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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#SF映画

パンデミックまで秒読み。だから監視。セットが主役のSF映画「アンドロメダ…」。

「ウエスト・サイド物語」と「サウンド・オブ・ミュージック」というミュージカル映画史上の1位2位を争うほどの傑作を監督したロバート・ワイズは、あらゆるジャンルに長けた才能を持っていた。 デビュー当初はホラー作家、それから西部劇、戦争映画、ボクシング、サスペンス、SFなど、ジャンルはお構いなしに何でも撮る。そして、どのジャンルでも決定的な名作を残している。 SFの代表作について、「地球の静止する日」を先日は取り上げた。 今回は、SF方面におけるもう一つの隠れた傑作「アンドロメ

地球人の宇宙人、醜いのはどっち?2つのSF映画「The Day the Earth Stood Still」

「地球が静止する日」は、ちょうど十数年前の2008年に日本で公開、興収28億円を上げたSF大作だ。 「マトリックス」「コンスタンティン」と、甘いフェイスとスタイリッシュなアクションがバズったキアヌ人気も、緩やかな下り坂に入った頃。そこにトドメを刺した気がしてならない。 予告編が良さげだったので、リアルタイムで観に行った悪夢が蘇る。 NYのセントラルパークに巨大な球体が出現。降り立った宇宙からの使者クラトゥが現れた。アメリカ政府は危機対策チームを発足。幼い義理の息子を育てる生

鉄人同士、気が済むまで殴り合え! 映画「ロボ・ジョックス」と「リアル・スティール」。

まだ、テレビが元気だった10ねんまえの話。 2004年から2005年の1年間だけ日テレで放映されていた「ワールド☆レコーズ」 ロボットNo.1決定戦 が好きだった。 ラジコン操作で動く手のひらサイズのロボットがK-1ルールで戦う格闘技戦。 ブラウン管の中で、捨て身で戦う小さなファイターたちに、魅せられた。 (その頃、ウチではK-1もPRIDEも「残酷だから」と視聴厳禁だった。「ワールド⭐︎レコーズ」だけはOKだったのだ。) 思えば、ゼロ年代前半の日本では、ちょっとしたロボッ

アルマゲドンな東宝特撮「妖星ゴラス」_ 人事を尽くし天命を待つ、のみ。

この驚異に対して何もかも一致団結できないまま、ただぼんやりとした不安の中で日が過ぎている、今日この頃。 「何もかも予測できない、未知領域にある。」 という言い分はごもっともだが、まずは「人事を尽くして天命を待つ」べきではないだろうか。 昭和東宝特撮は(もう何遍も、言い尽くされていることだが)「現実には、ほぼあり得ない事態」に科学者・一般市民・政治家が連帯して立ち向かう勇姿を描き出す。 1962年公開の本作のテーマは、ずばり、ディープ・インパクトだ。 人事を尽くす。198

まるで夢のない宇宙旅行。それが「アド・アストラ」。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が巷を賑わすのと同じ頃、ひっそりと公開され、ひっそりと公開終了したブラピ主演のSF映画だ。 これはガンダムでいう「宇宙世紀」。人類が地球上での戦いを宇宙にも持ち込んでいる時代。だから、宇宙を旅するワクワク、ドキドキを期待してはいけない。SF映画の本家ハリウッドが、醒めた目線で、宇宙への夢を語りなおす。 近い未来。ロイは地球外知的生命体の探求に人生を捧げた父を見て育ち、自身も同じ道を選ぶ。しかし、その父は探索に旅立ってから16

絶叫する。 自分だけでも眠らないように。SF映画「ソイレント・グリーン」。

2022年、化学物質によって士壌や水、大気に至っては空が黄緑にかすむほど汚染され、温暖化も悪化し「人間以外の動植物が殆ど生育できない」世界が達成。 人類は衰退しました。 1973年のアメリカ映画。だからこれは1973年から見た近未来。 なのに、ちっとも古臭くなく、ぞわりとさせられてしまうのは、 誰もがそれと気づかないまま粛々と近づく破滅的な未来 の描写だろう。 そして胸を打つのは、 主人公が「こんな未来はいやだ!」と物申し絶叫する姿だろう。 近未来、誰もが眠りに就いてい