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地球人の宇宙人、醜いのはどっち?2つのSF映画「The Day the Earth Stood Still」
「地球が静止する日」は、ちょうど十数年前の2008年に日本で公開、興収28億円を上げたSF大作だ。
「マトリックス」「コンスタンティン」と、甘いフェイスとスタイリッシュなアクションがバズったキアヌ人気も、緩やかな下り坂に入った頃。そこにトドメを刺した気がしてならない。
予告編が良さげだったので、リアルタイムで観に行った悪夢が蘇る。
NYのセントラルパークに巨大な球体が出現。降り立った宇宙からの使者クラトゥが現れた。アメリカ政府は危機対策チームを発足。幼い義理の息子を育てる生物学者ヘレンも召集されるが、地球静止へのカウントダウンは始まっていた! 厳重な警備網をいとも簡単に破って街へ出たクラトゥは、ヘレンとその息子に接触。二人は衝撃の事実を知る。クラトゥは宇宙から人類へ向けられた最終警告だったのだ。クラトゥの目的は地球を救うこと。そのために彼が成し遂げようとしている衝撃の計画とは?
キャスト&スタッフ
クラトゥ…キアヌ・リーブス(森川智之)
ヘレン…ジェニファー・コネリー(八十川真由野)
ジェイコブ…ジェイデン・スミス(小林 翼)
レジーナ…キャシー・ベイツ(磯辺万沙子)
監督:スコット・デリクソン
脚本:デイビッド・スカルパ
製作:アーウィン・ストフ/グレゴリー・グッドマン/ポール・ハリス・ボードマン
●字幕翻訳:林 完治 ●吹替翻訳:松崎広幸
20世期スタジオ 公式サイトから引用
キアヌ演じるエイリアンだけは、正解。髭をモジャモジャに生やす前、まだ「マトリックス」のネオのイメージが冷め切らない頃。
「もし、ネオが敵として襲いかかってきたら?」
あらゆるものを無力化するだろう。
終始無表情の彼には、それだけの説得力があった。
エイリアンと共に地球に降りた巨大人型ロボットも、スミス同様不気味だった。
これが、微小な昆虫型の生物に変化し、大群となって飛翔し、地上のあらゆるものを驚異的な速度で溶かしていく。
世界を滅ぼす、人智を超える力が降り立っていた。いま見返しても、これらの場面は、アリやハチの大群に襲われたような恐怖感がある。
以上、エイリアンサイドについては非常に恐ろしかった、しかし、この脅威を退けるためのドラマが弱かった。
母が子を抱きしめる。それを観て宇宙人は愛を知る。だから攻撃をやめる。
「なぜ改心したのか」ドラマが浅かったせいで、盛り上げどころがひどく淡白。
「こいつどうやって倒すんだよ!」とさんざ怖がらせておきながら、
「結局、愛は勝つかい!」と最後の最後で、さめた印象。
観終わった後のため息と、今は亡きワーナー・マイカル・シネマズ高岡の思い出と共に、高校時代の1ページを飾った、忘れようにも忘れられない作品だ。
さて、「地球が静止する日」は1951年公開「地球の静止する日」のリメイクである。監督はロバート・ワイズ。
アメリカの首都ワシントンD.C.に銀色の円盤が着陸し、人間の姿で奇妙な服を着た男が現れた。彼の名はクラトゥ。自分は宇宙人であり、地球人には危害を加えないと語る。彼は、地球がそのもてる科学を危険な方向に発展させ、宇宙にとって脅威となることのないよう警告しにきたと語る。
ここまでの流れは、だいたい「地球が静止する日」と同じ。
しかしここからが異なる:クラトゥの意図は誤解され、逮捕命令が出されるのだ。それでもゴートを動かさず、あくまで話し合いでクラトゥは挑もうとする。割とすぐ力で訴えでたキアヌのそれとは態度が、逆だ。
平坦でシャープなゴートのイメージ以上に印象的なのは、愛が勝つ単純な構図がないということだ。清廉潔白な宇宙人を、悪しき地球人どもが追い回す構図。
ジャーナリズムの良心のカケラもない新聞記者は「新聞に自分の顔を載せたい!」と宇宙人の所在を軍に報告する。
「他のやつなど知ったことか!」警官や軍は魔女狩りに血眼になる。
そして、これら、地球人の悪意のために、クラトゥは一度死ぬ羽目になる。
それでもクラトゥは地球を見捨てない。最後、復活した彼は全米に対して大演説を打つ。「法はどのように運用すべきか。」今の時代に突き刺さるメッセージ。
これには悪しき地球人どもも直立不動。 以下、長いが引用してみよう。
I am leaving soon, and you will forgive me if I speak bluntly. The universe grows smaller every day, and the threat of aggression by any group, anywhere, can no longer be tolerated. There must be security for all, or no one is secure. Now, this does not mean giving up any freedom, except the freedom to act irresponsibly. Your ancestors knew this when they made laws to govern themselves and hired policemen to enforce them. We, of the other planets, have long accepted this principle. We have an organization for the mutual protection of all planets and for the complete elimination of aggression. The test of any such higher authority is, of course, the police force that supports it. For our policemen, we created a race of robots. Their function is to patrol the planets in spaceships like this one and preserve the peace. In matters of aggression, we have given them absolute power over us. This power cannot be revoked. At the first sign of violence, they act automatically against the aggressor. The penalty for provoking their action is too terrible to risk. The result is, we live in peace, without arms or armies, secure in the knowledge that we are free from aggression and war. Free to pursue more... profitable enterprises. Now, we do not pretend to have achieved perfection, but we do have a system, and it works. I came here to give you these facts. It is no concern of ours how you run your own planet, but if you threaten to extend your violence, this Earth of yours will be reduced to a burned-out cinder. Your choice is simple: join us and live in peace, or pursue your present course and face obliteration. We shall be waiting for your answer. The decision rests with you.
IMDB 公式サイトから引用
現在、互いに争いをやめられない全人類に突き刺さる言葉だ。
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