『学校教育の役割、ゼロベースで検討を』 文科省・義務教育の在り方WG(第1回)
文部科学省がこのほど、『義務教育の在り方ワーキンググループ』の第1回目を開催しました。
この中で、
「学校の役割についてゼロベースで考える」
「『教育が今までと同じでいいのか』という観点から問い直す」
「『どういうことをすれば、学校が楽しく感じられるか』という視点からも、学校の役割を考える」
…などの必要性が指摘されました。
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WGでの検討事項は、大きく6つあります。
〈義務教育の意義〉
①子どもたちに必要な資質・能力と学校が果たす役割
②すべての子どもたちの可能性を引き出す学びの実現
〈学びの多様性〉
③個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話的で深い学びの具体化
④多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成
⑤学びにおけるオンライン活用
⑥学校教育になじめないでいる子どもに対する学びの保障
このうち第1回では
①子どもたちに必要な資質・能力と学校が果たす役割
②すべての子どもたちの可能性を引き出す学びの実現
について、議論されました。
現行の教育システム 抜本的改革の必要
委員からは、『現行の教育システムを抜本的に改革する必要がある』といった指摘が多く出ました。
"同質神話"から抜け出す
▷貞廣斎子委員(千葉大学教育学部教授)
「『皆と同じことを、同じように』という日本型教育システムが、従来は成功していた。
しかし、直近の不登校の児童生徒数が約20万人(2020年)に上ることを踏まえると、現在はその教育システムと子どもの生育プロセスとの間にミスマッチが起きている、ということ。
この現実を直視し、(学校が果たす役割について)ゼロベースで考えていく必要がある。
私たち大人も、”同質神話"からいかに抜けられるか、が問われる」
「自分の学びを自分で進める」指導を
▷堀田龍也委員( 東北大学大学院情報科学研究科教授、 東京学芸大学大学院教育学研究科教授)
「現代は人材流動性が高く、また経済的な見通しは必ずしも明るくない。
そんな社会において、『教育が今までと同じでいいのか』という観点から問い直す必要がある。
(テストなどの)点が取れた・取れない、で一喜一憂している段階ではない。
子どもたちが『自分の学びを自分で進めていく』といった指導が、増えるような教育課程を編成すべきではないか」
「楽しく感じられる」学校とは?
▷黒沢正明委員(東京都八王子市立高尾山学園校長)
「『不登校傾向にある子どもの実態調査』(日本財団、2018年)によると、中学生が『学校に行きたくない』理由のトップは『疲れる』。
でも『疲れる』は表面的な回答であって、学校に行きたくない"本当の理由"は『学びが苦手』『友達がいない』など別のところにあり、その上で『楽しく感じられない』から『行きたくない』のではないか。楽しく感じられたら、きっと学校に来ると思う。
だから『どういうことをすれば、学校が楽しく感じられるか』という視点からも、学校の役割を考えることが必要ではないか」
最後に、主査を務める奈須正裕・上智大学総合人間科学部教授が、個人的な経験を踏まえて次のように語り、議論を締めました。
「学校関係者に話を聞くと、『日本の学校はまだまだやれる』と仰る方が多い。
これは学校教育が、いろいろな側面でかなり難しい局面に来ている、ということを肌感覚で感じている人が多いことの裏返しだろう。
(現状の打破に向けて)どんな提案ができるか、がこのWGの課題だ」
次回WGでは、〈学びの多様性〉として
③個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を通じた主体的・対話的で深い学びの具体化
④多様性と包摂性に基づく学校文化の醸成
について議論される予定です。
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☆〈義務教育の在り方WG〉設置の背景☆
現在の公教育政策のキーワードは、【個別最適な学び】と【協働的な学び】。
2021年1月の中央教育審議会答申で、それらの一体的な充実を目指す方針が示されました。
この方針のもと
・学校を中心とする学びの在り方について、考え方を整理する
・ICTの活用を含めた、多様で柔軟な学びの姿を明確化する
ーーための場として、『義務教育の在り方WG』が設置されました。