とりのうた通信

ソプラノ歌手 馬淵元子が、ドイツリートなどクラシック歌曲の魅力を紹介。「どなたにも届く…

とりのうた通信

ソプラノ歌手 馬淵元子が、ドイツリートなどクラシック歌曲の魅力を紹介。「どなたにも届くように」をモットーに。配信はときどき思いつくまま。どうぞゆるく長くお付きあいください。◆馬淵元子 公式HPはこちら!→ https://motokomabuchi.jimdofree.com/

最近の記事

動画視聴でドイツリートを楽しむ

2024年が始まり、はや2ヶ月が経ちました。この「とりのうた通信」…最近なかなか更新できずにおりましたが、そんな中でも筆者が過去に書いた記事に関心を寄せて下さる方々がいらっしゃり、勇気づけられておりました。ありがとうございます。ドイツリートに心を寄せる方が、見えないところでたくさんおられるのだなあと、改めて感じ入りました。 音楽の聴き方は時代とともに変わり、今やオンラインでクラシック鑑賞を楽しむ方も多くおられるでしょう。今回はそんな皆様のために、幾つかのドイツリート関連の動

    • 春の夜の夢~シューマンへのオマージュ

      紫陽花の美しい季節となり、春がまもなく終わりを告げようとしています。 この季節、6月8日に生まれた作曲家シューマンに捧げる歌曲リサイタル Liederabend を、来る6月15日(木)19時より五反田文化センター音楽ホール(東京)にて開きます。曲目は以下のとおり。 当日お配りするプログラムノートを、以下に転載いたします。 *  *  *   シューマン Robert Schumann(1810-1856)の作曲家人生において、彼が30歳になる1840年は紛れもなく一つ

      • アンナ・ルチア・リヒター&ティル・フェルナー@トッパンホール

        2023年2月15日、トッパンホールにてアンナ・ルチア・リヒター&ティル・フェルナーによるドイツ歌曲リサイタルを聴いてきました。アンナ・ルチア・リヒターといえば、この「とりのうた通信」でも過去にご紹介していますが、現代ドイツの若手世代を代表する歌手のひとりです。澄み切った声のソプラノ歌手として、シューベルトやシューマン歌曲を初めとする名演を数々聴かせてくれていました(日本ではN響と共演したマーラーの第4交響曲での歌唱を覚えておられる方が多いでしょう)が、2020年にソプラノか

        • シューマンの歌曲〈君は花のように〉の不思議

          2023年が明けました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 昨年は音楽業界全般でリアルのコンサート活動が活発になり、嬉しい一年でした。「3年ぶりに開催!」という言葉を何度となく耳にしましたが、生の舞台エネルギーを多く吸収できたのは幸せなことです。私自身も7月と12月にリーダーアーベントを無事開催することができ、準備に追われつつも歌うことに全力を傾けた一年を過ごしました。そんなわけで、この「とりのうた通信」、配信はかなりマイペースな緩さなのですが、今年は一層、音楽について発

        動画視聴でドイツリートを楽しむ

          クリストフ・プレガルディエンさんのこと

          この2022年10月第1週の東京は、ドイツリート好きの方にとって、静かな熱気を帯びた日々だったかもしれない。トッパンホールにて三夜に渡り、テノール クリストフ・プレガルディエンとピアニスト ミヒャエル・ゲースのデュオによるシューベルト三大歌曲集のリサイタルが行われたからだ。もともと2020年の来日予定が中止を余儀なくされ、ようやくかなった待望の公演。私はその最終日10月5日に《冬の旅》を聴きに出かけた。そして…おそらく個人的にこの作品では最も心に残る、すばらしい体験をした。

          クリストフ・プレガルディエンさんのこと

          ドイツリートの形式って?その2

          花々が芽吹き、春の訪れがここかしこに感じられるこの頃。風は柔らかになってきているけれど…今年もまた、なかなか心穏やかにはなれない春かもしれません。平凡な日常がどれほど大切なものかと思うとともに、ただただ、世界の安寧を願う気持ちでいっぱいです。 今回の「とりのうた通信」は、前回に続き、歌曲の形式について話を進めていきます。前回は、詩に対する作曲法として、有節形式と通作形式という2つの型があることをお話しました。今回はそれ以外のタイプで、実際にはかなり多くの歌曲で採用されている

          ドイツリートの形式って?その2

          ドイツリートの形式って?…その1

          2022年が明け、久しぶりの「とりのうた通信」です。しばらくご無沙汰しておりました。思えば昨年も色々なことがありましたね。感染症と共存しながら、アーティストたちはライブイベント開催に奮起した1年だったと思います。世の中この先どうなっていくかわからない…そんな不透明な状況って、19世紀から20世紀にかけて活躍していたヨーロッパの音楽家たちの環境とも、どこか相通ずるところがあったかもしれない…そんな思いも去来しつつ、生の音楽が誕生する「ライブ」の意味を、改めて感じた1年でもありま

          ドイツリートの形式って?…その1

          「Frühlingsglaube」から「春への想い」へ

          暑い夏が始まったというこの時期に「春」の話題とは…??今回の「とりのうた通信」は、去る7月11日(日)に東京成城サローネ・フォンタナで行われたフォルテピアノのコンサート(5月15日からの延期開催)についてのご報告レポートです。私が2年前よりドイツリートでご一緒しているピアニスト幡谷幸子さんと、その師匠である武久源造さんのお二人によるフォルテピアノのコンサートに、1歌い手として参加させて頂きました。ピアニストのコンサート演目に歌曲が挿入されるという、しかもその組み入れ方が非常な

          「Frühlingsglaube」から「春への想い」へ

          ドイツリートとフォルテピアノ

          今年も梅雨の季節が早くも終盤に近づいてきました。このところいろいろ環境変化があって、この投稿もかなり久しぶりとなってしまいましたこと、お許しください。思えば、昨年5月の緊急事態宣言のさなか、note投稿を始めたころに比べると、現在は私自身、演奏活動にかなりの時間を割くことができるようになりました。これからは自分の演奏の現場やそこで体験したこと、日々学んでいること、コンサートの感想なども含めて、書き綴っていければと思っています。 この「とりのうた通信」で以前、「ドイツリートの

          ドイツリートとフォルテピアノ

          ドイツリートにおける「音画」って?

          梅の香りがもう春の訪れを告げていますね。一月は行く、二月は逃げる、三月は去る…と言いますが、本当にあっという間に時間が過ぎゆくこの頃。頭と心がついていけてないです。おまけに花粉が…悩ましい。 ところで、皆さんは「音画」という言葉を聞いたことがありますか。ドイツ語で「Tonmalerei」。直訳すれば「音の絵画」、すなわち音で描くこと。これは音楽史の用語で、自然の風景、情景などを音で描写する手法のことです。わかりやすい例でいえば、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集〈四季〉や

          ドイツリートにおける「音画」って?

          ドイツ語の美しさを聴く

          2021年、寒い年明けとなりました。今年も「とりのうた通信」をよろしくお願いいたします。クラシック作品の歌や声の持つ力を、一人でも多くの皆様の心にお伝えしたいと思います。どうか希望の年になりますように! 家で過ごすことの多いこの冬、あらためてドイツリートを聴くのもいいですね。シューベルトの連作歌曲集《冬の旅 Winterreise》D911 (全24曲)はこの時期に味わうにぴったりな作品でしょう。ほかにシューベルト〈冬の夕べ Winterabend〉 D 938、シューマン

          ドイツ語の美しさを聴く

          シューマンの「歌の年」を考える

          秋も深まる11月。なかなか心穏やかに…とはいかない今年の秋ですが、変わることなく季節を運んでくれる自然に、ほっとする思いがします。 先日、なにげなく発信したツィートが思いもかけず拡散する…という経験をしました。なぜこのツィートが…?と驚きを感じるとともに、切り取られた短いツィートが、受け止めようによっては、自分の意図を越えた解釈を招きかねないことにも気づかされました。私が前提としている土台があって、それに付加した言葉だったのですが、それは確かに…誰にでも伝わるものではありま

          シューマンの「歌の年」を考える

          ドイツリートのプログラム再考

          10月…うれしい実りの秋がやってきました。毎年この時期になると私は、サツマイモとリンゴ(紅玉)とドライレーズンを蒸し煮にして、シナモンをかけた温かいおやつを作ります。外を散歩するもよし、家の中でほっこり過ごすのもよし…。じっくりと詩を読みながら、ドイツリートを聴くもよし…! さて、先月発行された無料のクラシック情報誌「ぶらおぼ」10月号に、「コンセプト・アルバムは難しい?!」という記事が載りました。この話題、ここ数年来、私自身も折に触れて考えていたテーマでもあり、また「ぶら

          ドイツリートのプログラム再考

          ドイツリートのピアニストたち

          もう今年も9月に。少しずつ秋の気配も感じられる今日このごろ、皆さまいかがお過ごしでしょうか。日が短くなり、夜は虫の声が聴こえ、音楽や読書にふける時間も長くなっていきそうですね。 前回、ドイツリートの歌手たちを紹介する記事を書きました。投稿した矢先から、まだ他に紹介すべき歌手たちがいたことに気づきまして…あの人もこの人も。嗚呼。また折に触れて取り上げていきますね。これからお話するピアニストについても、本当にたくさんの方々が活躍されてきた中から、筆者の心に留まった方を紹介させて

          ドイツリートのピアニストたち

          ドイツリートの歌手たち

          暑い毎日が続きますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか…。8月も下旬に入りました。コロナ禍で思うように動けず、ご自宅で過ごされている方も多いと思います。例年にも増して厳しい状況の夏ですが、音楽を聴くことが少しでも皆様の心の支えになれば…と思わずにはいられません。どうか残暑を健やかにお過ごしください。 さて、「とりのうた通信」4回目。今回は作品ではなく、演奏家についてのお話となります。これまでお伝えしてきたとおり、ドイツリートは多くの場合、ソロの歌手とピアニストによるデュオ(二

          ドイツリートの歌手たち

          蓮の花と月

          7月になりました。今年ももう暑い夏が近づいてきましたね。 まだ始まったばかりの「とりのうた通信」ですが、今日はまずこの名前についてのお話からさせてください。「とりのうた」=「鳥の歌」は、ドイツ語では Vogelsang(フォーゲルザング) といいます。この言葉との出合いは、私がウィーンで声楽を勉強していた時…。たまたま住んだアパートの住所が、Vogelsanggasse 8 、訳すと「鳥の歌通り8番地」だったのです。この住所を知って私はもう小躍り!ソプラノにとって「鳥の声の