カモニカ谷だより

北イタリアの小さな村の暮らしをお届けします。山あり湖ありのカモニカ谷の歴史や地元の美味しいレストランのこと、古い家での生活などを書いていきたいと思います。

カモニカ谷だより

北イタリアの小さな村の暮らしをお届けします。山あり湖ありのカモニカ谷の歴史や地元の美味しいレストランのこと、古い家での生活などを書いていきたいと思います。

最近の記事

ひな鳥よ、元気に巣立て!

 2年前、わがやのベランダに小鳥の巣が新築されました。その時に巣立ったひな鳥が帰ってきたのかどうかはわかりませんが、今年その古巣は再利用されることになったのです。6月中旬、急に小鳥の夫婦がやってきて、入居したかと思うと、大急ぎでリノベーション。あっという間に卵が4つ産まれ、母さんなのか父さんなのか見分けはつきませんが、雨の日も風の日も温めています。そして、無事にひなが誕生し、軒下は賑やかになりました。猫たちはもちろんベランダに出せません。  10日くらい経ったでしょうか。ず

    • カモニカ谷の休日2 おもてなしのこと

       4月から6月のはじめにかけてお客さんがたえなかったのが、少し落ち着きました。そんな時は、台所の片付けなどをして、気持ちをリフレッシュさせてみます。棚をふいたり、物を移動させたり。古い家のいいのは、小さな棚を取り付けたり取り外したりを気楽に試せることですね。  ふと、さまざまな色彩と味の時間がよみがえってきます。ほろ苦かったり、甘かったり。今年の夫の誕生日。夫は自分の誕生日というのが苦手で、祝われるのも祝われないのもいやなのだそうです。なんという面倒くさい性格でしょうか。けれ

      • カモニカ谷の休日1 さくらんぼに傘

         今年は雨が多く気温の低い春でした。6月に入ると、雨の合間に降り注ぐ太陽の光を受けて、ようやくさくらんぼが赤くなりだしました。でも、雨が多いと、実に傷がつき、味もぼんやりした感じです。さくらんぼに傘をかけてあげればよかったなと、来年のためにメモをします。  次は野菜を収穫。ルッコラもバジルも紫蘇も元気に育っています。苺は雨風から守られたベランダ育ちのせいか、とにかく甘い! ブランドいちごにもひけを取らない甘さで感動しています。でも一回に一粒の収穫ですから、それを半分にして夫

        • 猫、家出する

           春。カモニカ谷では、藤の花も桜もぼたんも一斉に咲きほこり、山は一日ごとに新緑でふくらんでいきます。アカシアの大木が一斉に花を咲かせると、なんだか鼻がムズムズするような気も。それでも夜などは肌寒いこともあり、雨の日が続くこともあるのです。 その夜、まだ一歳にならない猫マメオは、私たちと一緒にソファでごろ寝していたのが、真夜中ころふっと外へ出て行きました。  翌朝、マメオはいませんでした。ほぼ一年に及ぶ共同生活において、マメオが朝食にいなかったことはありませんでした。早朝外へ出

          カモニカ谷に春が来て・リトリートvol4

          「すみれにあう」という作家・清川妙さんの瑞々しいエッセイを初めて読んだのは高校生の時で、父が誕生日のお祝いにくれた本の中にあったと思います。何十年も前に手にした清川さんの随筆は、落ち着いた書体とさりげなく美しい挿画があいまって、見過ごしながら生きていたささやかだけど美しい世界への道しるべとして心の中で灯りつづけています。  忘れられない3月11日の翌日、カモニカ谷では春の太陽があたりを隅々まで照らし、雨の中で重くうなだれていたすみれも忘れな草も梅の小さな花弁も輝いています。

          カモニカ谷に春が来て・リトリートvol4

          キジトラ猫マメオくんの得意技

          雲と霧は、その場所によって呼び名が変わるだけで、同じものなのだそうです。冬のカモニカ谷では、雲と霧の境界線が曖昧になります。ふと、自分も家ごと雲の中にいるような錯覚に陥ることもあります。そんな季節は、なんとなく出不精になり、人も動物も運動不足になりがちです。運動不足ですめば良いのですが、そのせいでギックリ腰になってしまうこともあるのです。 壁紙を新しくするんだ、とはりきって急に刷毛を持ち出した夫、そのすぐ後お昼ごはんを食べに行った食堂で、椅子に座ろうとした瞬間凍りついた夫、そ

          キジトラ猫マメオくんの得意技

          カモニカ谷で「リトリート」冬じたく編

           カモニカ谷では、紅葉も進み、日を追うごとに山のカンヴァスの色が美しく変わっていきます。  三日間に渡ってカモニカ谷のわがやで行われた、リトリート。今回も、充実した楽しい美味しいひとときで、あっと言う間に過ぎてしまいました。初日は午前中に集合して、まずは、移動中毛布にくるまれていた麹を、電気毛布でしっかりつつみ直してセット。この麹を中心に、リトリートが始まります。今何度かな? と気にしながら、麹時計が刻まれていきます。  お昼ごはんは、九州出身の方がだんご汁のレシピを実演して

          カモニカ谷で「リトリート」冬じたく編

          カモニカ谷で「リトリート」

          カモニカ谷の山頂部分に、初雪が降りました。日に日に紅葉も進み、冬の入り口です。 この週末、イタリアに暮らす素敵な日本女性4人の方が、我が家にいらっしゃって、リトリート(数日間日常から離れた環境で心と体をリラックスさせ癒すこと)されます。今年の3月から始めたこの楽しみ、今回でもう3回目を迎えます。 ある方からこのお話をいただいたのは、コロナウイルス対策による様々な規制がやっと解けた頃だったと思います。当時は、病気そのものの恐怖に加えて、厳しい規制のもと自由が少しずつ奪われていく

          カモニカ谷で「リトリート」

          キジトラこねこがやってきた

          顔見知りの茶トラ猫(オス)が、小さなキジトラ猫を連れてやってきたのは、6月のはじめ。「うちの子、よろしくたのみます」とでも言うように、私の顔をじっと見てから、しっぽをひとふり、キジトラを置いて、ふっといなくなってしまいました。え、なに今の。ぼんやりしていると、キジトラがびゃあとなき、なんだなんだと、わがやの先住猫たちもやってきます。そうこうしているうちに、ごはんの時間になり、キジトラもびゃあびゃあと主張するので、おすそわけをもらいます。 あれあれ、なんかおかしいぞ。 そして翌

          キジトラこねこがやってきた

          八月のひと皿

          きついカーブを何度も曲がりながら山道を登っていくと、突然目の前に山小屋のような作りのトラットリア(食堂)が現れる… カモニカ谷で暮らすようになって、そんなことがなんどもありました。店の前には車が何台もとまっています。食堂の扉を開くと、店内は、小さい入り口からは想像できないほど広く、素朴な木のベンチとどっしりしたテーブルが、常連さんたちも旅人も暖かく迎え入れてくれます。 そんな山深い食堂で出会ったひと品。ビゴーリ・アイ・フンギポルチーニ。ビゴーリというのは、うどんのような太いパ

          イタリアで見る古代の印

          北イタリアはミラノから、車で東に1時間半ほど走ると、カモニカ谷(Val Camonica)に着きます。この谷には、イタリア初の世界遺産ヴァル・カモニカ岩絵群があります。アルプスに連なる谷の岩面に刻みこまれた絵には、約1万年前からの人々の暮らしや文化、戦いの様子など、人間が生きた証が刻まれています。 この厳かな神聖な場所、実は、とっても気軽に訪れることができるんです。谷筋に沿っていくつか観察スポットがありますが、最も有名なのが、カポ・ディ・ポンテ(Capo di Ponte)

          イタリアで見る古代の印