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砥部焼愛好者より愛を込めて…
私はこれまでの人生において「推し」というものに縁がなかった。
芸能人にもキャラクターにも惹かれない。
「特定」のものに「特別な愛」が……ない。
推しとはなんぞや。
【推し】ー単なる好きを超えて人に薦めたいと感じる対象を指す。
ある者は言う。推しとは「心のオアシス」だと。
またある者は言う。推しとは「生き甲斐」だと。
私にそこまで好きなものなど……
あった・・・。ひとつだけ。
それは・・・
「砥部焼」
愛媛県 砥部町
私の生まれ故郷は「愛媛県」である。
愛媛で生まれ育ったなら、家庭に一つ……いや10以上はあるであろう砥部焼。
砥部焼知らないヤツいる?
いねぇよなぁ?
《マ○キー風》……である。
砥部焼(とべやき)は、愛媛県砥部町で生産される伝統的な陶磁器です。砥部焼は約230年の歴史があり、白い地に藍色の模様が特徴的です。器の形状やデザインは多様で、食器や花器、茶器などが作られています。
砥部焼の特徴的な模様は、手描きによるもので、職人の技術が光る一品となっています。シンプルでありながらも美しく、日常使いに適した丈夫な陶磁器として人気があります。
白地の艶、美しい藍色の模様、
丸いフォルム、
重量感、安定感、フィット感。
どんな風景とも、料理とも、物とも調和する陶磁器。
the癒し。
パーフェクツッッ!!
生まれた時からずっとそばにあった砥部焼。
実家にも親戚の家にも友だちの家にも外食先でも、普通に砥部焼があった。日常の風景に同化しているといっても過言ではない。
私にとって砥部焼は「普通」にただそこにある存在だった。
***
愛媛を出たことで転機は訪れる。
ここからは、中でも特に「砥部焼の食器愛」について語らせて頂く。
結婚を機に、実家の母から幾つも砥部焼の食器を譲り受けた。
家族のために料理を作るようになり、はじめは二つずつでよかった食器が、一つ また一つと「揃いの食器」が必要になった。
そして料理のレパートリーが増えてくると、料理によって食器を変えたくなった。大皿や深鉢も欲しくなった。
愛媛県外で暮らしていた私は、食器を調達するためにショッピングセンターへ向かった。自分の思い描く食器を探す。
・・・ない。
私の心躍る食器がない。
どれも気に入らない。
そう、私は知らず知らず砥部焼の食器を探していた。
***
愛媛に帰省した際、砥部焼を買いに行きたくなった。結婚後、初めて「砥部焼を買いたい」と思ったのである。
しかし、実家には溢れるほど砥部焼がある。家族が増えて食器が必要となる私とは裏腹に、家族が減少していく実家において食器は不要なものとなり、「どれでもあげるから」と美しい砥部焼の数々を譲り受けた。ちなみに夫も愛媛県出身であり、義母からもたくさん譲り受けた。「買わなくていい」と言われた。
なぜそんなに家に砥部焼が溢れているのか?
砥部焼の魅力は先述の通りだが、何せ砥部焼は頑丈で
割れないのだ。
とても魅力的だが、他の食器とぶつけようものなら絶対に負けない。繊細な食器はたちまち割れてしまう。つまり……ずっとずっと、何年も同じ食器を使うことになる。買い足すと増えていく一方なのである。美しいままの砥部焼……。
イ……イイネ!
割れない食器。
飽きの来ない食器。
……でもね、やはり新しいものも欲しいじゃない?
こうして私の砥部焼巡りが始まった……。
***
年に2回、春と秋に開催される
「砥部焼まつり」
素人目にはわからないB級品がお安く手に入る祭典。
そして60程の窯元が一同に集まるため、色々な砥部焼を見ることができる。眼福! 人気の窯元は商品がすぐに売り切れてしまうので早めに行くのが得策。
砥部焼は少し値が張るので、私は毎年少しずつ買い集めている。
好きな窯元さんの好きなシリーズを少しずつ。
今度の祭典ではこれを買おうと心に決めて会場を去る。買いすぎ注意!
※砥部焼ファンは全国にいるそうで、百貨店でも売っている。……がS級品は、おそらく手が出ない。愛媛では安く買える。
砥部焼 紹介
ここからは自宅にある砥部焼を紹介します!
自宅にある食器を撮影しました。我が家の食器の8割以上は砥部焼です。
そして今回この記事のために「砥部焼観光センター 炎の里」に行って許可を得て、写真を撮らせて頂きました。
(ちょうど「砥部焼テント市」があってそのついでに寄らせて頂いた)
砥部周辺には、100近くの窯元があるそうで、中でも私の好きな窯元をご紹介します。
①梅山窯
砥部焼最古の窯元。唐草文様が有名。 年配の方は、砥部焼といえば「梅山」というほど。全国的に?うどん鉢はここのをよく使用しているのを見かけます。ドラマやドキュメンタリーに出てくるうどん屋さんの鉢を見てみてください。多分、砥部焼です。
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②千山窯
こちらも老舗。250年の歴史があります。有名な柄が多数あるのですが、私のお気に入りはこの(マイナーな)シリーズです。
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③きよし窯
女性作家さんの窯元です。映画「未来へのかたち」のロケ地にもなりました。
こちらの「カトレア」シリーズが好きで集めていましたが、今回のテント市では「ミモザ」シリーズのカップを二つ購入しました。※ポットは前回購入済み。
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④和将窯
新しい砥部焼です。この柄が好きで、次はコーヒーカップを狙っています。
サイズ感わかり辛いですが、三角フォルムの深鉢です。
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我が家のと同じ商品ですね
⑤ヨシュア工房
こちらも新しい窯元さんです。「ヨシュアブルー」といって、深海のように青いグラデーションが特徴です。とあるフランス料理店に訪れた際、食器が全てヨシュアでした! その時の写真を掲載します。最近ではドラマの中でも見かけます。
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「ヨシュアブルー」の美しさが、写真だとわからないのが残念。ぜひ実物を見て頂きたいです!
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⑤青芳窯
こちらは人形になります。森元青芳さんが作る「青芳人形」のファンは多く、我が家には雛人形のセットもあります。
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↓ 炎の里にて撮影。色々な作家さんの雛人形を取り揃えてありました。
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⑥atelier LUXE
平成24年7名の女性作家さんで結成された「とべりて」。そのお一人の窯元です。(ちなみに③のきよし窯の方もとべりてのお一人)
こちらは「新しい砥部焼」というに相応しい作品です。
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↓ 下の二つは優しい色合いのお花のシリーズ。以前、母へのプレゼントに買ったもの。写真フォルダから引っ張ってきました。アングルが悪くてすみません。
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このお茶碗にはちょっとしたエピソードがありまして……。
the砥部焼という作品が好きだった父の影響で、「白磁に藍色の模様」の食器が多かった我が実家。両親もまた長年割れない砥部焼の夫婦茶碗を愛用しておりました。しかし数年前、父が亡くなり、出棺の時、長年割れなかった砥部焼の茶碗を割る時が来ました。
夫婦茶碗が片割れになってしまった母は「このお茶碗でご飯を食べるのが寂しい」と言いました。
そこで、これまでの砥部焼とはガラリと雰囲気の違うこちらをプレゼントしたわけです。母はもともと可愛いものが好きなのです。
独りの食事は味気ない。食器くらいは可愛く明るくと、とても喜んでくれています。
まだまだあるけれど…まとめて紹介
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右:いつも使っていたこども茶碗
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写真だと大きさや形がわかり辛いですが、大皿やどんぶり鉢や大鉢やスープ碗など、色々あります。
手作りなので、窯元によってサイズも形も様々です。不思議な形のものもあり、どんな料理に合うか考えるのも楽しいです。写真の中には実母や義母から譲り受けたものもあります。
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結婚した年から毎年、年末に「次の年の干支」の置物を購入し、1年間玄関に飾った後「干支送り」をするようになりました。夫と毎年、年末帰省した際に買いに行くのがお決まりとなっていました。
結婚12周年、すべての干支を買い揃えた時、とても感慨深かったことを覚えています。12年間続けた年末の習慣がなくなる寂しさと、2巡目に突入する不思議な感覚。
今でも毎年、干支送りをするのは夫の仕事で、新しい年を迎え、変わらない日常を脈々と過ごしている。いつも身近に郷土の砥部焼がある暮らし。続く慣習と安寧を幸せに思う。
結婚後、夫の仕事柄、各地を転々として暮らした。愛媛から離れた地で暮らす寂しさは当然あった。そんな時、馴染みのある砥部焼は、私の寂しい心を和ませてくれた。所変われど、家の中には「郷土」が溢れていた。
ありがとう、砥部焼。
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伝統
長年、砥部焼を愛してきた両親や義両親。そこから譲り受けた「砥部焼」は今も現役で、そしてまた、私たちの子どもも普通に「砥部焼」がある生活を送っている。
きっと子どもが巣立つとき、今度は私が幾つかの砥部焼を譲り渡す時が来るのだろう。
***
もうすぐ春が来る。
春の砥部焼祭りが開催される。
「今度は何を買おうかな」
「また買うの?」
横で夫が苦笑いをする。そんなことを言いつつも、また一緒に砥部焼祭りへ向かうのだ。
「ん? 春の砥部焼祭りで『磁器婚夫婦募集』だって。応募してみる?」
と夫。インターネットで日程を調べていたようだ。
私達夫婦は今年ちょうど結婚20周年。
「磁器婚」だ。
……いや、それはちょっと勘弁してほしい。
ウキウキしている夫を横目に、
私は今日もお気に入りのカップで美味しいコーヒーを飲んでいる。
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本日も幸せなり
美・・・砥部焼。
これからもずっと、推し続けます。
【完】
【おまけ】
砥部町のとある飲食店。食器は全て砥部焼(ガラス製以外)。毎回違うのが楽しい。写真をまとめてみました。
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《砥部焼観光センター 炎の里》
入口には、砥部焼の原料となる「陶石」
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撮影のご協力ありがとうございました!
砥部&砥部焼 LOVE♡
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