『SUPERBEAVERにハマった私が、もう一度フロントマンを目指してみた話』
バンドのボーカルとして舞台に立ち始めて、もう今年で14年目になる。
音楽に興味をもち、自分でギターを買って弾き始めたのは学生のころで、そこから路上ライブをしたり、親友と共にデュオを組んだりしていたので、純粋に“人前で歌を歌い始めた“時期はもっともっと長い。
今でこそ慣れてはきたが、そもそも私はあまり人前で何かを披露することが得意ではなかった。
だって根暗だし。大勢の人の前に立つのなんか、苦手すぎて考えるだけで吐きたくなる。
それこそ歌なんてもってのほかで、私は自分の歌が下手なことを自覚しているボーカルなので、正直、今だって人前で歌うのは恥ずかしい。
ずっとコンプレックスだった。
恥ずかしがって、遠慮して。
ステージの上でもじもじしてるボーカルなんて、カッコ悪くてしょうがない。
でもどうしても羞恥心はぬぐえなくて、心の底から堂々とは出来ない。
もちろん聴いてくれるお客さんのために、ボーカルとしての役割は果たそうと頑張るけど。
いつだって「こんな下手くそが舞台に立っていいのだろうか」という疑問が私の頭の片隅に住み着いていた。
憧れと後悔と
そんな私の意識が変わったのは、SUPERBEAVERのボーカル、渋谷龍太に出逢ってからだ。
KATEのインタビューで、渋谷さんが“フロントマンの在り方“を語っている記事を見た。
「一歩、外に出たら自分はSUPERBEAVERのボーカル、渋谷龍太で、それ以外ではありえない」
カッコよかった。
率直に言って、ものすごくカッコよかった。
“フロントマン“って、私にとっては、そのまんまの意味の言葉じゃない。
前でパフォーマンスをする人とか、リーダー的な役割の人とか、そんなんじゃなくて。
そのバンドの精神性だったり、個性だったり、言葉では伝えきれないものを、自分の体の全てを使って、体現するのがフロントマンだと思っていたから。
だから、私と同じ想いをそのままインタビューで語っていた渋谷さんに衝撃を受けた。
カッコいい。……カッコいい。
私もこうなりたかった。いや、ボーカルとしてこう在るべきだったのだ。
私は芸能人じゃないから、音楽から離れた場所でも、フロントマンとして在るコトは出来ないけれど。でも。少なくとも音楽に触れている時間だけは、常に堂々として。“バンドの顔“として、誰にも恥じないパフォーマンスをするべきだったんだ。
それに気づいたとき。
私の胸にあったのは後悔と。
今からでも遅くない、と奮い立つ気持ち。
そう、今からでも遅くない。
自分が“そう“なりたいなら、成ればいいんだ。
もう昔のようにプロを目指したりはしないけど、私だって、カッコ悪くないボーカルになりたい!
最高のフロントマンになる
幸い、時間だけはたくさんあった。
私がSUPERBEAVERにハマったころは、某感染症が猛威をふるいまくっていた時期で。
音楽イベントが軒並みやられて、大勢の人間が集まって大騒ぎするなんてありえない、って風潮が世の中に横たわっている状態だったから、自分たちの次のライブも全くの白紙。
ならばこの機会を逃さずに。
次のライブまでに、渋谷龍太のようなカッコいいフロントマンになってやる。
私は勝手に決意していた。
とはいえ、まず何から始めたらいいか。
私よりもはるかに音楽経験が長い旦那に相談すると「(´・ω・`)まずは模倣から始めなさい」とアドバイスされた。
自分を渋谷龍太だと思って、どんな時も前を向いて、客席から目をそらさずに、世界で自分がいちばん最高のボーカルだと思いなさい。
旦那の言うことは難しかったが、ようはコスプレと同じである。
そのキャラクターになりきって、立ち振る舞いやパフォーマンスを模倣する。
つまり渋谷龍太が、私の中で今世紀最高のボーカルであり続ける限り。
それを模倣する私も最高なのだと自分に言い聞かせていけばいい。
道具にもこだわるべし
歌い方には各々の個性が出る。
私は大して個性的なボーカルではないけれど、今まで培ってきた歌声を変えることは出来ない。
そこだけは渋谷さんを真似するコトは出来ないし、そこを真似してしまったら、ボーカルとしての矜持まで捨ててしまうことになるから、私は私の歌声でいこうと決めた。
ならば、パフォーマンスを勉強しよう。
毎日毎日、渋谷さんが歌っている動画を見て、動きを全て真似するところから始めた。
渋谷さんがシングルスタンドのマイクスタンドを使っているなら、同じものを使おうと購入した。
ついでに、マイクも同じやつを使おうかと新調することに決めたのだけど、渋谷さんの使用機材はSHUREのBETA58。
BETA58は昔、私も使っていたのだが、実はこのマイク、私の声質とあまり合わなかった。
BETA58は高音域が抜けるタイプなので、低音、中音域が主戦場の私とは合わず、どうも低音がこもってしまって抜けが良くない。
色々聴き比べをしつつ、旦那に相談した結果(持つべきものは音楽知識の豊富な旦那である)、マイクは私の声質に合わせて、ゼンハイザーのe935を購入した。
余談ではあるが、このゼンハイザーは、マジで素晴らしい。
e935は圧倒的に中音域の抜けがよく、低音もそこそこ綺麗に抜けてくれるので、私の声とはバッチリ合った。このマイクを使い始めてから、明らかに自分の声に迫力が増したのがわかるくらいだから、やっぱりマイクってのはボーカルの命だよなぁ、とつくづく実感したという閉話休題。
マイクスタンドは重かった
渋谷龍太になりきるためには、マイクスタンドの扱いに慣れる必要があった。
私はそれまでマイクスタンドプレイをほとんどしたことがなくて、どちらかというとステージをうろちょろするボーカルだったから、自分を正面に固定した状態で、パフォーマンスをするのが得意ではなかった。
しかも重いのだ、マイクスタンドというヤツは。
最初の頃は渋谷さんのようにスタンドを振り回したり、肩にかついだり出来なくて「(´・ω・`)そもそもライブハウスの狭いステージでスタンドを振り回されたら、横にいる旦那とベースが死ぬんだが」と旦那にはたしなめられたけど、そんな忠告はどうでもよくて、とにかく渋谷さんと同じように、同じ動きが出来なければならなかったから、めげずに何回も練習した。
腹筋したり、背筋したり。
ダンベルを持ち上げたり。
筋力トレーニングも行った。
おかげで両手を駆使すればなんとかスタンドを自由に操れるようにはなったけど、旦那はどうでもいいとして、まかり間違ってベースにぶち当たったらぬっコロされるので、実際にステージ上でぶん回すかは未定である。
誰かに言葉を届けること
次に練習したのは、渋谷龍太の語り方だ。
渋谷さんをご存知の方はわかってくれると思うが、渋谷龍太のパフォーマンスは、あの“あなた“への語りかけも含めて、パフォーマンスと言えると思う。
なぜ渋谷龍太が、会場に集まったオーディエンスを“あなた“と呼ぶのか。
それは私ごときが語るべき話ではないので、是非とも渋谷さんが書かれたエッセイをご覧いただければと思う。
校長先生の話に例えるなんて卑怯だ。
歌やパフォーマンスだけじゃなく、文章の才能にも恵まれてるとかもうおかしいだろ。と私のような矮小な人間は彼を羨んでしまうが、流石、フロントマンとして言葉を届けている渋谷龍太。
エッセイも軽妙な語り口でとても素晴らしい文章なので、是非とも読んでもらえると嬉しい。
今まで何度もこのnoteで使ってきたフレーズであるが、私は根暗な人見知りである。
もちろんライブのMCは大の苦手で「私なんかがMCでつまらない話をするなら、そのぶん1曲増やせばいいじゃん」と、これまではそんなスタンスでライブをしてきた。
でも、渋谷龍太を目指すなら、そんなことは言ってられない。
幸いにも私の仕事は営業である。
年中喋る機会には恵まれていたし、ただ“喋ること“に対する技術を磨く機会はいくらでもあった。
だけど営業の仕事はあくまでも、決められたテキストやマニュアルを繰り返しお話するところから始まる。
テキストをなぞるだけじゃ、渋谷龍太にはなれない。
渋谷さんの言葉は常に生の言葉だ。
場の盛り上がり、会場の雰囲気、感じたこと、思ったこと、考えてること、学んだこと。
その時に適した言葉を瞬時に選んで話している。
私も、そうならなければいけない。
ならば、どうしたらいいか。
決まっている、話せばいいのだ。
ノープランで話せばいいのだ、人前で。
それにはnoteを使うことにした。
私がこの1年で、スタエフ配信を始めて、色んな人とお話しさせていただいたり、ひとりで質問に答えたりしたのは、もちろん仕事上、臨機応変な対応力を身につけるために練習したかった、という理由がいちばんだけれど、実は、“渋谷龍太のようなフロントマンになりたい“という理由も隠れていたのである。
そして私はステージに立つ
思いつくかぎりの準備をした。
出来るかぎりの模倣はした。
残念だったのは、某感染症の終息が予想以上に遅くなってしまったせいで、この練習と模倣の成果を、発表出来る場に恵まれなかったコトだった。
今日まで、何度もSUPERBEAVERのパフォーマンスを観てきた。
時にTVで、時にYouTubeで。
そして時にはライブ会場で。
生の音に、生の渋谷龍太に触れるたび、
“私もカッコいいフロントマンになりたい!“と決意した気持ちが、少しずつ固まっていくのを感じていた。
そして私は、ついに今週末、ステージに立つ。
渋谷龍太を目指し始めてから、
これがはじめてのオンステージ。
もう恥ずかしいなんて気持ちは、これっぽっちも存在しない。
このステージに立つ私こそが至高で最高。
技術じゃない。歌の上手さじゃない。
私よりも上手いボーカルはごまんといるし、綺麗なボーカルも山ほどいる。
そうだな、でも、それがどうした。
目の前の人間に、最高のものを届けるんだという気持ち。
最高の時間を提供しよう、という気持ちだけは、誰よりも強くもつべきで。
羞恥心に負けていた私は、きっとそれに気づいていなかっただけなのだ。
フロントマンとして生まれ変わった私の、
初めてのステージまで。あと、3日。
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