良い行動を引き出してあげる #112 行動分析学
人は一人で成せることには限界があります。
そのため、より大きな目的を実現するには、複数の人たちと協力し合う必要があります。
その意味でも、人の様々な行動が、どの様な環境条件下で学習されるのかを分析し、新しい適応の仕方を研究する行動分析学が注目されています。
これまでにも、企業だけではなく、学校、スポーツ、医療、福祉など様々な分野においても活用されている理論でもあります。
行動分析学で大切な概念の一つは好子(こうし)と呼ばれるものです。
好子とは、前え向きな行動の直後に出現することで、その行動を増加(強化)させる機能を持つものです。
例えば、人は良い行動をした直後に、それを褒められると、その行動を繰り返す傾向が高まると言われています。
逆に、直ぐに褒めてあげないと、その行動を止めてしまう可能性が高まります。
また、注意しなければならないのは、誰でも褒められたら、行動を繰り返すとは限らないことです。
中には、褒められることで、天狗になり、逆に行動を止めてしまう人もいます。
逆に叱られることで、反骨心が芽生え、良い行動につながる人もします。
つまり、褒めて伸びるタイプと叱られて伸びるタイプの人がいると言うことです。
対して、嫌子(けんし)と呼ばれるものがあります。
嫌子とは、後ろ向きな行動の直後に出現することで、その行動を減少(弱化)させる機能を持つものです。
例えば、悪い行動をしたら直ぐに叱ることで、その行動を止める傾向が高まります。
当然、叱らなければ、その行動を繰り返してしまう可能性が高まります。
そして、誰でも叱りさえすれば、その行動を抑制できるとは限らないのです。
例えば、叱られることで、反発して行動がエスカレートしてしまうケースもあります。
更に叱られることで萎縮してしまい、良い行動までもを止めてしまう場合もあります。
行動分析学では、行動の直前から直後の状況の変化によって、行動が繰り返されるようになることを強化、抑制されるようになることを弱化といいます。
そして、そこから導かされた、4つのパターンが基本的な捉え方となります。
「①好子の出現」 → 行動の強化(繰り返される)
「②好子の消失」 → 行動の弱化(やめ
「③嫌子の出現」 → 行動の弱化(やめる)
「④嫌子の消失」 → 行動の強化(繰り返される)
行動を強化または弱化させる好子や嫌子の「出現」と「消失」の組み合わせで、行動の原因を明らかにして行きます。
ここから、各分野において、対象となる方々の行動の原因を明らかにして、対応策に活用されている訳です。
例えば、前向きな行動を取った人の行動を直ぐに褒めたとします。
すると「①好子の出現」により、一般的には、その前向きな行動を繰り返すことになります。
しかし、すべてが前向きな行動でなかったために、一部の後ろ向きの行動を否定したとします。
すると「③嫌子の出現」により、場合によっては、前向きな行動まで止めてしまう可能性もあります。
逆に、後ろ向きな行動を取った人の行動を直ぐに叱ったとします。
すると「③嫌子の出現」により、すべての行動を止めようとします。
ところが、僅かであれ前向きな部分があったとします。
しかし、これでは、「②好子の消失」を促してしまいます。
逆に、僅かであれ、前向きな行動を褒めてあげると「①好子の出現」によって、後ろ向きな行動まで改善される場合もあります。
成果を出したことが、その後の行動に必ずしも良い影響が出るとも限りません。
逆に失敗したことが、その後の行動に良い影響をもたらすこともあり得えます。
如何に「①好子の出現」と「④嫌子の消去」に導くかが重要となります。
企業であれば、マネジメントを司るのはマネジャーです。
その場合、管掌するスタッフたちから成果を高めるための行動を引き出さなければなりません。
それも、指示したことだけではなく、能動的に主体性を持った行動でなければなりません。
更にそれが、一過性ではなく、徹底して継続されたものである必要があります。
また、マネジャーではないにしても、誰かを指導する立場にある人も同様かと思います。
例えば、何らかの社内のルールがあったとします。
しかし、全員が、そのルールを守れるとは限りません。
その場合のチェック方法の例をご紹介します。
①リマインド型:行動する前・期限が来るまえにチェックする。
②アフター型:行動した後・期限が過ぎてからチェックする。
③累積型:結果を統計として集約しながら、定期的にチェックする。
決して一律ではなく、相手の性格などを加味して、①、②、③のチェック法を当てはめて対応してみてはどうかと思います。
どちらにしても、誰にでも万能に通用するものはないことを覚悟して接して行くことが大切になってくるのかと思います。
その方の未来のために好子の出現と嫌子の消去を引き出してあげたいところです。
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