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応募作品

30
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#物語

蛇にキス③

蛇にキス③

お酒を飲みすぎてしまったのだろうか。気づいたら薄暗い部屋の中。見慣れているような全く知らないような。ここはどこだろう。・・・あれ?

隣にはポールダンスをしていた彼女が座っていた。上から不敵な笑みで僕の顔を覗き込んでいる。
「うわ!」
僕は、思わず跳ね起きて彼女を正面からまじまじと見つめた。
月の光に照らされ、発光するうなじ。顎下で切りそろえられた黒髪。微笑みをたたえる血が透けたように真っ赤なくち

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蛇にキス②

蛇にキス②

恐る恐る扉を開けてみた。薄暗い廊下が続いて、奥からぼんやりとした光と、何やら賑やかな音楽が漏れ出している。扉のわりに中は意外と広いらしい。
「へっぴり腰しとらんで早よ進みィや。怪しい店とかちゃうから。」
とんと背中を押されて恐る恐る歩き出した。どんどん光と音が近づいてくる。行ったことはないが、クラブのようなところのようだ。
突き当りを曲がると、そこには嘘みたいに人でにぎわっていた。
「いらっしゃ~

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蛇にキス①

蛇にキス①

冴えない毎日。灰色の日々。
僕の人生、一言でいうとそんな感じ。受験は失敗し、滑り止めの大学にやっと入った。就職でも好きでもない仕事に就いた。会社行って寝て会社行って・・・。同じことの繰り返し。つまらない。彼女もいない。親にも孫の顔を見るのは諦められている。こんな状況なのに動き出せない自分のことも嫌だ。

***

「何か趣味とかあるん?」
仕事終わりに飲んだ帰り、唐突に上司から尋ねられた。

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猫に九生⑤

猫に九生⑤

手紙を恐る恐る開いた。

『猫には九つの命があると言われています。あなたなら、その命をどう使うかしら?
私は、教師として生きたい。
生まれ変わったのは、これで九回目。これまで綴ったのは私の人生です。よくここまで読んでくれましたね。
何度もあると分かりきった命。自分のために精一杯生きる動機なんてなくて、目的もなく自分の命を渡し続けているように感じていました。
でも、私はいつしか選択していたのです。教

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猫に九生④

猫に九生④

憧れの大人がいた。忘れもしない。中学校三年生の時の担任の先生。
私は、家庭環境があまり良くなかった。学校も休みがち。積極的に生きる意味を見出せず、毎日がどうでもよかった。
「どうせ私なんか、誰からも必要とされていない。」
なんて思い、自分の殻の中に閉じこもる日々。

そんなある日、先生から『うちへいらっしゃい。』と手紙が届いた。あんまり会ったことも無かったけれど、まあ、暇だし行ってみてもいいかな、

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猫に九生③

猫に九生③

三回目は、教師。
知識は生きる術だから。子どもたちがお腹を空かせず、理不尽な目に逢わずに生きていけるように。
「マオ先生。黒雲母は薄くて爪で剝がせるんですよ。透かして見ると、先生の目みたいにきらきらしてて綺麗でしょう?」
はにかみながら言う子。遥かに長く生きているのに彼らの持つ感性には敵わないなと思う。
教えているようで教えられる日々。
私は、よく彼らへ本を読み聞かせた。言葉は世界だ。新しい言葉を

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猫に九生②

猫に九生②

 二回目は、旅人。
世界中を飛び回り、様々なものを目に映す。コバルトブルーの海。赤青黄、何色でもいそうな魚たち。小鳥は囀り、蝶が舞う。
世界には壁も天井もなく、底抜けに美しいのだと知った。
「マオ、スモモの実やるよ。真っ赤に熟れて食べ頃だ。甘酸っぱくて美味しいんだぜ。」
そう言ってにかっと笑う彼。
いつの間にか行動を共にするようになった。
私の手を引いて、様々な場所に連れて行ってくれる。
「俺ァち

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猫に九生①

猫に九生①

 『猫には九つの命があると言われています。あなたなら、その命をどう使うかしら?
私は―。』

***

 一回目は、退屈な毎日。
あくびが止まらないぐらい、狭い部屋で同じことの繰り返し。
どうせ九つもある命だ。時間を無駄にしてもかまわない。
唯一、幸せだったのは、貴方が優しい声で、「マオ」と名前を呼んでくれたこと。
「ねえマオ、僕はもうすぐ死んでしまうよ。」
ベッドの上で月を眺めながら彼が呟く。

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