テレビもWi-Fiもスーパーも薬局もない暮らしは今の私にとっての便利な暮らしだ(家族移住体験:奈良県下北山村#3)
大声で泣く子どもを見て気持ちよさそうだなと思った森の中
今日は初日に出会ったムーミンさんに森を案内してもらう日。
9時にBIYORIで待ち合わせをして、市の職員さんに子ども用のヘルメットを貸してもらい、家族みんなで長靴に履き替えたら森の中へ。
森の中に足を踏み入れた瞬間空気が変わる。
ただ冷んやりしているとかじゃなくて、どこか神聖な感じがして鳥肌が立つ。
子どもたちは動かないユンボに乗せてもらい、特に重機が大好きな息子にとっては夢のような時間を過ごす。
森の中を歩きながら、自伐型林業について、森に道をつくる理由について、森は誰のもので、どう保っていくのかについて話を聞く。
歩きながらいつの間にか私は聞かれてもいない自分の子どもの頃の話などを沢山していて、森の中はつい色んなことをさらけ出してしまいたくなるのかな、なんて思った。
途中、はしゃいだ子どもが転んで大泣きをしたのだけど、その泣き声が気持ちいいほど森に響く。(ケガはなかった!)
家に帰ってから「痛かったけど大きな声で泣いたことが気持ちよかった」と子どもが言う。
確かに都市部では私もなるべく大きな声で泣かせないように気を付けているし、こんなに思いっきり泣けることも少ないよね、と思う。
大自然の中で大声で泣く娘をなぐさめながら、気持ちよさそうだな、と思ったことは確かだ。
木はこんなに綺麗だったのか
その後、製材所の見学に。
木の香りやそのダイナミックさ、美しさに心を打たれる。
木ってこんなに綺麗だったんだ、と思った。
作業場のすぐそばには小川が流れている。
沢山の重機を目の当たりにしその場から離れたがらない息子は、大きくなったら絶対に現場で働くと言う。
この日だけの感情だとしても、今日は息子が初めて「大きくなったら○○になりたい」と言った日なので覚えておこうと思う。
ガスコンロと珈琲セットの購入を決めた公園でのお昼ごはん
その後、地元の方おすすめのパン屋さん「たもとパン店」に向かう。
まだ午前中なのに完売している。
残念、と思っていたらムーミンさんがいくつかパンを取り置きしてくれていたみたいで、もうないと思っていたところからのパン登場に、家族一同ムーミンさんに敬礼。
その後ムーミンさんの活動拠点を見学させてもらうことに。
軽トラに乗せることができる手作りのモバイルハウスには、子どもの頃の夢が詰まっている感じがした。子どもたちも出たり入ったりをずっと繰り返す。
しばらく見学させてもらった後は近くの公園でお昼ご飯に。
「珈琲飲もうよ」とムーミンさんがガスコンロと珈琲セットを軽トラから持ってきてくれる。
いつもインスタントコーヒーばかりを飲んでいる私たちにとって、これは一度覚えてしまったらヤバいやつだと分かっているからこそやってこなかったことだ。
案の定、覚えてしまったらヤバいやつだった。
こんなに美味しいなんて、近々ガスコンロと珈琲セットを買わずにはいられないではないか。
「今度は山で飲みたいね」とムーミンさんが言う。
またムーミンさんと珈琲を下北山村で飲みたいと思っていたけど、会ったばかりで図々しいだろうかと思うと言えなかった。
それをこんなにサラリと次会うことを前提に言ってくれるムーミンさんに、「本当ですね、次来ることが楽しみです」とありがとうの代わりに言う。
次にまた来る理由に、ただただ下北山村が美しいからという理由意外に、ムーミンさんに会いたいから、という理由も加わる。
川遊び、学校見学、そして食べ助け
ムーミンさんとお別れして、子どもたちがお昼寝している間に私はBIYORIで仕事を進める。
お昼寝後は川遊びへ。
まだ川遊びは季節的に早いけど、足を川に浸したくなる気持ちはすごくわかる。
こんなにきれいな水、堪能せずにはいられないよね。
と思ったところで子どもたちは川の中で転んで下半身が水浸しに。
もー、着替えなんてないよ、とため息をつきたくなる私を横目に、夫がいそいそといつの間にか用意してくれていた子どもたちの着替えをバッグから取り出す。
敬礼…!
その後は職員さんに空き家や学校を見せてもらった。
保育園と小中学校が一緒になっている新しい学校は木がふんだんに使われているようで、本当に素敵だった。そして一見学校とは思えないようなおしゃれなつくり。
ここで育ったら、絶対にのびのびと心も体も健康に育つんだろう。
帰ってBIYORIに顔を出したら、職員さんがほうれん草をおすそ分けしてくれた。
「食べ助け(たべだすけ)」というらしい。
「食べ助け」について調べたら、「いっぱいあって食べきれないので助けると思ってもらってください」という意味とのこと。
つまり、もらう側に気遣いさせない気遣いだ。
職員さんのやさしさと一緒にありがたくいただく。
都合が悪いことを不便とよぶならば、この村は私にとっての便利になる
今日もいっぱい歩いた。学んだし、遊んだ。仕事もした。
こんな毎日が続けばいいのに。
いや自分次第で続けられるのか。
そんなことを思いながらお風呂に入って、はしゃいでなかなか寝付けない子どもたちの背中をトントンしながら寝せて、私も寝る。(その間夫は洗濯!敬礼…!)
あーもう眠い、と思った時に、ムーミンさんの「ここは、誰かにすごく教えたいようで、でも少し秘密にしておきたいような場所」という言葉が頭をよぎった。
ムーミンさん、私もそう思う。
都合が悪いことを「不便」というらしいが、
都合が悪いとはどういうことなんだろう。
この家にはテレビがない。Wi-Fiもない。
近くのスーパーまでは車で40分かかる。
薬局もない。
コンビニもすぐそばにはない。
私にとって今、この村が都合がいい。
下北山村は、一般的に見れば多分全然ちょうど良くない村だ。
でも誰かにとっては、少なくとも今の私にとってはちょうど良い村だ。
昔ながらなところがいい、昔の方が良かった、今はちょっと便利すぎる、とかじゃなくて、
現代の便利さを知りそのテクノロジーに感謝しながら暮らすうえで、今、ここでの暮らしが心と体にグワっときた。
うまく言えないけれど、こんなうまく言えない思いをその日に会って半日一緒に過ごしたムーミンさんと共有できたことも嬉しかった。
そう思ったところから、夜トイレに起きるまで記憶がないから寝たんだな。
つづく
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