猫に九生①
『猫には九つの命があると言われています。あなたなら、その命をどう使うかしら?
私は―。』
***
一回目は、退屈な毎日。
あくびが止まらないぐらい、狭い部屋で同じことの繰り返し。
どうせ九つもある命だ。時間を無駄にしてもかまわない。
唯一、幸せだったのは、貴方が優しい声で、「マオ」と名前を呼んでくれたこと。
「ねえマオ、僕はもうすぐ死んでしまうよ。」
ベッドの上で月を眺めながら彼が呟く。
「僕は君のことだけが気がかりさ。もっと色々な場所に君と行きたかった。」
月明かりに青白く照らされた顔。弱弱しい微笑をたたえている。私の頬をそっと撫でるひんやりとした細長い指。
「君の瞳は、月の光を吸い込んだように煌めいているね。そうだ。君は、僕の代わりにその瞳に世界を映し出してくれないか。そうすれば、僕も君と一緒に自由になれる。」
呪いのような言葉。私は、この部屋であなたと見る月が好きだった。
『私の命、あなたにあげる。』