否や、 あっという間に、元に戻る力が すっごい勢いで、はたらくよ。 老害のメイン層、50、60代が 慣れ

小説 『202X年 びょういんで はたらく パパ』

202X年の朝、 勤務先の建物は、関係者入り口まで列が続いていた。 ガラス扉の向こう側、ビニールシートで区切られた待合スペースはもちろん満席。 昨夜の健康情報番組で、あんな話題が出たから当然か。 うちもそろそろ当日受付は止めて、 完全予約制にしてほしいものだ。 でもそういうことは経営者が考えること。 自分は目の前にいる一人一人に対し、 できることを淡々とやるだけだ、 それがプロフェッショナルというものだ、 そう言い聞かせてエレベーターに乗った。 消毒室を抜けて、ロ

【最終回】 小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(16)

一話目から読む 【前の話】 普段使わない筋肉だったせいか、右腕の筋肉痛は月曜日になっても続いていた。弁当を食べる箸がうまく操れない。 でも、その鈍い痛みがなにかの成果のようで心地よかった。 背後から例の声が聴こえた。 「ちひろさーん、ランチ時間長すぎじゃないかあー。昼休みってのは、仕事をしっかりやった人が初めて取る権利があるものであってさあ」 箸を持つ手に力がこもる。 すばやく振り返って、その声の主を見上げた。 にやけ面にある充血した目を捉えた。 ピクッと細かく

小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(15)

一話目から読む 【前の話】 しばらくそのまま歩いていた。グッズがつまった袋のこすれる音が歩みを進めるたびに響く。 「やっぱ自分しかないっしょ」 「え?」 「それでもどうしても消えてほしいって思うなら、自分でやるしかない」 「そこに戻るんですか? 無理ですから。わたし、人殺しなんて」 「できるかどうかなんて、やってみなきゃわからないから」と大きな目を見開いた。 「なんかすごく真っ当っぽいこと言ってますけど、そんなことしたら、わたし、人生終わりますから」  ハル

小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(14)

一話目から読む 【前の話】 夕日が赤く空を染め始める中、パーク内を歩いていた。アトラクションから出てくる子どもが横を走り抜けていく。 ハルさんが持つ大きなショップバッグからは、ぬいぐるみと合体した帽子が顔を出していた。その頭を軽く小突く。 「これはさすがにいらなくないすか」 すねた顔をした。 「なんで、そう思うわけ?」 「だって、間違いなくかぶらないでしょ、こんなの」 「花を買った人に、そんなの食べないでしょ、って訊く?」 そう言い放ってハルさんは通路の脇にあ

小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(13)

一話目から読む 【前の話】 パレードが通りすぎると、ハルさんは満足した表情を浮かべながらショップコーナーに向かっていった。 ただただ後についていく。嫁と娘の買い物に付き合わされるパパの気持ちってこんな感じなのかなと思いながら。 中に入ると、子どもたちが集まっているコーナーに一切のためらいもなく割り入り、座り込んだ。 「コボたまのアイテム、こんなに増えてるー」 周囲の親から向けられている冷たい目も気にせず、片っ端から手にとっては眺めて歓喜の声を上げている。  しま

小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(12)

一話目から読む 【前の話】 3 キラー・パス カーテンから入る明るい光で目が覚めた。慌てて枕元のスマホを見て、今日は土曜日だと、ほっとする。今日はあそこに行かなくていい。 せっかくの週末、一番に頭に浮かべるのがあいつの顔だなんて、最低だ。あわてて頭を振って思考から追い出す。 と同時に、「次は土曜でどう?」という文面を思い出す。  先日届いたLINEは、当然のように次回の予定を尋ねてきた。どうやら彼にとって、わたしはいまだにクライアントのようだ。 もう会う必要など

小説 『キラー・フレーズン・ヨーグルト』(11)

一話目から読む 【前の話】  スマホのアラームを止めて、そのまま通知を見る。  都内のオフィスビルが爆破されたというニュースが表示されてないか、あいつが急死したと訃報メールでも届いてないか、そう考えるのが平日朝の定番になっている。  当然そんな奇跡は起こるはずもなく、朝のルーティンを重い気持ちのまま進めて、いつも通りの時間に家を出た。  オフィスに着くと、まずあいつの気配を察知する癖がついてしまっていた。 今日はまだ来てないようだ。たかだか五分程度のこととはいえ