*カリグラフィー* イタリック体とローマ教皇庁
「カリグラフィー 美しい書き物」の記事から続きます。
ヴェロニカ・ハリムさんの本を、素敵〜と眺めていたのですが、やはり自分でもやってみたいと、銀座にあるカリグラフィースクールの通信講座を申し込みました。通信にしたのは、通えなくはないけれどもちょっと遠いのと、自分のペースで進んでみたかったから(しかし、通ったほうが習得は早かったと思われる)。
最初に勉強するのはイタリック体とのこと。本当は、くるくると流れるような書体(カッパープレート体という名前を後から知る)に憧れたのだけど、初めに学ぶのはイタリック体が適しているということで。
まずはスクールに行って体験レッスンを受け、ペンの持ち方から教えてもらうことにしたのですが、先生から「文字の世界へようこそ!」と言われたのが、今でも印象に残っています。
見出しの写真がイタリック体です。まだまだ下手で恥ずかしいのですが、これでもずいぶんマシになりました。最初のころの練習帳を見ると笑うしかない。
どうやって形をとったらいいのか、なかなかわかりませんでした。
イタリック体は14世紀後半、ルネッサンス期に人文学者たちが使っていたヒューマニスト体に傾斜をつけるなどして早く書けるようにしたものが起源で、
15世紀にはローマ教皇庁尚書院(chancery)の公式書体になったそうです。
グラフィックをやっていてフォントをよく使う人にとっては、馴染みのある書体だと思います、Apple Chancery。
私も好きで、よく使いますが、チャンサリーじゃなくて、最近までセンチュリーと呼んでました(いい加減すぎる・笑)。
Chanceryとは、ローマ教皇庁尚書(しょうしょ)院のことだったんですね。本当につい先日知りました。
ルネッサンス期のローマ教皇庁の人たちと同じ文字を書いている!
大学で西洋史専攻だった私は、昔の人たちと同じ文字を自分で書く、ということにものすごくロマンを感じるのでした。
始めてみて気づいたのですが、歴史好きにとってのカリグラフィーの魅力はそこも大きいかな、と思います。
fortes fortuna juvat
写真の文字は、ラテン語で「運命の女神は臆病者の味方をしない」という意味だそうです。
この言葉は、惣領冬実さんの歴史漫画「チェーザレ」の中で、チェーザレ・ボルジアが、フィレンツェのサンマルコ修道院の修道院長ジローラモ・サヴォナローラに向かって言ったセリフで、思わず書きたくなりました。
ちなみに、fortuna(フォルトゥーナ)は現在のイタリア語で「幸福」という意味です。
チェーザレ・ボルジアについてはここで詳しく書きませんが、彼の父のロドリーゴ・ボルジアは、ローマ教皇庁尚書院の副尚書(教皇に次ぐNO.2)で、のちに教皇アレクサンデル6世になった人です。
今春、明治座であるはずだった舞台『チェーザレ 破壊の創造者』では、別所哲也さんがロドリーゴを演るようでしたが、中止になってしまったらしいですね。
カリグラフィーからどんどん話がずれていくので、今回はこの辺で。
『チェーザレ 破壊の創造者』はイタリアの歴史、ボルジア家、メディチ家、ルネッサンスなどなどに興味のある方にはオススメです。