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◯映画感想◯ 「二階の他人」

「二階の他人」

 1961年、山田洋次監督、56分

 今回は映画の感想です。ネタバレ注意です。

  家を建てた若夫婦が、二階の部屋を貸してローン返済の足しにしようと計画するが、身勝手な間借り人たちに振り回されるというお話。

 内容を起承転結で要約すると、ざっくり以下のような感じです。

起 家主の若夫婦は、間借り人が家賃を滞納しているので督促に苦心している。事情を聞くと、間借り人夫婦の夫は学生運動に参加した過去のために就職できないでいた。家主の夫は倉庫看守の仕事を斡旋してやる。

承① 間借り人は仕事を紹介してもらったのに働かず、転がり込んできた家主の母親と共に昼間から花札に興じる。ついに間借り人を追い出す決意をする家主夫婦。結局、間借り人は家賃不払いの常習犯だった。

承② 新しい間借り人は羽振りの良い夫婦で、風呂を付ける金を出してくれた。金回りの良さそうな間借り人夫婦に嫉妬しつつ、恩恵に預かる家主夫婦。

転 間借り人夫婦が会社の金を持って逃げている者たちであることが新聞の一面で報じられる。地元のやくざ者に目をつけられた妻を救うため、夫は会社の金に手を付けたのだった。
 家主夫婦は出してもらった風呂の工事代の返済を気にしながら、間借り人夫婦がクリスマスに散財して馬鹿騒ぎをする様子を見て、心中するのではないかと案じる。

結 結局、クリスマスの後間借り人夫婦は自首した。間借り人夫婦が飼っていた鳥を逃がした後の空の鳥籠に、

「風呂の金については警察で黙っている。親切に感謝している」

という旨の手紙が結ばれているのを家主夫婦は見つける。
 風呂の工事代を少しずつ貯め、間借り人夫婦が出所した時に返してやろうと話し合う夫婦。

 損ばかりした夫婦だが、気持ちは前向きだった。

 山田洋次初監督作品とのこと、1時間弱の短い映画でもあり、シンプルなストーリーですね。

 個人的には、家賃を滞納する間借り人夫婦の肩を持ち、

「子供の頃はこんな冷たい子じゃなかった」

と、反対に自分の息子を責めるお母さんのキャラクターが面白かったです。旧時代の義理人情をお母さんに投影していると思われますが、このお母さん、良妻賢母のイメージではない。

 やくざな趣味とされていた花札が大好きで、嫁と喧嘩して家出してきたのも、孫に花札を教えたから。どこかにモデルがいたんでしょうか、個性的で生き生きとしたキャラクターでした。キャストは高橋とよさん。小津映画では料理屋の女将役で有名な方なのですね。
 
 私の母方の実家は、北九州市若松区という所で、そこは同地出身の火野葦平の任侠小説「花と龍」で有名な土地です。そのせいか私の祖母も花札を「お花」と呼んで愛好しており、家族旅行に行くと、母と祖母は深夜まで花札に興じていました。
 そのせいか、映画のおばあさんがとても気に入ってしまいました。

 全体的にちょっと道徳の教科書的な、さすが山田洋次監督という感じの映画でしたが、

跳ねっ返りのおばあさんや自己中心的な間借り人などのキャラクターはかえって引き立っていました。

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