果実
ある家の玄関を出たところに大きな木があって
夏の終わりには黄色の小さな実をたくさんつける
その横には柘榴の木があって
毎年同じ時期になると実が落ちて
赤い染みであたり一面が彩られる
僕は
黄色い実も
あたり一面に弾けて飛び散った
少し冷たい色を帯びた柘榴の破片も
丁寧に拾い集めて
持ち帰ってた
僕には姉妹たちがいる
それぞれ性格の違う彼女たちは
自分の性格に合うことを自然にやっていた
違うといっても同じ家族のなかのことでたいして違わないけど
気の荒い妹が庭に侵入した蜘蛛を酷い剣幕で撃退しているのを見て感心した
優しい姉がまだ幼い妹をとても大切にしているのにも感心した
僕はあまり得意ではないみたいだ
だから
実を運ぶ
生まれた順序は関係ない
僕は
僕として実を運ぶ
たまたまそうなった
そこには理由や意味はなにもない
ある、夏が近づいた日
大きい姉が去るときがきた
少し前からそのことはわかっていた
兄弟たちの姿が見えていたから
そのとき僕は落ちていた実を拾いながら
姉の美しい姿を眺めていた
眺めるむこうには太陽があって
初めて、そしてそのときだけつける薄いヴェールが七色に輝いていた
姉は少し離れた場所に家族を持つだろう
そして僕は実を運ぶ
僕として
姉の子どもたちの中にも
僕みたいな子どもがいるといい
わたしではなく
僕として実を運ぶ子どもたちが