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#創作大賞2023
松に蟻
松の木の影に沿
蟻が歩いている
松の木の影が無くなると
蟻はぐるりぐるりと回ってみせた
それだもんで私は
松の木の一部になった
蟻は私の身体の影枝を
沿って歩き出した
私は幸福感に満ち
松の木のふりをした
何処へ向かうか蟻んこよ
そんなもんは私には関係のないこと
晴れ渡る午後の
日陰の話
臆病に
皆が寝静まった刻
私は物語を書くのです
悲哀の話
これが私の全てだとしたならば
私は怖くて
世に出せない
否定的構文に刺されては
命を削られ剥がされます
淀んだ川の隅っこで
光を焚いて書くのです
水面の音が生きていて
私を包み込んだなら
私はひとりじゃないと知るのです
あゝ心の浄化場よ
魂の洗い場よ
私に心地よい布団を用意しておくれ
灰
空飛ぶ愛が燃えました
燃えたら灰になりました
そのまま散っておやすみなさい
私の心はいつぞやの
二人で濡れた帰り道
びしゃびしゃになり笑ったことがらを
絶え間なく繰り返しております
膝を擦りむく様に
血が出ては化膿し跡に残る
私は身体を揺すっては
大きくなるための準備をします
神経痛だと騙しては
涙を膝の傷に塗ります
これが生きると言うことなのでしょうか