【詩】月へ帰る
明日 月へ帰る
持ってゆくのは この身ひとつ
月の裏では
半狂人たちが饗宴し
吐き気を催すほど旋回する芸術と
未だ働き続ける 死んでしまった脳たちが
小説のごとく音のないワルツを踊りながら
互いを殺し合っては
その最期の生き血を吸い取り
再生する
そこは おぼつかないノスタルジアの完全なる圏外である
彼らは廃人の外観を呈するが決してそうではない
詭弁を弄する者など無論一人もおらず
時に センチメンタルと駆け落ちしてきた者もあるが
過度な躊躇の愚かさを仲間に教えられることで
長年担ってきた名声に いつしか別れを告げることができる
黒いぶどう酒に 紫のバラ
禁止されているのは
ホメロスの詩の朗読や
哲学じみた議論
彼らは最も骨の折れる任務の時を乗り越え
あげくそれらを全て投げうって
ようやっとそこに帰ってこられたのだから
新人の私はおそらく
セザンヌの両手を切り落とすことを条件に
凱歌を挙げてもらい
そこでの永住権を手にするだろう
私たちは固い絆で永久に結ばれるのだ
なぜなら私たちは皆 瞞着を決して受け入れない尊厳を持っているから
そして 皆が皆
苦しみを愛し続けなければならなかったことを知っているから
明日 月へ帰る
持ってゆくのは この身ひとつ