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<2024秋スケッチ:No1>トーハク・日本庭園の枯蓮、「歴史記録室」の伊能忠敬大地図に引き寄せられる
はじめに
前回の記事で昨年から定期的に東京国立博物館の常設展に通っていることを述べました。
訪れるのは主に日本美術が展示されている「本館」ですが、昨年から始めている「水墨画」鑑賞には、「東洋館」の4階の中国絵画の会場も外せません。
しかし、大抵は「本館」だけでくたびれてしまい、「東洋館」に寄る気力がなくなります。
どころが、先月12日から「中国書画精華—宋・元時代の名品—」展が展示されていることを知り、次の週も出かけることにしました。
同時に、今年は遅くなった紅葉も見れるのではないかと日本庭園をおとずれました。
日本庭園の秋スケッチ
トーハクに到着してすぐに、本館裏手の日本庭園に回ったのですが、結論を言うと残念ながらすでに紅葉の季節は終わっていました。
散り終わった桜の落葉と、盛りを過ぎた赤い紅葉を見つけたので、写真だけを示します。
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出典:筆者撮影
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出典:筆者撮影
しかし、池に近ずくと、多くのカルガモ(?)が水面にさざ波をたてながら泳ぎ回っており、向こう岸をみやると枯蓮が一面に広がっています。
古来「枯蓮」は水墨画の主要テーマですし、私自身も以前から描きたいモティーフでした。水鳥も一緒に描けば丁度良いと思いスケッチすることにしました。
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スケッチブック B5 ペンとインク
「歴史の記録室」で伊能忠敬・大図に驚く
日本庭園を後にして、「東洋館」に行き「中国書画精華—宋・元時代の名品—」展を鑑賞しました。本記事は、展覧会の訪問記事ではないので、鑑賞結果は別の記事に譲りますが、「東洋館」のあと訪れた「本館」で、いつもは素通りする「歴史の記録」の部屋で興味を惹いた伊能忠敬が作成した下記の地図を紹介したいと思います。
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右:部分拡大図(四角で囲んだ部分)
出典:筆者撮影
実は、この《九州沿海図(大図)第一 小倉・下関図》とは別にもう一つ、《九州沿海図(大図)第十 鹿児島図》の二つの図が展示されていたのです。
何に驚いたのかというと、その一枚の大きさです。高さ2-3mはありそうです、解説によれば、忠敬が作成した地図は、「大中小」の三種類があり、しかも地図の美しさ、正確さは現代と比較しても劣らないというのです。
私は伊能忠敬が50歳で隠居して、ゼロから天文学、地理学、測量学を学び直し、56歳から日本全国を測量士、77歳でなくなるまでに日本の正確な地図を作り上げたこと、すなわち第二の人生でこのような偉業を成し遂げたことは学校で習いますから知識としては知っています。
しかし、地図については、教科書でいつも出てくる日本全図の写真しか知らず、他に大図、中図があることはまったく知りませんでした。
そして、この「大図」の大きさを見てはじめて伊能忠敬の偉大さを実感したのです。それは現在若い女性にすら歩いていて追い越されるほど老いを実感している我が身を置き換えて想像したからかもしれません。
それにしても、何という美しい地図でしょうか。現代の印刷地図しか知らない目には大変新鮮に映ります。
「歴史の記録」室で神戸の古写真に引き寄せられる
忠敬の地図を見た後、同じ部屋の壁を見ると何枚かの白黒写真が展示されています。いつもは詳しく見ないのですが、馴染み深い神戸居留地の古写真だったので、眼が引き寄せられました。
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出典:筆者撮影
街歩きスケッチの記事<私のスケッチポイント/作品紹介あれこれ>の中でいつも言及していますが、街歩きスケッチでは、スケッチポイントの現代をスケッチしながら、その場所の昔の姿をイメージしています。
神戸の街自体は横浜同様、都市としての出発は「居留地」から始まります。何年も神戸の街をスケッチした立場から、ついつい古写真に眼が惹きつけられたという訳です。
これまでも、古写真を使って東京のタイムスリップ・スケッチを描いてきましたが、展示された写真を使って、約180年前にタイムスリップし、当時の神戸居留地を描いて見ました(下図)。
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ホワイトワトソン G4 ペンとインク
(おしまい)
前回の記事は、下記をご覧ください。