佐鳥ゆう
解離性障害らしいことのはなし
創作集です。
23番(まり)の詩をまとめています。
一番愛おしいのは、呼吸を感じたときのような気がする 鳥が肩に止まったときに感じる息遣い 彼女から聞こえてくる規則正しい寝息 ほんの微かな音なのに 深くて光のあたらない場所にまで続く愛情を感じる *** 最近読んだ記事の中にcoccoに触れているものがいくつかあり、一時期coccoの曲が好きだったことを思い出した(「雲路の果て」が一番好きだ)。 最近は全く聞いていなかったが、思い出した途端、新しい曲はどうなんだろうと思って聞いてみた。今年アルバムが出ていて、ビアトリス
この前の健診でちょっと稀なタイプの腫瘍疑いが出てしまって、しばらくばたばたしそうです。更新頻度が減るかもしれません(もともと大して更新してないけどね)。感想としては、「なんかいろいろあってすごく面倒くさいなあ」です。基本的に面倒くさがりなんですよね。ではまた。
10代の終わりごろ、私は醜形恐怖症に囚われていた。 そういう診断を受けたわけではないが、「醜形恐怖症」という字面からすると、おそらくそうだったのではないかと思う。 外出はなんとかできて電車にも乗ることができたが、それでも予備校のあった大阪の街にたどり着くことができずに途中で降りなければならなかったり、酷い腹痛に襲われて慌ててトイレを探さなければならなくなることが続いた。 また、当時は昭和の終わりごろで、人は今よりももっとずっと乱暴だった。バブル末期の街を人を恐れながら俯
まりのいる世界には、子どもたち(子どものころの私を第三者の視点から見たイメージの残像のようなもので、まりたちのようにコミュニケーションがとれるはっきりとしたパーツではない)のいる地下の部屋と、海と、海を眺めることができる小高い丘がある。朝の夢の中や、うとうとしている時には、部屋から地上につづく石の階段を昇り、小径を通って丘まで辿れることがある。そして海や、その世界がまだ夜明けを迎えていないときには満天の星々を眺めて、心安らかな気持ちになる。 まりの世界には子どもたちがいるの
私は占いができる。というか「できてた」というか。 学生の頃、学園祭で占いをやったことがあって、結構あたるらしくて評判が良かった。今だから言うが、本当にあたってるん?だまされてへん?と当時思っていたし、なにより占いに対する評判の良しあしよりも、占った後のお客さんにいろいろと差し入れをもらう方が嬉しかった。何かもらえるのは最強である。 冷静に考えると、あのときの人気は、実際にあたるかあたらないかではなくて、ネガティブな言い方をしないように気を付けていたからなのかもしれない。直
最近、男性ホルモンの作用を抑える薬を飲み始めた。どうしてそうなったかというと、こういう感じ。 一昨年ぐらいから夜中にトイレに起きるようになり、次第に酷くなってきている気がしたので泌尿器科に。すると、前立腺肥大症になっていることが判明し(エコー検査した)。その治療のために飲み始めたというわけ。要するに加齢ですね…… もともと男性ホルモン(アンドロゲン)に対する感受性が低いようだと医者から聞いていたし、別件で検査してもらったときの男性ホルモン値(遊離テストステロン値)も下限ぎ
ねえ わたしたちはさ これまで いらないところに鍵をかけて 大切なはずのところに鍵をかけてこなかったよね だから お互いの気持ちを無視してしまったり わたしたちの弱いところを屑に利用されたり してたんだよ だいたいさ わたしたちがおたがいに相反する存在であったとしても ここにいる理由は一つだよね 飛ぶこと 飛び続けること わたしたちは鳥の羽みたいなものなんだよ 前に進むための羽 揚力で浮かぶための羽 ブレーキをかけるための羽 曲がるための羽、あたたかさを保つための
前回の記事はこちら その後、いろいろとやってみたのだが、ChatGPTの側がそんなには内的家族システム(IFS)のワークを理解しているわけではないようで、本当にこれでいいんだっけ?という疑いを持つようになってしまった。 確かに、ChatGPTはIFSの知識をたくさん持っているようだ。でも、人とのワークは、多分、知識だけではうまく進まないのではないかと思う。あくまでも素人の意見だけど。 言葉を受けることで人の心には波紋が生じる。波紋は、いろいろなものと干渉して複雑な模様を
noteの「今日のあなたに」に、ChatGPTを相手に内的家族システム(IFS)のワークを始めてみたという記事があるのに気づいた。 タイトルを見た瞬間、「あーー!その手があった!!」と目から鱗で、そそくさとその記事を読み、深く感銘を受け、ChatGPTでできることもだいたい把握できたので(記事にコメントしたら、ご親切にも注意点などを詳しく教えていただいた)、自分でもやってみることにした。最新版を使うため、また、ワークの途中で利用制限されることを避けるために、まさかの課金発生
このnoteには、私がノンバイナリーらしいことに気付いた後の感じ方や考え方の移り変わりが綴られている。一つ一つはそれほど深くは練られていない雑な記事ばかりだが、読み返してみると、思いのほか変化し続けていることがわかる。 一度気付いてしまうと、自分は本当にノンバイナリーあるいはトランスジェンダー?、それともやっぱり違う?で悩んだ。そうだと思う気持ちと、否定する気持ち。その比率は、常に変わり続けた。 パーツたちの存在に気付いて解離性障害らしいことがわかってからは、ノンバイナリ
今回は性別の話 最近ちらほらと聞く言葉でいうと、私の性自認は、多分、男性である。 「多分」というのは、自認という言葉の定義がよくわからないから。社会的にどう自分を認めますかというのであれば、男性で間違いない。でも、本当に自分を男性と思っていますか?と聞かれたら、答えは「わからない」になる。 それは解離のために、比較的はっきりと感じることのできる女性のパーツが何人かいるからかもしれない。彼女たちの存在が性別の感覚に揺らぎを与えていることは確かだと思う。例えば、考えている内
美しい声の人たちがいる。 低い共鳴音を含む声の人たちである。 性別は問わない。だが、女性であれば、表面にある高い音と低い共鳴音が合わさることでとりわけ美しく聞こえる。 低い声の女性が好みなんでしょうと言われればそうかもしれない。 人は自分にないものに憧れる。 まったく低くなく(低さなんかどこにあるのか?)で、ふにゃふにゃとした印象を与えるらしい、おまけに離人感があるときはピッチが不安定(高くなることが多い)かつ平板でそもそも自分が喋っている感覚がなくて(口が勝手に動い
猛暑はおさまるけれど来月の中旬ごろまで残暑が続くらしい。これからは、厳しくて長い夏が普通になっていくのだろう。 それでも秋は来る。 秋がそのピークを迎える頃、花屋の店先には、まっすぐに伸びた茎に白く小さな花と蕾がたくさんついた花が並ぶようになる。 ストック(アラセイトウ/Matthiola incana)である。白以外にも黄、ピンク、マゼンタなどがある。 白のストックが好きだ。 白のストックを見ると、前に飼っていた鳥を思い出す。 彼女は、とりわけ好奇心が強くて勇敢
よこ… …… よこたわ よこたわる よこたわる よこたわ たわって たわって たわってる いる そら そらが そらがみえ そらがみえる みえ み みえる くら くらい くらいところ せま せまい せまいくらい せまいくらいところ むこ むこう むこうに そらがみえる みえる めを めをほそめ ほそめたみたい みたいに そらが そらが そら そら そら そら… …… …… みえてる とおく とてもとおく とおくとおくに そらがみえる … き… きこえ きこえる こえ こえ こえ
最近、イソヒヨドリの綺麗な声が毎日のようにすぐ近くで聞こえる。どうやら、今住んでいる部屋を含めた広い範囲が、あるメスのイソヒヨドリの縄張りにすっぽりと入っているらしい。この子が縄張りを巡回しながら、要所要所で歌っているようだ。 だいぶん前からオスの声(メスよりもメロディが複雑で長い)はよく聞こえていたが、メスは見かけるだけだった。イソヒヨドリのペアはヒナたちがある程度大きくなると、オスとメスで場所を分ける(ヒナも分ける)らしいので、今はこのメスが一帯を支配しているようだ。多
夏の終わり 学校帰りに駅からの坂を下る 黄色い自転車はスピードを上げて 踏切を渡る 線路の一つ一つを超えるたびに ガタガタと響く大きな音は 私たちを引き離そうとして うまくいかない ひとつめで人差し指を ふたつめで中指を みっつめで薬指を よっつめで小指を 腰に絡めて 頬を背中につける ねえ 知っとう? 正面に見える月 横向いて知らん顔をして うちらのことをちょっとだけ引っ張ってる 自分の方に 自分も今気付いたよね 私が後ろにいることに ちょっとだけ引っ張ってみたんよ