やせいのうま

ロンドンでの日々を中心に、ちょっと笑える短い話をお届けします!

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マガジン

  • ロンドン暮らし挑戦記

    2022年12月より渡英。現在大学院生の夫、5歳の娘と共にロンドン在住。 海外生活に慣れ、楽しむために、ただひたすら前進する「やせいのうま」の挑戦記。 毎週更新予定。 海外生活やイギリスに興味がある方、何かに挑戦したい方、何となくモヤモヤしてる方に向けて、 読めばスッキリ! 今までとは違う視点を発見して頂けるエッセイをお届けします。

最近の記事

ショートエッセイ集 「踊るロンドン奮闘記」

ロンドンで抹茶ケーキを焼いてます イギリスのお菓子は甘い。日本人には甘すぎる。 イギリスに住みはじめてから、砂糖の激しい主張を感じる市販品に辟易して、時々焼き菓子を作るようになった。 最近家族や友人に好評だったのは抹茶ケーキだ。故郷の福岡で買い込んでおいた抹茶を使い、友人の餞別として焼いた。 インドネシア人のメイとは友人の紹介で出会い、その後互いの家がごく近いこと、二人とも散歩好きなことがわかってよく一緒に出かけるようになった。だがその矢先、急にパリへ引っ越すことに

    • パンとオカンとSDGs

      昔テレビで、「大阪のおかん達は常に明日のパンを気にしている」という話が取り上げられていた。 「明日のパン」とはつまり、翌日の朝食に食べるパンのこと。 大阪のお母さん達はいつも、パンの買い置きが切れていないか気にしているのだという。 関西圏はパン食文化が強いと聞くので、そのためもあるかもしれない。 何を隠そう私も、「明日のパン」がいつも頭の片隅にある。 大阪のおかん達と同じく、「明日のパン」が買ってあることに安心感をおぼえる。また買い置きがないと、鍵を置き忘れたかのよ

      • 食わず嫌いが旅するパリ①CHANEL本店で知ったエレガンスの正体

        のっけから愛想のない書き出しで申し訳ないが、パリには興味がなかった。 「Paris大好き♡」 という人や雑誌の記事を目にするほどに、ひねくれ者の私はかえって敬遠してきた。 ヨーロッパ旅行といえばParis、おしゃれな街といえばParis。なんとか in Paris。 猫も杓子もパリ、Paris、って、なんて軽率な。 「パリがなんぼのもんよ?」 と、謎の反発心を抱いていた。 だが、ものの弾みでロンドンに住むことになってパリは突然近くなる。 ユーロスター(新幹線の

        • 雨が連れてきたアンティーク食器との出会い

          噂に違わず、ロンドンの天気は変わりやすい。 一年近く住んで少しは慣れたつもりでも、予報外の雨に遭って戸惑うこともしばしばだ。 しかし、時にはその雨が思わぬ出会いをもたらしてくれることもある。 隣町のHampstead(ハムステッド)は高級住宅街で、それにふさわしい洗練された店々が軒を連ねている。 そんなエリアにも住民たちによる質素なコミュニティセンターがあるのは、どこか素朴な香りが残るロンドンらしい。 狭い間口に似合わず奥行きのあるそのスペースでは、月に二度アンティ

        ショートエッセイ集 「踊るロンドン奮闘記」

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        • ロンドン暮らし挑戦記
          8本

        記事

          パンツ派の私が、ロンドンでBurberry のミニスカートを買った理由

          娘が生まれてから、ほとんどスカートを履いていなかった。 元々パンツ派だったのだが、子供との生活が始まると、スカートを履く意味や目的が完全に消え失せてしまっていた。 持っているのは、コロナ禍の暇つぶしに古いジーンズを作り変えたマキシ丈のデニムスカートだけ。 アップリケをたくさんくっつけたものでわりと評判は良かったけれど、これは足首さえ見えない。 パンツスタイル(というかデニムやスウェットばかり)の生活が数年続いたのち、ロンドンで買ったのはまさかのミニスカートだった。 そん

          パンツ派の私が、ロンドンでBurberry のミニスカートを買った理由

          来年のこともわからないまま、ロンドンで踊る

          来年どこに住んでいるのか、まだわからない。 夫は今年大学院へ通っているが、来年は会社に戻る。このままロンドン勤務となるか、あるいはアメリカで働く可能性もあるらしい。 「確率は五分五分だ」 と、夫はいう。 ここロンドンは移民や外国人が多いところで、人の出入りも激しいらしい。 私たちのように長くて数年程度の在留者もいれば、国を出て半永久的に住み着く人もいる。 引っ越してくる理由も様々で、仕事を求めてくる人、留学生、あるいは単にロンドンが好きだから、と答えた人もいた。

          来年のこともわからないまま、ロンドンで踊る

          外国が怖かった私が、イギリスが大好きになるまで

          良い年をして恥ずかしい話だが、イギリスに来る前は外国に住むのが恐かった。 日本からみたヨソの国は、遠くて、恐ろしい場所に思えた。 だって日本で流れていたニュースでは、レイシズムがひどくなっているとか、外国人に冷たいとかいうではないか。 去年の十二月、寒波に見舞われた雪のロンドンに着いた私が持っていたのは、うろ覚えの文化人類学の知識くらいだった。 華々しいビジネススクールやロースクールの影に隠れてひっそりと、探検家か隠者のような先生と学生が集う学部に通っていたのは、もう十年

          外国が怖かった私が、イギリスが大好きになるまで

          イギリスで抹茶ケーキを焼いてます

          イギリスのお菓子は甘い。日本人には甘すぎると思う。 なかなか好みの市販品に出会えず、またバターや砂糖が日本より安く種類も豊富なこともあって、時々焼き菓子を作るようになった。といっても難しいものは作れない。とりあえずパウンドケーキの型を買い、味を色々と変えてみる。 最近家族や友人に好評だったのは、抹茶ケーキだ。故郷の福岡で買い込んでおいた抹茶を使った。急に引っ越すことになったインドネシア人の友人の餞別として焼いたのだった。メイという、近所に住む散歩友達である。彼女の娘のボーイ

          イギリスで抹茶ケーキを焼いてます

          ロンドンの大きな木の下で、あなたなら何をしますか?

          ロンドンの北側に住んでいる。大きな公園の多いところで、趣味の散歩には不自由しない。ただ歩いて行くにはどこの公園も少しだけ遠い(特に5歳の娘を連れていく場合には)。それで、赤い路線バスに乗る。ロンドン名物にもなっている、どこか古めかしいあのバスだ。うちの北側に2つ、南に1つ大きな公園があり、いずれもバスなら数駅で着く。 公園には平日でもけっこう人がいて、ピクニックをしたり(イギリスでは本当にこれが盛ん)、子供を遊具で遊ばせたり、あるいはベンチに座って本を読んでいたりする。

          ロンドンの大きな木の下で、あなたなら何をしますか?

          胃袋の反乱

          イギリス、ロンドンに移り住んで今日で一ヶ月が経った。一度も行ったことの無かった島国は、予想していたのと少し違っていた。 前評判の悪かった食べ物は、多民族社会のためか種類豊富で美味しい。到着してすぐに雪が降って焦ったが、これは異常気象とのことでそれ以降は故郷の福岡よりも暖かい。英語は聞き取れるものの、思った以上に言葉が出てこない。人は礼儀正しく親切で、特に子供には非常な愛情表現を示して何かと親切にしてくれる。 拙い自分の英語にもどかしい思いをしたり、広大なスーパーにあふれる各

          几帳面な犬とその友達の話

          「几帳面な犬タイプ」と友達に思われて、喜ぶ大学生がいるだろうか? 若い頃の苦い思い出を、三十路も半ばに差し掛かったある年の梅雨入り前に私は思い出した。在宅ワーク中の昼休みのことだった。 今も変わっていないのかわからないが、私が大学生の頃は、 「就職活動の基本は自己分析」 と言われていた。どの就活How to 本にも、そう書かれていたと思う。 How to 本によれば、自己分析の手段は種々あった。その中の一つに、 「他己分析」 なるものがあった。 要は、自分を知

          几帳面な犬とその友達の話

          「人生で一番感銘を受けた本は?」

           もう何年も会っていない友達からたった一言、こんなメッセージが届いた。  いつも意表を突くようなことを言う子だから、久しぶりの前置きが無くても驚かなかったが、 「何で突然そんなことを聞くのだろう」 とためらいながら、私は思いつくままに返事を書いた。以下、実際のメッセージに基づいているので敬称略。 「オースティンと田辺聖子、カズオ・イシグロと松本清張は好きだけど、感銘を受けたというのとは違う気がする」 「『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(ジュノ・ディアス著、新潮ク

          「人生で一番感銘を受けた本は?」

          ◯映画感想 「女の勲章」

          1961年 監督・吉村公三郎 映画脚本・新藤兼人  主役は京マチ子さま。相手役は田宮二郎さま、助演に大人の女性らしくなってきた頃の若尾文子さま、熟年ダンディ森雅之さま、まだ娘らしい中村珠緒さんなど、妖しくも危うい大人の色気と狂気がちらつく怪作だと思いました。  原作は山崎豊子先生で、テーマは 「女性の出世欲と愛欲のせめぎ合い」というところかなと理解しましたが、内容はけっこう女性の功名心に批判的で、時代のせいもあるかな、と思いました(ちなみに松嶋菜々子さん主演でリバイバル

          ◯映画感想 「女の勲章」

          ◯映画感想 「噂の女」

          「噂の女」 1954年、84分、溝口健二監督  !ネタバレ注意です!   大好きな溝口作品。水商売の女性の退廃美や葛藤、哀愁を描き尽くした監督。本作は主演の親娘役に田中絹代さまと久我美子さまという正統派・清純派女優を迎え、祇園の置屋を舞台にしながらどこか爽やかな現代の風を吹かせた、やや趣向の変わった作品。 起 東京の芸大に通っていた娘を京都に連れ帰った置屋の女将。娘は婚約者に置屋の娘であることを理由に婚約破棄され、自殺未遂を起こした。 承① 置屋稼業に反発しながらも、

          ◯映画感想 「噂の女」

          ◯映画感想◯ 「二階の他人」

          「二階の他人」  1961年、山田洋次監督、56分  今回は映画の感想です。ネタバレ注意です。   家を建てた若夫婦が、二階の部屋を貸してローン返済の足しにしようと計画するが、身勝手な間借り人たちに振り回されるというお話。  内容を起承転結で要約すると、ざっくり以下のような感じです。 起 家主の若夫婦は、間借り人が家賃を滞納しているので督促に苦心している。事情を聞くと、間借り人夫婦の夫は学生運動に参加した過去のために就職できないでいた。家主の夫は倉庫看守の仕事を斡旋

          ◯映画感想◯ 「二階の他人」

          とうがらしの越冬

           とうがらしを育てている。観賞用とうがらしは基本的に日本では冬を越せないので一年草として扱われていると聞いていたが、私のとうがらしは前の冬を乗り越え、今季はさらに沢山の実をつけてくれた。  七色とうがらしと呼ばれる種類で、丸っこい実が最初は紫が混じったクリーム色に実り、次第にオレンジから赤へと変化する。実った順に少しずつずれて変色するので、暖色系のグラデーションになってなかなか見栄えがする植物だ。  日本語では「唐辛子」と書くが、原産は中国ではなく南米だそうだ。沢山の野生種

          とうがらしの越冬