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詩集 幻人録

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#ショートショート

晴れ時々ハンカチ

晴れ時々ハンカチ

快晴の十五時
お出掛け中の雲は彼方の上空
みかん畑の色彩で
私の目のなか燃える様

もぎったみかんは卵の様に
そおっと籠に置き入れる

橙 群青 深緑

私がいるのはそんな世界

鼻を通った風の香は
揺さぶる私をピンとさせる
柑橘のそういうとこが好きだ

見上げた彼方の群青に
ヒラりと降っては落ちてくる

一枚 二枚と数えていけば
どんどん増える百のハンカチ

みかん畑の橙が
ハンカチ色の純白に

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水平線

水平線

潮騒を五月蝿く感じたら
私が私じゃない合図

可憐で繊細な波粒の欠片が
私の傷口に刺さっているの

カモメに笑われたら
私の胸中にある海の水量が
溢れてしまう合図

気高いカモメの群れさえも
敵だと認識してるみたい

そんな私は私じゃないから
ここでのお話は内緒にしてね

海はいつでも無垢で綺麗に問いかけてくる

あどけない水平線からこちらへ

灼球

灼球

癇癪起こした太陽
燃えたのは
心構えのない白球

ひょろっと好天に打ち上がる
ぽつんと回転 
青に白
見上げた熊の外野手は
大きな左手をガブリと開いた

瞬間は空白のページ

手繰り寄せたのは目は眩む閃光
太陽炉に灼かれた両目
視界は黄色いインクに染まった
灼球は何食わぬ表情で
矢継ぎ早に向こうの芝と仲良く遊ぶ

歓声は落胆に
落胆は歓声に

熊は転がり
ヌクヌク遠ざかる灼球を目指した
川上で狩を

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歩鳥

歩鳥

駆けない鳥は空を歩いた

風をきっての滑空は

もう何年もしていない

小さな森の上をぐるぐる

あぶくを吹いて落下してから

鳥は空を歩くだけ

遠い街にはいけなくなった

同じ景色の同じ夕時

大きな夕陽が燃えている

寒さが始まり

夕陽の暖をとりたいが

あんな遠くは飛ばなきゃ行けない

牛歩で空を歩いたら

森の端では花が枯れ

また咲く準備がよく見える

鳥は両羽で行ける程の

小さな

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行間に住む

行間に住む

私は行間に住んでいる
悲しい言葉の温かい物語
ここにいたら
だれにも声はかけられない

さようならと
ありがとうの
間に囲いを作っても

泪で私は見つからない
悲しい言葉や
美しい景色に

皆の目は行き
私の上は目線が通過するばかり

いまはこれでいい

ここで休んでいたい

真っ赤な林檎のように艶めき
激ってきたらここをでる

その時は

どうか私を読んでほしい
心を熟す
丸い林檎をあげるから

おじゃがのカリーうどん

おじゃがのカリーうどん

老廃物が体に詰まる

間隔を置いてズドッと荷を背負う

ただいまって

帰ると

おかえりって声の後ろで

うどんが煮込まれる

昨日のカレーのあまりもん

とろっとしたカリーうどん

お揚げさんよ
長葱さんよ

ありがとう

これが美味いんだよな

野菜の残ったカリーうどん

ずるずる

はふはふ

ほっくほく

ずるほく

じゅるるる

ほっくずる

ごくごくごくごく

老廃物を流しだせ

東京sky magic

東京sky magic

ダイソンにまたがった魔女は

夜空を優雅に駆ける

乗り心地は快適で

スピード感もいい

東京タワーを斜め上から見下ろした後に

赤坂の夜景を目に焼きつけた

高級ホテルの上の方あるラウンジの窓には

ゆっくりとした時間が流れている

魔女はそれに感化されスピードを落とした

Bluetoothイヤフォンから流れるユーミン

新しい東京からエモーショナルを引き出している

夜空を駆ける魔女が

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水平線まで行かなくたって

水平線まで行かなくたって

白い甲板には半袖を捲り上げたのあなたが立っている

揺らいだら危ないよ

と僕が言うと

小心者の貝殻さんって
白い歯を見せては僕の顔に微笑み
睨んだフリをした

勝手によそ様のヨットに乗ってはいけないよ

と言うと
臆病者の貝殻さんって
僕に呟き誰もいない沖を眺めていた

長くて少し茶色い髪が
時間の流れが一日のなかで最も穏やかな
昼食明けの時間の隙間で太陽と戯れている

部屋のなかより明るい髪

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虚言の城

虚言の城

ひとが通った足跡などない

堀のまわりは草の海

猪だって転んでしまう
勝手にできた草結び

私は遠くで眺めてる

街の外れにある古城

外壁は蔦の遊び場で
屋根にはトンビの巣がみえる

ブロック塀の洋館は
窓の格子でだんまり静か

あくる日ふと来た旅人が

城の在処を聞いてきた

なんともわざわざ遠縁の西の街から城を観に来た

私はお初の旅人に

あんたは盲目なんだかな

街に足さえ着いていれば

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鼠

鼠がはしる
道の外れで

鼠がはしる
朝露滑らず

鼠がはしる
私の脚横大威張り

鼠がはしる
ガタガタ遊園

鼠がはしる
今日のスタート 笛が鳴る

鼠がはしる
君とは違って 私は布団へ

鼠がはしる
酔いどれに蹴り

鼠がはしる
ぴぴぴぴぴ

鼠がはしる
暑さの起きる その前に

鼠がはしる
鈍い眼は銀色カラスに気づかれない

鼠がはしる
人が群がるの以前の都会も

鼠がはしる
君が溢れる 都

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私とわたし

私とわたし

子供の頃の小さなわたし

不思議そうにこっちをみてる

田んぼの間を駆けずりまわって

にたにた笑って泥んこまみれ

膝を抱えた私をみると

笑みを隠して口を開いた

だいじょうぶ?

小さいわたしがこっちをうかがう

私はその幼く無垢でガラス玉の様な瞳を

直視するのが痛くて怖くて

小さいわたしに

あっちに行って

こっちを見ないで

会いたくないから
どっかに消えて

そう言っては

ぎゅ

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遠炎

遠炎

遠くで誰かが想うのは

遠くに暮らす私の心情

庭に咲いた小さな花に水を垂らす様に

窺い知れない遠里の花に
水を差すのは

巨人の長腕が必要物資

残念ながらに巨人は幽霊 夢の化身
触れられないから当てにはしちゃ駄目

屈強な花は雨を啜り
泥だらけの花弁でも
背骨の茎は曲がらないのだろう

そんな花だとしても尚
たまの便箋一通なんかじゃ
不安の球はハートのなかで静かに跳ねる

病と契約してないも

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狭い部屋

狭い部屋

キリがないほどに

私の狭い部屋に生える草は

刈っても抜いても

育まれる

それは私の狭い部屋が

終わった後の地球の文明の祖の様で

私だけ生存してしまった世界線の様に思える

私の狭い部屋には雨も降り

その度に私は傘をさし

びじゃびじゃになった草の葉を

急いで引っこ抜いていた

そんで顔を出した木の床を

雑巾でぞすぞすと拭き

疲れた頃にはまた草が育ちだす

ある日

目を覚ました

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ナチュラリーは嘘をつく

色のあるパスタをたべて

風に舞うファッションを纏う

波の揺らぎを尊く見つめ

友との会話はスーパーボール

私にとっては悪くはないライフも

あなたにとっては

谷の底かも知れないワンタイム

人の苦は

身体が違うとDo not know

他人なんざ悲観なフェイスをわざわざ見せない

もがく脚は水中だけの白鳥さ

悟りの悪い私にBAD

オー シット

あなたの痛みが見えないままで

無邪

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